ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

教育ローンを借りると結婚できないのかと奥様の教育ローンは誰が返済するのか問題

こんにちは、らくからちゃです。

朝からスマホでぽちぽちネットサーフィンをしていたら、良い記事ネタなかなかおもしろい記事をみつけました。

www.sekkachi.com

各種調査結果を比較しながら、独力で分析を試みた意欲的な記事だとは思うのですが、どーもしっくりとこない。

『教育ローンを借りると結婚できない』を証明するためには『教育ローンを借りなければ結婚できた』の具体的な調査結果もほしい感じがするんですよね。属性が近い集団内で、

  1. 教育ローンを使って進学した層と高卒で就職した層の婚姻率
  2. 教育ローンを使って進学した学生とそうでない学生の婚姻率

みたいなデータがあればいいのかな?裏・逆・対偶とか、背理法とか、反証テストとか、感覚の世界で生きてるわたしの苦手な分野ですね(笑)。せっかちぱぱさんのほうが得意そうですので、分かりやすいまとめをお待ちしておりますщ(゚д゚щ)カモーン

ただ本気で分析するなら、様々なその他の要因も除外した上で、因果推論せにゃなりませんね。『こどもに朝ごはんを食べさせると頭が良くなるのか』『ビールが売れればアイスクリームが売れるのか』みたいな話ですね。

www.yutorism.jp

『教育負債がライフプランニングに与える影響』は、政策的な側面からも調査に値するテーマだと思いますが、細かな分析には、時間も労力もかかります。代わりになるかは怪しいところですが、実際に教育ローンを支払っているひとに対するアンケート結果であれば出てきましたので、眺めてみたいと思います。

教育ローンがあると結婚できないのか問題

今回、ご紹介したいのは、こちらの資料です。

まずお断りしておきますと、こちらの調査は労働者福祉中央協議会という生協系の組織が取りまとめたものになります。同会は『反格差』『反貧困』に取り組んでいるそうですが、最近は教育ローンに関する問題について重点的に取り組んでいるようです。

そんなわけで、調査対象もこんな感じです。

【実施概要】
本調査は奨学金の利用実態や問題点を明らかにし、政策・制度の改善につなげることを目的に実施したものである。時期は 2015 年 7~8 月、方法は自記入式のアンケート調査である。調査対象者は勤労者とし、地方労福協のほか、UAゼンセン、自治労、日教組、JP労組、労協連から各 300 部を配布することをベースにした。なお、追加できる組織については割り当て数を増やして対応した結果、最終的な配布数は 17,981 枚となった。有効回収は 13,342 枚で、有効回収率は 74.2%である。

【調査対象者のプロフィール】

プロフィールをみると、性別は男性が 72.0%、女性が 28.0%である。年齢構成は 10 代から 60 代まで幅広く分布しており、平均年齢は 41.8 歳となっている。最終学歴は「高校」が 36.5%、「大学」が 41.7%、「大学院」が 7.1%であるが、34 歳以下では「大学」が 59.9%、「大学院」が 15.7%を占めている。雇用形態は「正規社員・職員」が 82.9%と多く、<非正規社員・職員>は 15.1%である。

 何かしらのバイアスがある可能性は否めないのですが、その点は差し引いて考える必要がありそうですね。

まずは、そもそも教育ローンってどれくらいの人が使ってるのん?というところについてのサマリーがこちら。

 

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34歳以下では、半数以上の人が利用している結果です。こりゃまた多いもんですな。で、今回のアンケート結果の中の目玉のひとつが『教育ローン借りてると結婚できないの?』なのですが、それに関する結果はこう。

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結婚・出産・子育て・住宅購入・就職などに、奨学金の存在が影響していると思うか?についてまとめたものですが、結婚については、34歳以下平均で31.6%。500万円以上の借入があるひとについては50%が影響していると回答しています。

てぇへんだ、てぇへんだー!

