こんにちは、らくからちゃです。
先日、こんな記事を読みました。
いやあ、色々と大変そうですね・・・。
こういったシステム開発をしていて、お客様によく言われるのは『え、こんなちょっとしたことなのにそんなに係るの!?』ということ。
うーん、お客さんが言っているのは確かにちょっとしたことなんですよね。でも、ちょっとしたことだとしても、それを会社としてしようとするとなんやかんやで色々とお金がかかってしまうのです。
会社によって考え方は違うかもしれませんが、システム開発に必要なおかねは、
作業時間✕人件費+経費+営業費+利益
です。個人が趣味でやるのであればとにかく、色んな費用が発生するんですね。今日はそのへんの話を、愚痴も兼ねて書いてみたいと思います。
作業時間
まずはシステム開発にかかる作業時間。システム屋の間では『工数』なんていったりしますが、プログラムを作るといっても、かかる時間はプログラムを作っている時間だけでは有りません。
- 内容をお客さんと打ち合わせするのにかかる時間
- その結果をどうやって実現する方法を考える時間
- その方法で既存動作に悪影響が無いか調べる時間
- 考えた方法をまとめて資料を作成する時間
- エンジニアに修正箇所をまとめて説明する時間
- プログラムを作るための環境を構築する時間
- 作ったプログラムが想定通りか検証する時間
- お客さんに操作方法について説明する時間
まー、目に見えていないところで沢山の時間がかかります。中には、実際のプログラムの修正は数時間で終わるものの、そこに至るまでに10倍近く時間が係るような例もあります。言い伝えによりますと、『開発にかかる時間は、コーディングに係る時間の3倍は想定すべし』という風に社内では語り継がれております。
人件費
これも目に見えない負担の多い項目ですね。システム屋の間では『単金』なんて言ったりすることもありますが、直接手取りとして受け取る金額以外に、
- 医療保険
- 年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
などの社会保険料も負担しなければなりませんし、有給休暇を取得する分は考慮しておく必要があります。また当然、ボーナスや残業代も加味して計算しなければなりません。コスト管理上、『自分のコスト』を管理することにもなるのですが、社内での単金は、手取り月収の3倍以上の金額になってます。(社員は一律固定単価なので、下っ端のわたしが平均値より低いことも大きいのですが)
外注さんに依頼する場合、外注先の経費・営業費・利益も負担しなければならないので、一月最低でも50万円くらいから、高ければその何倍にもなります。
経費
ホワイトボードとマーカーだけではプログラムは作れませんので、発生する諸々の経費があります。直接発生する経費は、
- PCやサーバーなどの機器にかかるコスト
- コピー用紙などの消耗品に係るコスト
- オフィスの家賃や電気代などの作業場所に係るコスト
- 電車賃や宿代などの移動にかかるコスト
くらいでしょうか。多分この辺は他の業界と比べるとそんなに高くないかもしれません。たぶん、他の業界と比べると高く付くのが、会社全体として負担する『採用・教育コスト』。
基本的に人が商材のお仕事ですので、この辺はかなりかかってきます。例えば大手人材募集会社を通すとこんな感じ。
お値段が係るのと同時に、広告を打ったところで本当に来てくれる保証はありません。人材派遣会社が儲かるわけですね(^_^;)。
また教育費も馬鹿にできません。『すぐに使える即戦力』ばかりであればいいのですが、特に新卒なんかはそうも言ってられません。うちみたいに他社さんのパッケージ(SAPとかOracleとか)を取り扱う場合、その知識も必要になりますので、新卒が現場に出るのはだいたいお盆休みを過ぎた以降です。それまで、監督役のお給料も含めてコストが発生します。
営業費
これも他の業界とはちょっと位置づけが違う費用かもしれません。システム屋は、大々的に広告を出すのは珍しいので『広告宣伝費』といったコストは余り発生しません。システム屋における営業費の中で大きなウェイトを占めるのが『失敗したときの受注獲得費』です。
