ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『育休中も仕事が出来る仕組み』を作って貰った話

こんにちは、らくからちゃです。

先日「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない」とツイートした人事の人が炎上する事案がおきました。

会社の名前背負ってそんな迂闊なこと言うのはどうなのかなーと思いますが、同時に「労働者が給与や待遇追求することは当然」という考え方が広く世間に受け入れられたようで、一労働者としては嬉しい限りです。

さて私事ですが、いま育児休業を取得させて頂いております(半年ぶり2回め)

 ぜひ身の回りで育休を取ろうとしている人が居ても「同僚がさも当然の権利みたいな顔して育休を取ったが、残された人の負担も考えてほしい」なんて言わず、快く送り出してあげて貰えれば幸いです。

とはいえ、長期でいなくなると、残された同僚も顧客も色々と大変です。

特に厄介なのは、メインで担当していた主要業務よりも、稀に発生しうる偶発的な業務をどうするのか?じゃないでしょうか。

今回は、2度目&前回より長期の育児休業取得ということもあり、その対応のため、人事の人にメチャクチャお願いして「育休中も仕事が出来る仕組み」を作ってもらえました!👏

ここが大変だよ育休取得

ふだん私は、都内(といっても最近はほぼテレワークですが)の会社で、以下のような業務を行っております。

  1. 基幹業務システムの導入支援
  2. 導入済み顧客の保守・運用支援
  3. システムに対する問い合わせ対応
  4. 営業提案や自社製品開発の手伝い
  5. 電話番・御用聞き・苦情の受付

「システム使いたいねん」と言われれば紙芝居パワポで設定案を説明したり、「こんな感じに帳票だしたいんや」と言われれば方眼紙エクセルに仕様をまとめたり、「思っとったんと違う」と言われれば巻紙ワードで問題の原因を報告したり。そんな感じです。

複数の案件を同時にお手玉しながら回す大道芸人みたいなスタイルで働いていますので、仕事の引き継ぎも一本でポンという形にはいきません。

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まず一番規模の大きな、新規導入の支援作業。要求分析やら要件定義やら言われているやつですが、期間の定まった案件は、(タイミングは若干ずれますが)育休開始と同時に抜ければ大丈夫です。

次にもう少し期間の長い、既存顧客の展開支援作業。ある拠点で使っていた仕組みを別の拠点でも使えるようにするお手伝いですが、期間が長く途中で抜けることになるので、誰か別の人の頼んで引き継ぎを行うことになります。

あと営業に頼まれてる提案の支援作業。もともと別の人でも出来る話なので、今後はそちらにオネシャッス!と営業のひとに伝えて、おしまい。

ここいらの作業は良いんですよ。

厄介なのが、全部足しあわせても、ワークロードの10%くらいにしかならない

  • 各社問い合わせ対応
  • 自社製品QA対応
  • 部門内質問対応
  • 各種間接作業

などなどです。

私がある日ポックリ逝ってしまっても大丈夫なように、必要な情報や記録は残されています。ただ読めばチンパンジーでも仕事が出来るようになっているわけではない。

その分野に対する基本的な知識がなければならないし、サービスレベルを維持するためには勘所に対する引き継ぎも必要でしょうし、顧客に対する面通しもしておいたほうが良いでしょう。

規模の大きな案件であれば良いのですが、年に数回問い合せが来るかどうかの顧客や、超レアでマニアックな機能に対する裏活用術みたいな話をすべて引き継ぎをするのは、引き継がれる側も引き継ぐコチラも大変です。

(裁量制で残業代も出ないので、引き継ぎタスク増やしたく無い感もある)

というわけで、全部テレワークでできちゃうし、細かなアレコレは、育休中もなんかあったらリモート対応ってことに出来ないかな??と思った次第です。

育児休業中の就労について

育児休業は、育児のためにお休みを取る仕組みなので、休業中は働かせる(働く)ことは原則NGです。とはいえ中々難しい職種もありますし、育休中の就労については

  • 労働者が同意していること
  • 一時的・臨時的にその事業主の下で就労することは可
  • 就労が月10日(ないし80時間)以下であれば育休給付金支給

とある。

ポイントは「一時的・臨時的」というところ。具体例として、以下が示されています。

①育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合

②労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合

③労働者Cの育児休業期間中に、トラブルにより会社の基幹システムが停止し、早急に 復旧させる必要があるため、経験豊富なシステムエンジニアであるCに対して、修復作業を事業主が依頼し、Cが合意した場合

④災害が発生したため、災害の初動対応に経験豊富な労働者Dに、臨時的な災害の初動対応業務を事業主が依頼し、Dが合意した場合

⑤労働者Eは育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的にEが得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる一時的な就労を事業主が依頼し、Eが合意した場合

(出典:育児休業中の就労について育児休業中の就労について

逆にNGのケースとしては、以下が示されています。

労働者Fが育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務
する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合

(出典:育児休業中の就労について育児休業中の就労について

んんー、、、私の仕事の場合は②か③が近いかな。ただ厳密に線引きするのは難しいですよね。

事前に決められた時間や特定の曜日に発生するルーチンでは無いという点ではOKですが「人を揃えて引き継ぎしたら回避可能やろ」と言われればNG。ただ上記例の大半も厳密に言えば、最初から居ない前提で対応してれば回避可能な内容よね。

つーか①みたいな、事故や災害でもなく「受注めっちゃ増えたからヨロピク」みたいなのも認められるならば、育休前に出勤日を決めてさえ居なければ、割りとOKな範囲は広いんじゃね?

