ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

衆議院選挙『比例代表』の各党戦略について考えてみる

こんにちは、らくからちゃです。

明日はとうとう衆院選の投票日ですね!もう不在者投票を済ませちゃった人も多いかもしれませんが、立候補者も有権者も最後まで是非頑張りましょう!

さて選挙に関する記事を眺めていると、こんなものを目にしました。

www.sankei.com

思った以上に立憲民主党が伸びているみたいですねー。

共産党支持層とみられるツイッターの投稿の中には、躍進する立憲民主党の候補者が79人にとどまることから「比例票が余る可能性」を指摘する声も出ていて、共産党が比例票を獲得するための呼び水としている面もありそうだ。

 衆議院選挙は、小選挙区と比例代表の並立制となっています。このままのペースで立憲民主党が票を伸ばして行けば、立候補者の数を上回る当選者が発生して、投じた一票がムダになる。だから是非、我が党へ!というようなことを主張しているようです。

過去の事例を調べていると

  1. 2005年:比例東京ブロック自民→社民(1)
  2. 2009年:比例東海ブロックみんな→民主(1)
  3. 2009年:比例近畿ブロックみんな→自民(1)
  4. 2009年:比例近畿ブロック民主→自民(2)

といった事態が発生しています。ちみに1・4については、名簿記載者不足、2・3については、重複立候補者が小選挙区での得票率が10%未満であったことが原因だそうです。

期待を込めて書いた党の名前が、他党にカウントされてしまうのはすごいがっかりしちゃいますよね(´・ω・`)

今回実際にそんなことは起こるのかな?と個人的に調べてみました。

衆議院選挙の小選挙区比例代表並立制のおさらい

まずは衆議院選挙で採用されている『小選挙区比例代表並立制』のおさらいからしておきましょう。ちょうどいい感じの過去記事があったのでセルフ引用してみます。

www.yutorism.jp

衆議院選挙の場合、一枚の紙は『小選挙区の候補者の名前』。もう一枚の紙には『比例代表の政党名』を記載して投票します。

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(出典:総務省|投票)

『小選挙区』では、もっとも得票数の多い候補者が当選します。『比例代表』では、得票数の割合に応じて各党に議席の数を割り振り、その数だけその党の候補者が当選します。

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衆議院選挙は小選挙区と比例代表の重複立候補が可能です。

割り振られた議席は、事前に各党が提出した名簿の順位によって決まります。有権者が直接、誰を比例区で投票させるのかを選べない仕組みを『拘束名簿方式』といいます。

小選挙区にも同時に立候補することも出来ます。小選挙区で落選してしまった場合、比例代表で当選すれば議員になることが出来ます。比例代表の『順位』は一部『同順位』とすることが可能です。その場合、『惜敗率(最多得票者数に対する得票率の割合)』が高い人が自動的に上の順位と見なされます。これが『復活当選』ですね。

(一部文言修正。なお小選挙区議席数は記載時295→289に変更された。比例区は176)

ちなみに参議院は、

  • 大選挙区:1つの選挙区から複数の当選者が出る
  • 非拘束名簿方式:比例区の党内名簿順位は、投票時に書かれた名前で決まる
  • 重複立候補不可:どちらかだけにしか出られない

という点が、衆議院と異なります。

2017年衆院選比例代表立候補者数

おさらいができたところで、立候補者の情報について分析してみましょう。

kouhosha.info

まずはブロック定数に対して各党どれくらい立候補者がいるのか

ででん!

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例えば、東京ブロックで立憲民主党は17議席中16人候補をたてているので94%。四国については17%。東京で100%近い比例票を取れるとは思いませんが、立憲民主党で東京ブロックに立候補している人は、全員が小選挙区にも重複立候補しています。

氏名 前回 小選挙区
海江田万里 東京1区
松尾明弘 東京2区
井戸正枝 東京4区
手塚仁雄 東京5区
落合貴之 東京6区
長妻昭 東京7区
吉田晴美 東京8区
鈴木庸介 東京10区
前田順一郎 東京11区
北條智彦 東京13区
初鹿明博 東京16区
菅直人 東京18区
末松義規 東京19区
山花郁夫 東京22区
高橋斉久 東京24区
山下容子 東京25区

