こんにちは、らくからちゃです。
ここ最近、お仕事の方が忙しくて毎日忙殺されております(´Д⊂グスン 気がつけば午前様になっていたり、大変疲れました(´・ω・`) 全ては私のお仕事が遅いのが原因なのですが、もっと上手にやる方法を考えないとなあと思う日々でございます。
そういや以前、こんな記事を書かせて貰いました。
実のことを言うと、話を聞いたのは半年ほど前のことだったので思い出しながら書いたところもありました。で、改めて記事に起こしてみたら『どうしたら仕事の速度が早くなるのかなあ』と細かいところが気になりまして、ちょうど東京に来ていた本人を捕まえ、根掘り葉掘り聞いてみました。終始本人は、
『全部、試行錯誤していく中で生まれた怪我の功名みたいなもん。社員が優秀だったから上手くいっただけで、俺は大したことをしていない。よそで通用するかは分からん』
と言っていましたが、案外いろんな会社が抱えている根っこの部分をほじくり返すことに成功したんじゃないの?と思いましたので、ちょろっとまとめておきたいと思います。
ことのきっかけ
そもそも何がきっかけで、副社長になることになったのん?
当時、技術戦略担当の役員をしてたんだよね。ざっくり言うと、新しい技術の評価をして、自社で製品化を目指すのか、それとも他社と協業するのか。技術ポートフォリオを考えていくお仕事ね。同社の社長とは、そうした付き合いの中で出会った。
同社は、病院や医院を中心にシステムの開発導入を行っていた地場SIerだった。お互いに仕事を依頼したりする関係になり、社長とも歳は一回りほど違ったけれどサッカーやガーデニングとか趣味の話題でも盛り上がり、公私とも付き合いをする仲になった。
だいたい1ヶ月に1回くらいは顔を合わせていたんだけど、色々忙しくて、3ヶ月ほどメールでのやりとりだけだった時期があった。その後久々に会ってみると、げっそりと痩せ、すごくやつれて見えた。話を聞くと、炎上した案件の火消しやらで、心身ともに完全に参ってしまったようだ。
なんとか一段落ついたらしいものの、どう見ても働ける状態には見えなかった。『しばらく休んだほうがいいですよ』と言ったものの、『このままでは会社は破綻してしまう。社内に立て直しが出来る人材は居ない。持っている株式の全てを譲渡してもいいので、協力して貰えないか』と懇願さちゃったんだよね。
で、会社として支援することにしたと
うーん・・・、そう言われると微妙なラインなんだよね。ひとまず持ち帰って役員会で報告はしたところ、『君は、担当だし個人的にも仲がいいから』と交渉からは外された。で、『まとまったぞ』と上がってきた結果を聞いてみた所、条件はこんな感じ。
- 弊社は同社に出資する。
- 弊社からは俺を役員として派遣する。
- 俺の役員報酬は出資額より出すべし。
無償から有償なら随分条件としては優しくなったじゃん
そうかなあ。もともと先方は、経営権の完全譲渡を条件に、救済合併の上、社員の雇用と取引の継続を希望していたはず。出資額は50%分を越えていなかったから、うちの子会社を名乗ることも出来ない。その見返りは、ひよっ子の俺が役員に加わること。どう考えても割りに合うとは思えない。
でも、同社に倒産されたとしても弊社の損失はさほど大きくない。むしろ手負いの状態で救済するのはリスクが大きい。この条件なら、仮に失敗しても損失は、俺の人件費だけでほとんど無い。
正直、俺に出来る自信は無いですよ。向こうはこの条件を呑むんですか?と、うちの社長に聞いてみた所『君が来てくれるんなら、それだけで十分だと二つ返事を貰ったぞ』と。
そりゃ行くしか無いよね(笑)
工期と工数
でもやっぱり現場は反発するんじゃないの?
現場は、敗戦直後の日本みたいな感じだった。『社長を追い詰めたのは、俺達の力量が足らなかったせいだ』とみんな思っていたらしく、俺は連合国総司令官みたいな待遇を受けたよ。
最初に気づいたのは、社長も含めて抱え込んじゃうひとが多いこと。高卒新入社員が中心のうちと比べれば、同社は院卒や大企業から引き抜かれてきた人も多く、能力も仕事に掛ける意欲も凄く高いように感じた。なのに毎日終電土日出社上等で働いて、平均残業時間1桁有給消化率9割の弊社よりも一人あたり利益が少ない。そこをどうするか、が最初の課題だったなあ。
まずは何からはじめたの?
次に気づいたのは、この会社には『工期』の概念はあっても『工数』というものは殆ど無いんだなあ、と。
受注時に作業工数の見積もりは行っているけど、プロジェクト実行時に工数のコントロールがほとんどまともに出来ていなかった。作業員の能力に差があるのは当たり前なので、見積もりをするときには平均値でやるのは良い。ただそれを実行するときには、作業者の能力に応じて適切な予定工数を再検討する必要がある。
更にマズいことに、見積もり時の標準作業時間が、ベテランを前提になっていた。そのため、ビギナーの作業が遅れ、何とかして工期だけは守るためにベテランがそのリカバーにまわる。結果として全体の負荷はどんどん増え、ベテランは火消しに追われる。
それでどうしたの?