解釈には難しいところはありますが、逆に言えば、よほど真っ黒で無い限りは、お役所もいちいち踏み込んであれこれいうことは無いでしょう。

お役所的にもっとマズいのは、働かせた(働いちゃった)のにお賃金を払わないこと。

育休中はノーワーク・ノーペイですが、ワークさせたのであればペイせねばなりません。ただ、育休中は雇用保険から給付金も貰っているので、ダブルでゲットして普通に働いている人より沢山貰えるようになるのは、流石にマズい。

というわけで、育休中に労働した場合、お賃金は発生するものの、その分給付金が減らされる仕組みがあります。ざっくり言うと、給付金(元の賃金の67% or 50%)+ 賃金 ≦ 元の賃金の80% になるように給付金が減らされます。

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(出典:育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について)

整理すると、

  • 最初の半年・・・元の賃金の13%分までは減らされない
  • 半年目以降・・・元の賃金の30%分までは減らされない

という感じですかね。

あくまで「一時的・臨時的」な仕事に対する報酬ですので、それを見込むわけにはいきませんが、ただでさえ収入の減少する育休中に、お小遣い程度でも収入が増えるのは有り難い。

「育休中も仕事」が出来るようになるまで

法律上は制度がある。ただ弊社では、そうした働き方を全く想定していませんでした。例えば給与システムは、そうした就労を想定しておらず、何らかの対応が必要でした。

まず「育休取ろうぜ」みたいな話を人事がしていた全社Slackチャンネルにて「育休取得者の経験として、育休中も部分的に働けると諸々捗るんですけどもぅ。。。」とぶん投げてみたところ、凄くたくさん👍が押されました笑

他の人では対応が難しい一部の仕事のために、育休の取得を諦めたり、期間を短くしたりしたひとはきっと他にもいたんでしょうね。

人事部からのコメントは「そういう事例はないんだ。ごめんね。」でした。

やっぱ無理かあ・・・と思ったものの、上司のアニキから「もう一回ちゃんと頼んでみたら?」との後押しも貰い、「事例が無いなら作ろう!!」と人事部のお姉さまを捕まえて、

  • お客さんに迷惑を掛けたくない
  • 同僚にも負担を増やしたくない
  • そしてわたしは育休を取りたい

旨を、語り続けました。

「無理は承知でございますが」「必要な情報があればなんなりと」「調整が必要な条件などなどあれば前向きに」とコミュニケーションを取り続け、(あくまで法律で認められている範囲の中で)「育児休業中の就労に対する覚書」を受領するに至りました🎉

お姉さんのスケジュールを見ていると、本件に関連するであろう内容で、偉い人とも打ち合わせをした形跡が見て取れ、ほんま感謝カンゲキ雨嵐です。

育休の取りやすい社会のために必要なもの

育児休業に関する制度は「パパ・ママ育休プラス」だの「パパ休暇」だの、さっぱりワケの分からない仕組みで年々混迷の度合いが深まっています。最近だと、2022年10月より「男性版産休」なるものが追加されます( ゚д゚)

まったく意味が分かりませんが、唯一「ええやん」と思ったのが、男性版産休では「予定した就労」が可能になるんですよね。

その実態は扱いにくいことこの上ない代物ですが「これだけ制度を充実しているのに使わないのは、完全に仕事を休むのが難しいのでは?」ということに、お役所が反応を示したのは大きな一歩です。

特に近年では、テレワークも進み、出社せずに自宅で必要なときに数時間だけ仕事をする。という働き方も随分しやすくなりました。

政府はもう毎度のごとく、育休取得率があがらーんと嘆いていますが、「部分的な労働をしながら育休」がしやすくなれば、

  1. フルでプロジェクトには入らないけど、過去の経験からレビューやアドバイスだけするコンサル
  2. 新規モジュールの開発には参加せず、過去に自分が設計した部分に対する質問にだけ対応するエンジニア
  3. めったに発生しない特殊な処理が生じたときにだけ、内容を確認し対応を考えるコーポレートスタッフ

みたいな働き方が出来るようになり、凄く育休って取りやすくなるんじゃない?とりあえず今回は「一時的・臨時的」の範囲内ですが、まずはその成功事例となるように、1年間頑張っていかねばなあと改めて思う次第です。

ではでは、今日はこのへんで。