こんにちは、らくからちゃです。
ここ最近、職場でチームメンバーを対象に、日商簿記2級のボランティア講師をやらせていただいております。7月の頭からはじめて、だいたい週2ペースくらいで進めてきましたが、やーっと商業簿記を一巡することができました。ちなみに教科書はこれ。
やっぱり人に教える機会を頂けるのは良いですね。説明したり質問に答えたりすることで、自分の頭の中も整理され、理解が深まっていきます。アウトプットって大事よね。
私が簿記2級を取得したのは西暦2006年の11月、かれこれ12年近く前のことでした。その後簿記1級の勉強をしたり、大学で会計学を勉強したりしてましたので、ちょっとくらいなら教えることはできます。ただですね
試験範囲広くなりすぎとちゃいます?
事前に読んでいたid:iGCN さんの挑戦記事や、色々と漏れ伝わって来る話から「なんか簿記2級やべぇことになってる」ってことは理解してました。ですが、教えてみて改めて気がついた。もうこれ2級ってレベルじゃねえぞ。広すぎる、そして難しすぎる。
いままで2〜3ヶ月勉強すれば受かったものが、一気に4〜6ヶ月くらいになった感じがします。具体的な出題範囲の改訂履歴については、この辺に書いてあるとおり。
平成19年以降、ほぼ毎年のように改定が続き、感覚的には1.5倍くらいのボリュームになった気がします。どれだけヤバいことになっているのか。じゃあここらへんで、新しく簿記2級の試験範囲に仲間入りしたクレイジーなメンバーを紹介するぜ!!
最近簿記2級の試験範囲に加わったもの
クレジット売掛金・電子記録債権債務
- やばたにえん度 ★☆☆☆☆
- 2016年6月から加入
まずは軽いジャブから。もはや紙の手形なんて滅多にみなくなった一方、代わりにクレジット決済は大幅に普及したことから新たに加入。
そこまでけったいな処理をやらせるわけでもなし「なんか勘定科目ちょっと増えたなあ」という程度。これくらいならまだどうってことありませんね。
役務収益・売上原価対立法
- やばたにえん度 ★★☆☆☆
- 2016年6月から加入
単語だけ聞けば耳慣れないけど、役務収益はサービス業向けの収益費用の計算についてで、売上原価対立法は売上を立てると同時に商品勘定を引き落として利益を上げる仕訳の起こし方などなどについてって感じ。
これも時代だなあと感じるくらいで、意味ワカンネーとさじを投げるにはまだ早すぎるレベルっすね。問題はここからだ。
その他有価証券・関係会社株式
- やばたにえん度 ★★★☆☆
- 2016年6月から加入
そんな意味不明な区分廃止しろよ!と受験生をイラッっとさせてくれるアレが、1級から2級へ降臨。不幸中の幸いとして、利息法での処理は1級のお楽しみに残しておいてくれるらしい。
あと問題集見てたら、短期・長期の区分みたいな論点も入ってたんだけど、これも昔の簿記2級では見なかったような・・・。
圧縮記帳
- やばたにえん度 ★★★☆☆
- 2017年6月から加入
補助金の受取益を1年で処理しちゃうと、なんかすんげー儲かったみたいで良くないよな!と、言っていることは分からんでもないが会計学徒にとっては余計なおせっかいでしか無い処理も1級から2級へ降臨。
資産の金額を調整しとけば、将来の償却費を増やすことになるからそれで回収できて・・・みたいな話、2級受験生には早すぎません?
リース取引
- やばたにえん度 ★★★☆☆
- 2017年6月から加入
それレンタルしてることになってるけど、実質借金してるのと同じじゃん。ちゃんと資産負債計上しとけよ。という、資産を小さく見せたい経営者とオリックスにとっては大変迷惑な会計処理。
これも幸いにしてリースの判定やらキモいところはご容赦頂けるそうだけど、こんなんどないして2級受験生に理解させろっちゅーねん。
ソフトウェア
- やばたにえん度 ★☆☆☆☆
- 2016年6月から加入
バグとかリリースの遅れとか販売計画未達とか、システム屋にとっては胃の痛くなるような生々しい単語が連発で、SIer系受験生をドンヨリさせたあいつも2級に参戦。
ただ、ハラハラするシチュエーションはあんまり出てこず、建物・備品の一種くらいの扱いのようなので、そこまで難易度は高くない。地獄は1級で見よう!
返品調整引当金
- やばたにえん度 ★★★☆☆
- 2016年6月から加入
売上割戻引当金・商品保証引当金につづき、売買取引系引当金三兄弟(?)の返品調整引当金も仲良く2級に推参。こんなもん本屋さんに就職する人だけにやらせりゃええやん。
あと知らないうちに、退職給付引当金も2級の範囲に入っているみたいだけど、差異計算みたいなエグいのはやらせないようで一安心。
外貨建取引
- やばたにえん度 ★★★★☆
- 2017年6月から加入
グローバリズムの波もここまで来たかとため息の一つも付きたくなる。つーか簿記2級が想定している会社って、直接海外取り引きすんの?やったところで商社経由じゃね?しれっと為替予約までいれんなよ。
唯一の救いは、あくまで売買取引と資産の換算程度で、海外支店との本支店会計が対象にならなかったところかなあ。
税効果会計
- やばたにえん度 ★★★★★
- 2018年6月から加入
日本商工会議所曰く「もはや上場企業のほとんどが税効果会計を適用しており、経理担当者にとって意味不明な資産や負債を残したまま2級の学習を終えることになるのはまぢ無理」とのことだけど、教える側にってもまぢ無理だわこんにゃろー!!