まずは、ちゃんとした労働時間を記録するところから始めた。弊社で開発している人員管理システム、簡単に言えばサイボウズとRedmineと給与会計システムへの勤怠連携機能がついたようなもの、があるんだけど、それを拝借・・・横展開させて貰った。
正直みんな、工期を守ることに必死で、作業別の工数の実態は全く把握していなかったんだ。データを改めてみんなに見てもらって、やっぱり同じタスクでも全然係る時間は違うよね。そのことを意識して作業を進めないとダメだよね。ということを再確認した。
タスクの割り振りの仕方
見積むつかしいよね・・・
データが集まるようにはなり、個別タスクへの意識も高まっていった。問題は、見積もりをどうするか。過去のデータをもとに、判断して割り付けていってもいいのかもしれないけれど、どこまで信頼できるものなのかも分からない。そこで実際の作業者に見積もりをさせるようにした。
作業タスク別に、3人位に見積もりさせる。それぞれ必要な作業やリスク要素を洗い出して、スコープを明確化させた上で必要となる工数を出させる。そして見積工数が一番小さかった者に、一番大きかった者の分を予定工数としてスケジュールを引くようにした。
そうすれば、自然とベテランの作業は空くよね
ぶっちゃけ、現場の運用はマネージャーがしてたから、細かいところは分かんないところもあるんだけどね。
最初は『実績ベースでマネージャーが判断するのは危険。予定ベースでも一番安全な数値を取ろう』というところから始めたんだけど、やってみると予想していなかった効果が色々と出てきたんだよね。
このルールに従うと、ビギナーの作業速度が遅いと、ベテランが遊ぶ時間が増えてしまう。あと、特定分野に強いベテランも遊ぶ時間が増える。じゃあマネージャーとしてどうすべきかというと『ビギナーの能力を上げる』『ベテランの負荷を分散させる』のが得なんだよね。
現場はどういう反応だったの?
最初は、マネージャーの反発が大きかった。『時間が空いているのは勿体無い。タスクを埋めよう』と。でもその管理って今の体制で出来るのかな。まずは予定の工数が守れるようにするのを最優先にして、落ち着いてからにしようよ、と。
この会社、みんな取り憑かれたように『仕事をたくさんすること』への希求が強かった。自分の力で仕事をたくさんやり遂げられるエラいことなんだと。でも経営者としては、そんな個人的な拘りみたいなものはどうでもいい。チームプレイなんだから、チームへの貢献で評価したい。
ビギナーは、ベテランにきっちり質問して予定通り仕事を仕上げること。ベテランは、ビギナーが予定通りに作業できるよう、さっさと作業を片付けて体を明けておくこと。マネージャーは、ちゃんとスケジュールを管理すること。そこから始めようよ、と説いて回った。
効果が出るにはどれくらい掛かったの?
だいたい2~3ヶ月くらいかなあ。まずは、スケジュールがぐちゃぐちゃになることがかなり減った。ついで、ビギナーの作業能率が大幅に改善し、ベテランも難易度の高めの案件に投入しやすくなった。マネージャーたちも、ことが起こってから自分が突っ込むより、きっちり『管理』をすることの有用性を理解していってくれたよ。
なんかオシムのポスター貼ったりしたっけな(笑)。
顧客の選び方
でも、こなせる作業量は減るよね?
