ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

プレミアム商品券はコストパフォーマンス抜群の政策

こんにちは、らくからちゃです。

お得という言葉には滅法弱いタイプの人種です。昨日は、こんなニュースが気になりました。

2万円で買える「2万5千円分の商品券」案検討
 2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴う経済対策で検討している商品券を巡り、財務省がまとめた原案が分かった。1人あたり2万5000円分を2万円で購入できる「割引商品券」とし、5000円分多く買い物ができる。購入できるのは低所得者を中心とする方向だ。

 希望者は、2万円を支払えば1000円の商品券を25枚受け取ることができる。買い物の際は原則としてお釣りをもらえず、使い切りを前提とする。使用できる地域は発行した自治体内に限定し、有効期間は19年10月~20年3月とする。

 商品券の発行は、公明党が強く求めていた。政府は現金を使わないキャッシュレス決済で買い物をした消費者に2%分をポイント還元する制度を検討しているが、クレジットカードなどを持っていない低所得者らに恩恵が及ばないためだ。

 商品券を巡っては、14年末にまとまった緊急経済対策で「プレミアム付き商品券」が盛り込まれた。当時、各自治体が独自に決めた上乗せ率は2割程度が多かったが、今回の上乗せ率は25%になる。

 政府・与党は、割引商品券を購入できる対象などを、年末までに詰める。政府内では、本人確認のためにマイナンバーカードを活用する案も浮上している。

2万円で買える「2万5千円分の商品券」案検討 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

消費税増税に伴う低所得者の負担軽減策として、電子決済した場合にポイント還元する方策を検討していたことは記憶に新しいかと思います。

「それ、カード決済の機械がない中小事業者はオコにならない?」なんて小学生でも思いつきそうな課題を「低所得者はカードを持っていない。恩恵が及びづらい。」などという建前で覆い隠すため「紙なら喜んで使うやろ」としたあたり、虚しさと切なさと残念感が溢れでてきちゃいますね。

でも20,000円で25,000円分と聞くとテンション上がりますよね!

この手のプレミアム商品券って、わたしの記憶にある限りでは1999年に行われた地域振興券の配布と同じタイミングで、市(当時住んでた神戸市)が主体となって行われたのが初めてだった気がします。

その後、各自治体が政府の補助も受け、居住市町村内でのみ使える商品券を発行してきました。まあでもプレミアム分は10%〜20%くらいが多かったんじゃないでしょうか。25%というのは、なかなかの高水準ですね。

バラマキのコスト

 ただ軽減税率の導入でただでさえ手間なのに、ここに更に面倒なことをやることに意味はあるの?という人は多いでしょう。

ぶっちゃけ小売店側に関しては、独自商品券の取扱は比較的慣れっこです。中小自営業店は、クレジットカードの決済手数料は重たい負担と考えるものの、経営者の人件費はコストと考えない傾向がありますので、さして問題視はされないでしょう。

むしろ大きいのは行政側のコストですね。かつて消費税増税のタイミングにあわせて「臨時福祉給付金」の名目で

  • 住民税非課税世帯・・・3,000円
  • 遺族障害年金受給世帯・・・30,000円

を銀行振込で配布したことがありました。この時は、ひとり3,000円配るのに1,587円ほどの予算が計上されました。

www.yutorism.jp

 商品券だと現物の印刷コストなどもかかるので、更にもっと高い金額がかかるかもしれません。

まあ「高いから駄目」ってもんではないとは思うんですけどね。仮に高い経費がかかったとしても、それを上回る価値があればどんどんやれば良い。

しかし、そんなもんあるんでしょうか?

ココが変だよプレミアム商品券

プレミアム商品券には、下記の記事でもちょろっと取り上げましたが、

  1. 本当に必要な人に情報が行き渡らない
  2. 本当に必要な人は買いに行くけない
  3. 本当に必要な商品には使えない

といった問題があります。

www.yutorism.jp下図は、世田谷区で実施されたプレミアム付商品券を発売初日の平成26年6 月14 日(土)に購入したひとにたいして行ったアンケート調査の結果です。

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見ての通り、60代以降で過半数を占めています。世田谷区は、保育園の待機児童も問題になるくらい、若い世代の居住者も多いエリアです。20代と30代で、28%の居住者がいるにもかかわらず、『プレミアム商品券』を購入しに来たのは9.8%に過ぎません

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世田谷区のプレミアム商品券が、高齢者・障害者・子育て世帯優先であった影響も大きいとは思うのですが、それでも気になる比率ですよね。どうして若い世代はプレミアム商品券を買いに来なかったのか?それは、告知自体の影響も大きいと思うんですね。

プレミアム商品券の存在を知ったきっかけとして、一番多いのが「新聞折込チラシ」なんだそうですが、皆さん新聞は取っていますか?他にも区報でも知らされていたみたいですけど、住んでいる自治体の発行しているものって皆さん読まれてますか?

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若年層では、そうした情報源へのアクセスが少なく「ちゃんと知らされていなかった」面がかなり大きいのではないでしょうか。

更に、仮に存在を知っていたとしても、日々忙殺されている人たちにとっては、商品券を買いに並びに行くほどの時間的余裕が無いケースも多い。また今回どうなるかはわかりませんが、スーパーやコンビニといったチェーンストアでは利用できない場合、昼間の商店街でしか使えない商品券をプレミアム付きで売られても・・・という人も多いでしょう。

プレミアム商品券はコストパフォーマンス抜群の政策

「奪う時は目立たぬように。与える時は目立つように。」は政治の常ではありますが、消費税増税の負担増をプレミアム商品券で還元なんてその最たるものです。

この政策のメリットの大きい主な層は、「しっかり情報を集めていて」「購入できる時間的余裕があり」「消費の選択肢の多い」人たちです。代表例としては、

  • 高齢者
  • 専業主婦
  • 自営業者

あたりですかね。まさに「選挙に行く層」ですよね。ピンポイントで最初からターゲットを絞ってしまうと批判も受けやすくなりますが、全ての人に開放される形式をとればそうした批判も受けづらくなる。

ですが、

  • 毎日朝から晩まで働き通しの低所得者
  • 家から出ることもままならない障害者
  • 日本語を覚えながら働いている外国人労働者

はアクセスすることができるのでしょうか。そうした「選挙には来ない人たち」からも薄く広くきちんと集めた上で、「選挙に来てくれる人たち」にお金をばらまく仕組みと考えれば、政治家にとってはコストパフォーマンス抜群の政策です。

こうしたやり方を許してしまうと、政治的発言力の高い有閑階級にばかり都合の良い国になり、ますます本当に困っているひとが苦しい環境から抜け出せないようになってしまいます。

こんな政策ばかり打ち出す政治家を議員にしておくことのコストパフォーマンスについては、有権者各位にてじっくり検討が必要かと存じます。

ではでは、今日はこのへんで。