小選挙区で勝てば比例枠は使いませんので、比例枠が余るかどうか?は

  • 小選挙区の勝率
  • 比例区の得票率

で決まります。

海江田万里氏や菅直人氏といった近年の選挙では苦戦し続けてきたひとも、今回は小選挙区で勝てるかもしれない。そうすると、比例枠が余る事態も、絶対に無いとは言い切れないですね。

大事なことなので、文字を大にしてお伝えしますが、

だから立憲民主党に投票するのは辞めようと言いたい訳ではありません。

『そういうことってあり得るの?』と問われれば、『まあ状況次第では絶対に無いとは言えないよね』というのが答えかなあ。少なくとも、わたし如きの知識量では、『そうならないと良いね・・・』くらいしか言えません。

なお重複立候補分を差し引いた比例区定数に対する比例候補の立候補率はこんな感じ。

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こうやって比較すると面白いですねー。

『小選挙区』と『比例区』の戦略で特に興味深いのは第一党の自民党でしょうか。

小選挙区比例代表並立制の選挙戦略

自民党の立候補者のパターンを眺めていると、大きくわけて4つのパターンに分かれます。

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それぞれ人数は

  1. 重複立候補・・・332人
  2. 小選挙区単独立候補・・・19人
  3. 比例区単独優先組・・・11人
  4. 比例区単独補欠組・・・44人

って感じですね。

①重複立候補

まず一番多いのは、1番の重複立候補組。重複立候補しているひとの順位は同率になっていますので、その中で奮闘した人に議席を割り当てよう!って方法ですね。

じゃあ逆に、重複立候補していない単独立候補者はどんな人がいるのか?

②小選挙区単独立候補

おおきく分けると

  1. 定年を超えている人
  2. 自ら志願した人

の2パターンに分かれます。まずは一覧を見てみましょう。

名前(フル) 年齢 小選挙区
小泉進次郎 36 神奈川11区
保岡宏武 44 鹿児島1区
金子恭之 56 熊本4区
安倍晋三 63 山口4区
三ツ矢憲生 66 三重4区
坂本哲志 66 熊本3区
額賀福志郎 73 茨城2区
細田博之 73 島根1区
西川公也 74 栃木2区
江崎鐵磨 74 愛知10区
河村建夫 74 山口3区
土屋正忠 75 東京18区
竹本直一 76 大阪15区
谷川弥一 76 長崎3区
野田毅 76 熊本2区
衛藤征士郎 76 大分2区
麻生太郎 77 福岡8区
二階俊博 78 和歌山3区
伊吹文明 79 京都1区

 年齢順に並べましたが、73歳以降が多いですよね。これは、自民党が73歳定年制を内規として決めているからです。

www.sankei.com

小選挙区に出るのは良いけど、比例代表に出るのはダメよ。やるなら自分の力で勝ち上がってね。って感じですね。

そのルールや年齢の妥当性はさておき、そういう人たちがいる一方で、小泉進次郎筆頭副幹事長や安倍晋三総裁は『比例など要らん!』と単独立候補しているみたいですね。

心意気は良いですが、割りときわどいラインの候補者が『わたしは小選挙区で落選したら復活できません。是非よろしくお願いします!』と頼み込むのならばさておき、普通に小選挙区で勝てそうな人がやるのは、あんまりよく意味がわかりませんね。

③比例区単独優先組

小選挙区ではなく、比例区で単独で出ている人たちもいます。その中でも、小選挙区の重複立候補者よりも順位が高い人たちが居ます。

さしあたり『比例区単独優先組』とでも呼びましょうか。

自民党の比例枠が取れれば自動的に当選になりますので、かなり優遇されたポジションです。まあどんな風が吹いても1枠も埋まらないことはないでしょうから、選挙前から勝ってるようなもんです。

そんな幸せなひとたちはこちら。

氏名 比例名簿順位 比例区 前回
渡辺孝一 1 北海道
鈴木貴子 2 北海道
江渡聡徳 1 東北
宮川典子 1 南関東
山本拓 1 北陸信越
奥野信亮 1 近畿
福井照 1 四国
福山守 2 四国
園田博之 1 九州
宮路拓馬 2 九州
今村雅弘 3 九州

 でも、重複立候補している人や有権者からすれば不満ですよね。なんで現場で汗を流してもいないのに、優先されんだよ!って気分になりません?