そうなんだよね。特に、真っ先にあおりを受けることになったのは、営業チーム。彼らは、『こんなペースじゃ、全然仕事を取れない!』と怒っていたなあ。ただ彼らの仕事の進め方を見ていると、優先度の付け方がちょっと良くなかったんだよね。
彼らは『付き合いが長くて』『金額が大きい』案件を優先しようとする。でもそういったお客さんに限って、回答が中々出てこない。受注した際カバー出来るように、要員を確保調整するのも大変だし、失注した時のリスクも大きい。更にいうと、あんまり利益率は良くなかった。
人繰りに余裕のない状況だし、規模が小さくとも、うちを高く評価してくれていて、誠意を持って回答してくれる会社を狙っていこうよ、と言っても中々良い顔をしない。
小さくても儲けが大きい方がいいと思うけどなあ
彼らいわく、『付き合いの長いお客さんは融通が効きやすい』といって譲らない。融通がいいってどういうことよ、と聞いてみると、お互いちょっとミスがあってもケンカにならないし、困っているときはお互い様の精神で助けてくれる、と。
でもそれってさ、要は営業が楽なだけってことよね、と。同社の技術を評価してくれているわけじゃなくて、お互い甘えてるだけじゃん。そういうのが全部ダメとは言わないけど、これからはもっと、うちを評価してくれる会社との取引を増やそうよ。そっちのほうがみんな幸せになれるよと。
客をちゃんと選べと
飛び込み営業をしろ!とまでは言わなかったけど、なあなあの付き合いで、どこでもできそうな仕事を請けるんじゃなくて、ちゃんと必要としてくれる相手を選べば、レスポンスも早いしスケジュールも組みやすい。
面白いことに、レスポンスの速さって、規模に依存しないんだよね。大きな組織でも、意思決定プロセスがしっかりしているところは、早く回答をしてくれる。その分、こちらもスピード感よく仕事をする必要がある。良い取引先と付き合うには、良い仕事が必要だけど、それをきちんと認めてくれる相手と仕事をしたほうが、得られる利益も成長も大きい。
経営者の仕事
一時的でも仕事量が減ったら資金繰りは苦しくなったのでは
勿論(笑)。着任して半年後の賞与の時期が一番危なかったなあ。売上が減っていることを知っている銀行はあてに出来ない。『まあ今回は仕方ないか』と諦めモードに入っていた社員もいたけど、みんなが頑張ってくれて、サイクルが上手く回り始めていたこの時期に、ボーナスカットはどうしてもしたくなかった。俺の信用問題にもなるしね。
そこで、無理を承知で自社に掛け合ってみることにした。
また厳しい交渉になりそうだなあ
それがそうでもなかった。
会社の状況を全て説明し、今までやってきたこと、なんとか改善に向かっていること、どうしてもボーナスを出したいこと。俺に出来るのは、とにかく全てを正直に話すことだけだった。
『他から聞いた情報とも間違いはない。君を信じて全て出そう。ただ一個ウソをついてるやろ。この金額やと、少し足りへんのとちゃうか?』
それがうちの社長からの答えだった。少しでも断られる可能性を減らすために、その後の運転資金については、ほぼギリギリのラインで出していたところも、全てお見通しだったよ。
本当に出してくれるんですか?と確認したら『半年前とは状況が大幅に変わっていることは、俺も確認している。自分の部下が大丈夫だと言っているんだから、それを信じる。俺もお前を頼るから、お前も俺を頼れ。』と。
ちゃんと見ててくれたんだね・・・
着任したときは、同社社長は自分で抱え込みすぎなんだよ、と思っていたけど気がついたら同じ立場になっていたんだよね。
自社に戻って相談してみたら、色んな人から『案件紹介しようか?』とか『アドミ系の人を出そうか?』とか『業績評価をこう変えたらええんとちゃうか?』とか、色んな人が助けてくれた。
仕事はひとりで出来たとしても、みんなでしたほうがいいよなあと思ったね。
で、利益が2倍になったと
もともとが低すぎただけだから、それは大した自慢にはならないよ。3年たったいま、貸し付けたお金は、利息付きで全額帰ってきた。社員数も大幅に増えて、投資額は数倍になった。うちとの大掛かりな共同プロジェクトも成功した。それは自慢出来るかもしれない。
慰留はされなかったの?
まあそれなりには(笑)。でも、よそ者が大きい顔をして居残るんじゃなくて、俺の仕事を引き継ぐ人を育てるところまでが俺の仕事だよ。元々、社長が復活するまでのサポート役だしね。
いまは、当時のマネージャーたちがしっかり支えてくれているみたいだよ。
凄い人は作れないけど凄い組織なら作れると思う
結局振り返ってみて、同じことを他社でやれと言われたら出来る?
自信は無いなあ。色んな条件があったから上手くいっただけで、同じことをよそでもやれ、と言われたら難しいかも。だいたい俺、大したことしてないし。でもやり方は違えど、よそでも組織運用とか組織設計とかで、随分生産性が変わることはあると思う。
これ、うちの創業者が常々言っているんだけど『凄い人は作れないけど凄い組織なら作れる』と思うんだ。
この業界、スーパーマンみたいな凄い人が、成果を出している会社は結構多いと思う。そうした人材を他に育てようとしても、個人のポテンシャルの差が大きくて難しいとは思う。でも高いお給料を提示して銀河系軍団みたいなチームを作ったとしても、それに見合う利益があるかどうかは別。手に入るカードを元に、ベストを尽くすしかない。
その時、チームが連携して動く仕組みを作ったり、同じ方向を向いて動ける仕組みを作ったりすることで、大幅にパフォーマンスをあげることは出来ると思う。そういや昔、こんなこと言ってた人もいたもんね。
一頭の羊に率いられた百頭の狼の群れは、一頭の狼に率いられた羊の群れに敗れる。
終わりに
その他にも、いろいろと面白げな話は聞かせて貰いました。なんか書いて良さそうだったことをざっとなぞってみました。参考になるひとも、ならないひともいると思いますが、何かのお役に立てば幸いです。
ではでは、今日はこの辺で。