出産や子育てについても、平均で2割近くのひとが奨学金に苦しんでるぞ!!こいつぁさっさとなんかしねえとてぇへんだー!

って思ったんですけどね。

何か違和感がある・・・。お風呂に入りながら考えた結果、その正体が分かりました。資料を眺めても『あるべき情報』が無いんです。それは『教育ローンの有無による結婚している人の割合や子供の人数の差』が、資料を端から端まで眺めてみても見当たらないんですよね。

本資料は、『教育ローンの有無が若者のライフプランに与える影響』から、なんらかの支援を求めるものです。調査内容には、配偶者の有無もバッチリあります。よって、借入総額ごとの婚姻率や子供の人数の情報を抽出するのは比較的容易なはずです。

にも関わらず『影響があると思う』なんてツイートはきちんと分析しているのに『実際にこの程度影響があった』というファクトを載せないのは何故か?もし、見落としていただけであれば大変ごめんなさいですが、

大して影響がなかったから載せなかった?

そんな風に考えるのは、ひねくれすぎでしょうか?

奥様の教育ローンは誰が返済するのか問題

そんなゲスの勘ぐりはさておき、同調査の中には、かなり切実な声が上がってきています。特に目を引くのが、女性側からの意見。

結婚とお金の問題といえば、一般に男性側の問題がクローズアップされることが多い気がします。そういや、わたしも過去にこんなの書いてましたね。

www.yutorism.jp

 今回のアンケートの自由記入欄からは、こんな意見があがっていました。

「奨学金の返還があるため、結婚、出産、子育てと人生のイベントについても仕事を休んだり、辞めたりしたくても収入がなくなるという不安が常につきまとう。(女性・27 歳・正規)」

自分に奨学金と言う借金がある以上、結婚は出来ない。(配偶者に借金を背負わせることになるので…。)このままだと出産時期を逃してしまいそうで恐いです。 (26 歳女性・正規)

 実際に、教育ローン利用者がこれだけ増えれば、結婚相手が負債を抱えている可能性も少なくありません。

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余談ですが、教育ローン利用者の比率と上表の比率の差から、『教育ローンがあると結婚できない』が立証できるかな?34歳以下で教育ローン利用者は53%、うち84%が現在も返済が続いているそうなので、現在返済中が44.5%くらい。

結婚している人のうちで、現在返済中が14.2%なので、十分有意な差になりますが、あくまで本人の年齢ベースなのでいまいち断定的には言えませんな。。。やっぱり労福協からちゃんとしたデータを出してもらったほうが良さげです。

閑話休題。

男女雇用機会均等法も広まり、夫婦共働きの比率はかなり高まってきましたが、それでもやはり妊娠や出産において、女性の収入は不安定になりがちです。

日本学生支援機構の出しているデータを見る限り、教育ローンのほとんどは本人か父母が払っており、配偶者が払っている例は稀です。

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ただ延滞理由の中に占める『本人の配偶者の経済困難』をみると、名義としては本人が払っていても、生活費の分担の比率などで、結局家計全体で負担しているのが実態でしょう。

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ただでさえ働けない期間が生じる上、借金の返済まで頼むことになると、精神的にも辛い状況になりそうです。

じゃあ借金をしてまで大学に行く必要なんて無いのか。

ここらへんが難しいところかなーと思うのが、『働いて元が取れると判断したから金借りてまで大学行ったんやろコラ』という意見もわかるのですが、それと同時に『大学は就職予備校じゃねーぞ。すべての国民には高等教育の中で、知的探求を行う権利があるんじゃ』みたいな話もあると思うんですよね。答えはその中間のどっかにあるんでしょうけどね。

きっとここは、現行の貸与か給付かも含めた『奨学金』制度の話だけではなく、もっと広範な話になりそうな気がするので、またどこかで考えてみたいかなと思います。

ではでは、今日はこのへんで。

 

 

参考文献など:

20171101参考情報に関するlacucarachaのはてなブックマーク