どうしてそんなことがまかり通るのかというと、その大半が、これまた自民党が勝手に内部で決めた『なんちゃってコスタリカ方式』の対象となっている人たちです。

これは、コスタリカという国で行われている『議員と選挙区の癒着を防ぐために、議員になったら次の選挙には出ない』という方法にインスパイアされて考えた『Aさんが小選挙区に出るときはBさんが比例区。その次の選挙では、Bさんが小選挙区に出てAさんは比例区』やり方を取っているからです。

www.msn.com

・・・うん。解説を読んでいたら、コスタリカの人に謝ったほうがいい気がしてきた。ちなみにこれ、選挙区の再編などで、地元選挙区が合併しちゃった人が主に対象となります。ネーミングはとにかく、上手いこと考えたもんですね。 

④比例区単独補欠組

今度は逆に、重複立候補者より順位が下の人たちがいます。

この人たちはあれですねー、もし比例枠が重複立候補者で余りそうになったときの、受け皿的な候補でしょうね。

東京ブロックであればこんな人たち。

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(出典:東京ブロック(比例区)-候補者-2017衆院選:朝日新聞デジタル)

比例枠が使いきれなかったら勿体無いですし、他の党やブロックでも党職員や議員秘書などが候補として名簿の下の方に名を連ねています。

過去にここから政界入りした人として、皆さんご存知なのは自民党の杉村太蔵さんでしょうね。あとは、民主党にも候補者として名義を貸してみたら、ある日いきなり議員になってしまった磯田佳代子さんなんて人もいらっしゃいました。

たしかにですね。比例枠を余らせて他党に議席を譲るのは有権者への裏切り行為かもしれませんが、あまりにアレな人を議員にしてしまうのも、それもまたどーなんでしょうね。

普通は、この辺までチェックしないと思いますが、案外『当選する確率が高い人』よりも、『もしかしたら当選させちゃうかもしれない人』のほうが重要かもしれませんな。

比例代表の各党戦略

じゃあ最後に、自民党以外の党もみておきましょう。まずは各区分別の立候補者数はこんな感じです。

区分 自民 公明 希望 立民 維新 社民 共産 幸福 こころ 支持なし 新党大地 諸派 無所属 総計
重複 258   197 62 47 19 28             611
小選挙区単独 19 9 1 1     178         44 73 325
比例区単独 55 44 37 15 5 2 37 41 2 4 2     244
総計 332 53 235 78 52 21 243 41 2 4 2 44 73 1180

 公明党

ご存知、創価学会が支持母体の党。重複立候補を使っていないのと比例区単独が多いのが特色ですね。

小選挙区は、基本的に勝てる人しか出ませんので、ほぼ100%当選です。一方比例区は、重複立候補が無い以上、順位をきちんと決める必要があります。その他の党であれば揉めそうな感じがしますが、その辺は党内順位に従って粛々と決まっているのかな?

基本的に宗教政党って、信教の自由(という名目のもとの宗教法人の非課税)を守り抜くことが第一義です。そのために、キャスティングボードが握れれば満足ですし、下手に党内で割れるような尖った意見を掲げることもあまりしません。

小選挙区では自民党と協力を行い、比例でしっかり固めるのが基本方針ですね。

希望の党

小池さんところの党。まさに政局の塊のような選挙なんですけども、比例区の戦略はどうなってんのかなーと思って見てみるとちょっと気になったのがこの3人

名前(フル) 前回 比例区 比例名簿順位
寺田学 東北 1
樽床伸二 近畿 1
中山成彬 九州 1

 自民党における『比例優先組』が割り当てられているわけなのですが、なんでなのかな?緑のおばさんからの論功行賞?

