最近、何の因果か老後のお金に関する記事を何本か読んだ。
まだまだ、心配するには鬼が笑い死にするくらい先のことだと思うけど、光陰矢のごとし、気づけばあっという間のことかもしれないので、しっかり先を見据えて備えておきたいところ。
FPなる呪術師の一族は、迷える子羊達にマントラを唱えることを生業としておるため、とかく悲観的に考えがち。でも家事が億劫になった結果宅食なんかも利用するようになるだろうし、夫婦で食費が6万5,000円というのもとりわけ高いように思えない。家の近所で過ごす時間が増えれば、交通費が二人で2万5,000円というのもそれほどまでに高い金額では無いんじゃない?
諸々のその他の記事を眺めていて思ったけれど、老後のライフプランを考える中で最も重要なポイントは『何歳まで働きつづけるのか』じゃあないの?でも案外その点に触れている記事は少ないんだな。下記記事でも触れましたが、たいていの人が生涯に得られる収入は、資産運用の結果よりも給与所得のほうが多い。
月に10万円のアルバイトでも、10年続ければ1200万円。退職金が無くても平気そう?同じ10年間なら、2,000万円を5%で複利運用(取り崩さないことが前提)したときの増分が1,258万円ですが、まだ働くほうが現実的なんじゃないかなあ。
わたしがリタイアを考える頃には随分変わっているかもしれないけど、高齢者の就労事情ってどんな塩梅なのかねえ、と思ったのでちょこっとまとめてみた。
結局何歳まで会社員として働けるのか問題
増大する年金支給額を抑制するため、厚生年金の受給開始年齢を65歳とするのが政府の基本方針。
(出典:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」の概要)
一方で、現在多くの企業が60歳での定年制を取っているため、60歳から65歳の間に収入の空白地帯が発生する。
(出典:80%の会社は「60歳」が定年。65歳までは再雇用制度のお世話に)
この点については、段階的に定年制度を伸ばしていくことを政府は法制しているけども、そもそも60歳の時点で定年制のある会社員として働いているひとの割合っていかほどなんだろう、と思ってデータを漁ってみるとこんな感じ。
- 50~54歳:74%
- 55~69歳:68%
- 60~64歳:33%
(出典:労働力調査結果より抜粋)
平成28(2016)年時点での、各年代別の正規労働者数÷就業者数の値。男女差別するつもりはないけど、この年齢層だとまだまだ男女差が大きいだろうから、男性のみの数値で比較しております。ここに入っていない人は、フリーランス等の自営業、アルバイトや派遣社員、会社役員等々。
正社員じゃないからダメなんてわきゃないけど、一寸先は真っ暗闇のこのご時世。おじさん、どちらかというと定年までちゃんとお仕事が出来ているかどうかのほうが不安です。ライフプランニングを考えるのならば、引退するまでまともな仕事に就けるかどうかを心配するほうが、爆笑してた鬼も納得してくれると思うんだよなあ。
昔の高齢者は今よりずっと働いていたみたいだよ
でまあちょっと話は代わりますけど、前に記事を書いていて こんなデータを発掘したんだよね。
(参考:『病院をサロン代わりにしている年寄り』って本当に居るのかな? - ゆとりずむ)
一日の時間の使い方を分析した統計データからの抜粋だけど、これを見ると70歳以上のお年寄りの労働時間は、40年前と比べると半分くらいになっている。いまよりも平均寿命も短いにもかかわらず、昔のお年寄りは今よりもずっと働いていたことになる。
全く近頃の年寄りときたら
と、言うのは勝手だけれど、単にディスるだけじゃ何も生まれない(とはいえ一度は言ってみたいよねー)ので『なんでやねん』と探究心を持つことは大切だ。高齢者が昔よりも働かなくなったのは、それほど難しい話じゃない。自営業者が減ったからだ。
我々のような宮仕えの人間は、割りと十把一絡げに、一定の年齢に達したら"仕事"を失うことになる。一方、自営業者はそのタイミングを比較的自由に決められる。