大規模なシステム開発であれば、お客さんの方から『こんなの作ってよ』という内容が示されたRFI・RFP・RFQなんて名前の書類が示されます。これには、『こんな機能を持っていて、こんなことができて・・・』というようなことが書いてありますが、紙ペラ一枚じゃありませんよね(笑)。分厚いのだと、印刷したら専用のキングジムが必要になるくらいの物もあります。
その内容を精査して見積もりを作成し、赤字になってはいけませんので、偉い人にレビューして貰ったりと、何かと作業が発生します。しかもその上で、どんなに頑張っても受注に繋がるとは限らないのです。コンペに負けることもありますし、案件そのものが諸々の事情でなかったことになることもあります。
そういった活動での費用も回収する必要があります。
利益
お仕事は、株主様からお金を預かってやらせて頂いている以上、少しでも増やしていかなければなりません。ただ、利益に対する考え方も他の業界とちょっと違うところがあるのかなあと思うんですね。
こちらの資料(参考:大手でも低い利益率、日本流SIビジネスの構造問題によると、大手システム開発事業者の平均営業利益率は6.7%だそうです。これは、色々な成功したり失敗したりしたものも含めたあとでの利益の平均です。
システム開発をしていると、実際に作ったものが動かなかったり、当初想定していたよりもずっと作業が大変だったりと、色んな所で『予想外』の事態が発生します。そうしたときに『大変ですね、ちょっとお金をたくさんあげましょう』なんて言ってくれればいいのですが、むしろ逆で『おい、さっさと動かせよ』と言われるのが関の山ですよね。
そうした場合、受注額を超えて赤字になったとしても、仕事は仕上げなければなりません(状況次第ですが・・・)。そうした赤字になるリスクも踏まえて、利益は加算する必要があります。
システム開発をしていて思うこと
ただ、いくら『これだけかかりますよ』といっても、それはあくまでこちら側の都合でしか有りません。大事なのは、お客さんにとっての費用対効果を創造することです。たとえコストの10倍のお金を取ったとしても、お客さんがそれ以上の利益を受けられるのであれば、何の文句も言いません。この辺は、システム屋の仕事の仕方にも問題があるんじゃないのかなあと思うんですね。
我が国のIT業界の時価総額ランキングを見てみると、上位はメーカーや大手企業グループの子会社が見て取れます。(参考:IT関連企業 時価総額ランキング(1位~50位))
基本的に、『事務作業の置き換え』がメインで、ITそのもので価値を創造するというところにあまり意識が向いていなかったのかなあと思うんですね。その結果、自社の既存業務に適合する形でのシステム刷新となり、パッケージを使ったとしてもカスタマイズてんこ盛りでほぼスクラッチ状態になってしまう。
だから、
- 仕様を考えるのに時間がかかる
- スキルが特殊になって教育コストがあがる
- 作業を標準化しづらく特定の人に負担が掛かり心身不調者が発生する
- 提案のコストがあがる
- 利益が読めず加算するしか無い
そんな業界構造になっちゃうんですね。これを解決する打開策としては、まずはここの社内要件については、しっかりユーザーサイドで考えられるように、ユーザー側でシステムのプロを置く。そして、内部で処理できない問題は、委託ではなく標準化されてコストも安いパッケージを積極的に利用する。そんな方向にもっと持ってかないといけないよね、と思うんですね。
大企業では最近この辺の考え方も浸透してきましたが、中小企業においては20年位前の考え方が横行している企業も少なく有りません。小さな会社では、なかなか新卒が入ってこないため、ユーザー側の情シスが『大御所の牙城』となり新しい考え方を排除しているような例もあります。
色んな話を聞いていると、システム屋自身にも、そういったところからの継続発注に甘えているところはどこかあるような気がします。これから先、日本の競争力を高めるためにも、もっと働き方を考えていかなきゃなあと思う今日このごろでございます。
この本はなかなかおもしろかったです。
ではでは、今日はこの辺で。