ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

iDeCoがこっそり大幅改悪?今後の出口戦略はどうなっていくのか

こんにちは、らくからちゃです。

世間では、103万円の壁をどうするかが毎日のようにニュースを騒がせていますが、その陰で確定拠出年金(iDeCo等)の仕組みがコッソリ改悪されようとされようとしていると、一部界隈でホットトピックになっています。

この文章だけで自分に影響がでるのかは分かりにくいかなと思いましたので、ざっくり素人が読んだ範囲でこうなるんじゃね?という点について整理してみます。

iDeCoのポイントは退職所得控除制度

まずiDeCoが「お得な資産運用の仕組み」と言われる所以について、過去の私の記事でおさらいしておきましょう。

www.yutorism.jp

iDeCoは

  • 拠出時に所得から拠出額を控除して所得税・住民税を減らせる
  • 運用時に増えた金額に金融所得課税されない
  • 受取時には退職所得控除または公的年金等控除を適用できる

3つの税制メリットがある。なんてよく言われますが、分解して考えると

  1. 給料の受け取りを繰り延べてるだけなので非課税は当然
  2. 後日受けとるときに増えた分だけ課税所得としてつけかえるので運用益非課税は言い方の微妙
  3. ただし、超強力な退職所得控除でそれらのデメリットを打ち消している

というのが実態です。

iDeCoを受け取るときは、最初20年は40万+それ以降は70万円分が課税対象外になるので、仮に30歳から60歳まで30年積立一括で受け取る場合、1500万円分は非課税になった上、それでも残った分も半額で課税所得として評価されます。

年金受け取りする場合、65歳未満で年間60万円、65歳以上でも110万円、しかも公的年金との合算になる年金受け取りと比べると、たいていのひとが一括を選ぶんじゃないでしょうか。

退職所得控除の二重取りってどうなるの?

累進課税の仕組みを使っている以上、一時的に所得の増える退職金には例外的に強力なサポートが設けられているわけですが、勤務する会社からも退職金をもらう場合、そんな強力な仕組みを二重取り出来て良いんでしょうか?

そらアカンわな、というわけで「二重取り禁止」ルールもあるのですが、ややこしいことに退職金とiDeCoのどちらを先に受け取るかで変わってきます。

退職金→iDeCoの場合

20歳から働きはじめて、45歳で転職した際に退職金が1度出たケースで考えてみましょう。このひとは30歳からiDeCoの拠出を始めて30年積み立てたものとします。

iDeCoを受け取る際、退職所得控除は掛金を拠出していた期間分になるため基本的には30年分になります。

しかし45歳の段階で一度控除を使っているので、退職金と重複する期間の30歳から45歳までの15年分は除外されるため、15年分の600万円を超えた金額を受け取る場合は非課税にはなりません(そのほかの控除の状況にもよりますが)

しかし例外として、前回控除を使った時から19年を超えて受け取る場合、重複の除外の規定がなくなり、二重取りが出来るようになります。この例だと受け取りを1年遅らせるだけで、控除枠が900万も増えることになりますね。

で、今回の改正はコチラではなく、iDeCo→退職金の順番で受け取るケースの話です。

iDeCo→退職金の場合

今度は、20歳から働き始めて65歳まで働いていたケースで考えてみましょう。iDeCoは同じく30歳からの30年積立です。

iDeCoは60歳から受け取れるので、最速の60歳で受け取ったとして、その際のiDeCoに対する控除は30年分で1500万円です。 

その後退職金を受け取る場合、退職金が先の例と同様、原則重複期間の分は除外されます。しかしこちらも同様の期間があり、5年後の65歳で退職金を受け取った場合「二重取り」ができるようになります。

今回の改正案は、この5年を10年にする話になります。

さてここで、「二重取り」を実現するにはiDeCoの受け取り自体を60歳より前にはできないため、退職金への控除がフルで適用されるためには、70歳(!!)で退職金を受け取る必要があります。

70歳まで働き続けられる会社はまだまだ少ない気がしますが、従前通り65歳で退職金を受け取る場合、45年分ではなく重複期間を除いた15年で計算されるため、退職控除が1850万から600万になります。もしこれを超える退職金を会社から受け取る可能性があるならその分にかかる税金が負担増になります。

今後の出口戦略はどうなるのか

弊社は退職金という仕組みがないためあまり関心はなかったのですが、退職金多めの会社にお勤めのひとには、今回検討されてる改正はかなり大きな打撃になる可能性があります。

具体的には

  1. 退職金の仕組みが存在する会社にお勤め
  2. iDeCoの加入期間や勤続期間が長い
  3. 定年が65歳である
  4. 減少する控除を超える退職金が出る

場合は要注意です。

逆にそうでない場合、そこまで大きな影響はなく、「変なバグあったからパッチ充てたで」といった内容にも思えるので、個人的に改悪というのはどうかなと思わんでもないですが、iDeCoの節税効果とやらにつく疑問符の数はますます増えたように思います。

確かに「iDeCo自体では退職控除で節税できる」が「ただし、そのぶん退職金で使える控除がなくなる」のだとすると、それって結局節税効果って言えるんでしょうか

先ほどあげましたが「iDeCoで節税の嘘」というタイトルで記事を書いたとき、それはそれは方々から「アクセス稼ぎのための釣りタイトルだ」と非難を受けたもんです。

ただこうして、実際に色んなルールが改正されていくとこらを見ていると、あのとき「嘘」と断言したのはあながち間違いではなかったんじゃねえのかなと思う次第です。

さて今後についての個人的な見解はこんな感じですね。

そもそもiDeCoって退職金制度のない会社に働いてる人向けの退職金と賦課方式で足らない年金をカバーさせる仕組みの、両方の属性を持っている感がありますが、正式名称はしっかり「確定拠出"年金"」です。

退職金の仕組み自体ない会社を多いですし、健康保険料の取れない報酬は減らしていきたいという思惑があってもおかしくないと思います。今後は、年金受け取りのほうに収斂させるため、一括受け取りは不利になっていくような気がしています。

私も企業DCへ加入しているので、できれば良い方向に転がっていって欲しいなとは思いますが、今後どうなるかはしっかり見ていった方がいいかなと思うところです。

ではでは今日はこのへんで。