(出典:65~69 歳男性の就業率の推移について)
農業従事者や、商店街の商店主、あるいは町工場の親父さん。かつては日本の至る所に、自営業者がいた。元号が平成に切り替わる前は、60台で働いている人の半分くらいは、そうした人々だったんだけど、いまやそうした人の数は減りつつある。
まあこれは、ある種ひとつの時代の必然だよね。ネットもスマホも無かった時代に、大規模な組織を運営するのは、とっても大変だった。その分、小回りの利く、地元の自営業者が重宝されたこともあった。ただ今はそうじゃない。情報がリアルタイムにコントロールされ、大組織の経営者が意思決定の為に必要な時間も大幅に短縮された。そんなこんなで、多くの就業者が、"従業員"となった。
年金の役割
そうした給与所得者諸氏は、一定の年齢に達すると、一斉に職と生活の糧を失うことになる。現在の厚生年金制度は、それを前提として作られている。
まあ確かに、40年前であればそれで良かったのかもしれない。しかし世の中は変わった。平均寿命が伸びたこともだけれど、以前よりも体力が必要とされる仕事も減り、定年後であっても様々な雇用形態で働きつづけることが出来るようになった。いまや、コンビニやハンバーガーショップに行けば、高齢者が元気に働いているところを見ることが出来る。
『高齢者の就労』のいうと、なぜだかすぐに『若者の雇用が奪われる』とか『無能な年寄りを抱え続ければ生産性が下がる』という声が上がってくる。定年制・終身雇用・年功序列の3点セットの元において、定年間際の窓際フレンズを飼い続ければそんな現象も生じるだろう。が、もうそんな幸せな時代でもなかろう。むしろ高齢者の所得が増えれば、それに伴い消費が増加し、若者の雇用の機会も拡大すると考えたほうが良い。ちゃんと同じ土俵にたてば、いい若いもんが、爺婆に負けるなんてことあるわけないよね?
労働人口が減少する社会においては、働けるものは働くべきなのだ。
元来、年金とは『年金保険』だ。老後のための強制貯蓄といった側面もあるけど、働けなくなったときにその生活の支えとなるべきものだ。ところが十分に体が動けるうちから支給してしまい、むしろ労働参加の機会を奪っているのではなかろうか。
我が国の平均寿命は、男女ともに80歳を超えている。将来推計はさらなる長寿命社会を予想している。
素直に考え、40年間働き、20年間はのんびり過ごすというのはやはり無理があるんじゃないだろうか。年金の『保険』としての役割を考えれば、
- 平均寿命までは働くか貯蓄で食い繋いで貰う
- 平均寿命を超えたあとは貯蓄ゼロでも行きていけるだけの額を支給する
- 平均寿命前に働けなくなった層についての社会保障を充実する
を標準に『年金受給開始は80歳。それまで働け』として若年層の負担を軽減してもらったほうがいいんでねえの?と思うんだけど、国民にDNAレベルでまで染み付いた『定年後は年金を貰ってのんびり余生を過ごす』ライフプランを拭い去るには、相当な政治的腕力が必要なんだろうね。
現在でも、受給開始年齢の繰り下げによる支給額増加制度なんかもある。これは『まだ働くんで、年金の支給はもうちょっと後からでも良いです』と宣言し、その代わり後で貰える額を増やす仕組み、と理解すれば良い。
が、あんまり割りが良いとも思えないんだなあ。
(出典:年金繰下げ受給、何歳から受け取るのが得? [年金] All About)
年金年額100万円の人の場合、70歳まで繰り延べたら受け取れる額は142万円。85歳まで生きれば総額100万円くらい余計に受け取れる計算になる。だけどこれさ、年間の課税所得が上がるわけで、累進性になってる所得税や介護保険料では生涯支払額は増える可能性がある。(この辺は、今度ちゃんと考証してみよう)
元気にピンピン働いていてくれれば、所得税だって徴収出来るわけだし、このあたりの制度は『老後も元気に働いた方がお得』という風に国民の意識を持っていくためにも、見直していってもええんとちゃうのん?と思う今日このごろでございます。
ではでは、今日はこの辺で。