候補者を、しっかり選別・排除してきたようなので、特に党内から文句が出ることは無いんでしょうけど、有権者にはどう説明するのかなあ。

あと補欠組もそれなりに用意しています。そこまで票が入るといいですね。

立憲民主党

原則として、重複立候補+補欠部分を比例単独としています。現行のルールにおいては、かなり『まとも』にやっている印象です。

このドタバタの中で、ちゃんと補欠候補まで用意したところについては、評価してあげてもいいんじゃないでしょうか。

維新の党

最近話題の長谷川豊氏を擁立しているのですが、南関東選挙区の同率名簿順位1になっています。

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(出典:南関東ブロック(比例区)-候補者-2017衆院選:朝日新聞デジタル)

なんであえて公認したのかなあ?まだほとぼりも冷めてないのに・・・。と思ったんですけどね。

同率1位やから、ほかの人の得票数を増やさへんと、こいつ当選しまっせ?小選挙区ではぜひ一票。

という維新なりの高度な選挙戦略なのかもしれません。関西と違って地盤の弱い南関東では比例もそんなにとれないでしょうし、比例を捨てて、小選挙区の得票を稼ぎに行きたいのかなあ。

うん、全くよくわかりません。

なお下記3名が比例区重複でも順位が上になっています。

名前(フル) 比例区 小選挙区
森夏枝 近畿 京都3区
灰岡香奈 中国 広島2区
青柳仁士 北関東 埼玉4区

 ざっとググってみると、直近の選挙で中々良い線まで行ってた人たちなので、ご褒美なのかもですね。

社民党

なんだか『まだ居たんだ・・・』感がしなくもないですが、21人を擁立中です。ちょっとおもしろいな、と思ったのは北海道で『豊巻絹子』さんを比例単独で公認しています。

重複立候補したほうが、選挙ポスターも貼れていいんじゃない?と思うのですが、小選挙区にも出ちゃうと、仮に比例で1枠とれても小選挙区で10%取れないと落選しちゃうんですよね。

維新の党も、比例投票ブロックで似たような戦略をしています。この辺、小規模政党の戦略としては面白いですね。

共産党

自民党につぐ243人の候補者を出していますが、今回はいくらくらい供託金を払って貰えるのでしょうか?

大量の小選挙区候補が目に入りますが

  1. 前職は名簿順位で優遇
  2. 志位和夫委員長など、力のある人が比例単独で名簿上位
  3. 過去に良い結果が出てれば比例にも載せる

って感じかなー。

代表は、安倍総理みたいに単独立候補するよりも、地元に縛られずに行動したほうが良いような感じがします。ただでさえ基盤が不安定なので、(新人には酷かもしれませんが)戦える人を育てたほうが良い。

なーんにも考えてないのかな?と思ってましたけど、案外戦略的な印象ですね。

その他

いやもう、ここからは『その他』扱いでいいっすよね・・・?

幸福実現党は、『諸派』扱いになっていますが、小選挙区にも大量に候補を擁立しています。前回は、北海道を抑えようとした『支持なし』は、ある程度知名度が得られたと判断したのか東京に4人も候補を擁立。新党大地は、娘さんを自民党で比例2位にするための選挙協力を色々しているのと、立憲民主党の予想外の健闘で苦戦中の模様。こころ・・・?えーっと、知らん!

まあざっとこんな感じなんでしょうか。

まとめ

比例代表制の中でも、拘束名簿方式については、有権者が人となりに触れること無く議員になるひとを選んでしまう可能性があります。ちゃんとそれぞれの経歴も見比べたほうがいいんでしょうけど、選挙ポスターなんかも貼ってませんしね。

本来は、『党の政策』に対して一票入れているはずですが、最終的には議員になるのは個人です。無党派層も増えているわけですし、簡単に『公認の条件』や『名簿順位の決定方針』をまとめたものを、各党ともに用意したほうが良いんじゃないのかなあと思うんですね。

なおここまでの文章は、素人が『こんな感じかなあ』と想像力を膨らませながら書いた妄想文でしかありませんので、ご判断は皆様にお任せ致します。

ただまあ、そうした視点で選挙を眺めてみるのも、面白いんじゃないのかな?なんて思う今日このごろでございます。

ではでは、今日はこのへんで。

 

選挙行こうね!