会計上の利益計算と税務上の所得計算の差異から生じる将来の課税額を増減する要素について資産負債計上を行う。
文字にするとこの程度の話だけど、プラスとマイナスがごちゃ混ぜになる計算で確実に受験生のやる気を削いでいく鬼門中の鬼門。やっぱ2級には早いんじゃねえんっすかね・・・。
連結会計
- やばたにえん度 測定不能
- 2017年6月から加入(2018年6月には更にアップストリームが論点追加)
個別会計の時代じゃないってことは分かるんよ。簿記2級って結局連結についてノータッチなのヤバくない?みたいな話は昔からあったけどさ。ちょーーーーーっと欲張りすぎじゃねえんすか?
ただでさえ学習範囲が広くなり、もう受験生のライフはマイナスなのにトドメさしちゃう?しかも非支配株主持分(昔で言う少数株主持分)もある状況まで想定させるってひどくね?せめて完全子会社だけにするとかいう配慮はなかったの?
だったら持分法も出しゃええのに、そこはカットっすか。ちょ、良いこと思いついたみたいな顔するな!!やめて・・・!
最近簿記2級の試験範囲から削られたもの
細かいところを上げればまだでてくるだろうけど、ざっとこんな塩梅である。中には時代にそぐわないという理由で、1級に昇格したものも何個かあります。
大きなところでいうと
- 特殊商品売買(予約・委託・未着品・割賦・試用)
- 社債の発行
- 繰延税金資産
あたりがそうですねー。特に特殊商品売買がなくなったのは大きいですね!実務でも、もはや利用シーンは少ないでしょうし、パズルみたいな意地悪な問題がなくなるのも良いことです。
あと特殊仕訳帳や5伝票制なんかの論点も削られ、紙の経理事務から、システム上の会計システムを念頭においた内容にシフトしている点はありがたいですね。
しかしなあ、やっぱり全体的に「簿記2級ってこれで良いんだろうか?」と思っちゃうんですよね。
簿記2級は何を学ばせたいのか
そもそも簿記2級は、何を目標としているのか。わたしの受験した2006年頃には、(過去のwikipedia上の履歴ですが)こんな風に記載されていました。
商企業及び工企業における経理担当者及び経理事務員として必要な高校程度の商業簿記及び工業簿記に関する知識を有し、かつ高度な実務処理ができる。
ちょっと複雑な経理上の実務処理ができる。そんな辺りを目標にしてたんですね。それが今はこうじゃ!
高校程度の商業簿記および工業簿記(初歩的な原価計算を含む)を修得している。財務諸表を読む力がつき、企業の経営状況を把握できる。相手の経営状況もわかるので、企業の経営管理に役立つ。
はっきり言って、別の試験である。
単に仕訳を起こさせるだけじゃなくて、相手の経営状況まで分からせたいんですって。そういうのは、ビジネス会計検定とか別のでカバーさせたらええんとちゃうの?と思わんでもないのですが、そういう方針だそうな。
にしてもどうかなーと思うのが、すでに広く使われているからといって、上っ面の会計処理だけ叩き込んだところで仕方なくない?
簿記2級には「理論」の問題は無いんですよね。
リース会計・税効果会計・連結会計とかって、法的実体である法人と経済的実体である企業集団の間には乖離が生じることがある。よってそれを埋めるような会計手続きが必要である。っていう理論の勉強と一緒にやって意味が分かるもんで、試験範囲にはそこが欠落してるんですよね。なので、教科書を読んだだけだとチンプンカンプンで、と相談を受けることになる。
どこまで試験範囲に含めるのかは難しいところだと思いますけど、2級さえとれば会計が分かるか?と言われれば、まだ厳しいところがあるんじゃねえのかなあと思うんっすよね(偉そうに言えるほど理解できてるとは言えないですけど)
一生モノの資格なんて無い
今回、簿記2級の試験範囲の大幅改定を受けて、改めて考えたことがあります。
今回の簿記試験の試験範囲改定を見て、改めて痛感したのは
— らくからちゃ (@lacucaracha) September 6, 2018
「一生モノの資格」なんてものはあり得ない
ってこと。社会が変化していく以上、受かればいっちょ上がりな永久資産になる資格なんてあり得ない。ほっときゃどんどん価値は下がっていくから、常に勉強しつづけなきゃいけない。
日商簿記検定には、有効期限はありません。一度取ったら、死ぬまで名乗り続けることができます。「資格は一生モノ」「資格は裏切らない」みたいな謳い文句を耳にすることがあります。
確かに、何も勉強していない人と比べれば、資格や試験を受けるのは大きなアドバンテージになります。でも社会が変化していく以上、学んだ内容は、必ずいつか陳腐化していきます。一歩前を進んでいたつもりが、そこで勉強を止めてしまえば、気づけば最後尾にいることだってありえます。
特に、過去に2級を合格されたひとは、是非もう一度受験することをおすすめします。はっきり言って、ここまで内容が変われば、もう別物の試験です。そういや、取引先の経理部にこんな人がいました。
取引先の経理部の20代の若手社員に、毎年簿記1級を受験しているひとがいる。ずっと受からないんじゃなくて、ずっと合格しつづけている。「試験範囲も変わりますし、実力を維持したいんで」とのことだけど、2級・3級ホルダーも、これくらいしたほうが良いと思う。
— らくからちゃ (@lacucaracha) September 6, 2018
わたしもずーっと勉強してこなかったので、偉いこと言える立場では無いですけど、一緒に簿記1級の試験勉強中です(๑•̀ㅂ•́)و✧ いずれ良い報告ができるとよいなあ。
ではでは、今日はこのへんで。