ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

待機児童ゼロでも入れる保育園がない理由

こんにちは、らくからちゃです。

早いもので、坊やの慣らし保育も今日でおしまいとなり、晴れてフルタイム保育園児(?)になりました!

一人で置いていかれることへの不安から泣き出す・・・ことはなく、「早く遊ばせろ」と言わんばかりに赤ちゃんの群れの中に突撃して行く様は、頼もしいのと同時に、なんだか寂しい気もします。あんなに父ちゃんがいないと駄目な子だったのになあ。

振り返ってみれば、途中登園自粛などもあったものの1月生まれ→8月入所の最短ルートで保育園に入ることが出来たのは、運が良かったとしか言いようがありません。

我が家の場合、

  • 自宅→保育園 15分(子供を抱いて)
  • 保育園→駅 15分

の保育園に通わせていますが、ぶっちゃけ当初提出した「希望順位」はかなり下のほうの園でした。通わせてみれば周囲の環境や先生の応対もよく、ここで良かったなーとは思うものの、出来たらもう少し近いほうが良かったなというのが本音です。

もっとも、更にハードな条件で限界保育をこなしている家庭も沢山ありますし、行き先が見つかっただけでも万々歳でしょう。ただ、いまの保育や待機児童の現状については、色々と考えさせられる点があったので、思ったところを書いてみます。

保育園に通うのに掛かる時間

まず保育園には認可保育園と認可外保育園があって・・・みたいな話は前に書いたので、そちらをご参考ください。

www.yutorism.jp

以前話題になった「保育園落ちた」は、認可保育園の話ですね。

認可保育園の申し込みは、お住いの市町村で「行きたい優先度」を申告し、かぶった場合は点数が高い人が優先され、同率の場合は抽選といった塩梅です。

どんな園を希望するのかは、各ご家庭の子育ての方針にも寄るところは多いのでしょうけど、みんな何を基準に保育園を選んでいるのかを見るとこんな感じ。

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(出典:保育園を選んだ決め手ランキング、第1位「家からの距離」65.0%、第2位「子ども同士の雰囲気」32.0%、第3位「認可か・認可外か」29.0%|株式会社 明日香のプレスリリース

やっぱ、なんやかんやで時間と金ですよ。そりゃあ毎日家から片道30分以上かかる所に毎日通わせるのは大変ですよ。体がもたない。ちなみに別のアンケート結果によると、通園時間の分布はこんな感じだそうです。

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(出典:保育園・幼稚園への通園にかかる平均時間は? | マイナビニュース

平均で12分だそうですが、20分以上かかっているひとも結構いるんですよね。でもこの通園時間って、単に保育園までどれくらい掛かるのかだけじゃなくて、通勤経路の途中にあるのか重要なポイントなんですよね。

家に近い保育園か駅に近い保育園か

通園に掛かる時間が、5分だろうか10分だろうが、保育園が通勤経路上に存在する場合は、通勤時間にかかる影響はプラマイゼロです(もちろん途中で園に預けたり、子供を連れてる分余計にかかる時間は別ですよ)

それが駅と逆方向になると、行き&帰りで2倍に時間がかかります。わざわざ図にするほどの話でもありませんが、念の為まとめるとこんな感じ。

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駅からの距離は、単に通勤時間の増加だけでなく、何時までに会社をでなければならないのかという点についてシビアな影響が生じます。

例えば、駅から会社まで30分とし、19時までに迎えに行く条件としましょう。駅から近い上のケースだと、18時25分までに会社を出れば間に合いますが、下のケースでは18時15分に出ていないと間に合いませんな。

送るときのことを考えても、「今日はいつもより早めに出社しないと」という状況でも、午前7時開園として最速で到着できるのは上のケースで7時35分、下のケースでは7時45分になりますな。

みんな単に近い保育園に行かせたいだけでなく、できれば駅に近い園のほうが良いのです(周辺の環境とかは別としてね)

保育園のジレンマ

そうすると厄介なことになるのが、駅の近くに住んでいるひとなんですよね。

駅から徒歩3分のところに住んでいるAさん。保育園は自宅最寄りのX保育園に行かせたいと考えている。通勤経路の途中にあるので移動時間は変わらず3分で済みます。

一方、駅から徒歩8分のところに住んでいるBさんも、通勤経路途中にあるX保育園に通わせたいと思っています。家から3分のところにあるY保育園だと、駅から反対の方向なので合計移動時間が13分になってしまいます。

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AさんがY保育園を使う場合、駅の目の前に住んでいるのに移動時間は合計20分。いままでと6倍近い時間がかかります。せっかく駅チカに家を買った意味がありません。

この状況を表にしてみるとこんな塩梅ですかね。

  Aさん Bさん 合計
Aさん=X,Bさん=Y 3分 13分 16分
Aさん=Y,Bさん=X 20分 8分 28分

全体の移動時間という意味では、AさんがXでBさんがYのほうが、逆のパターンの半分くらいの総移動時間になります。でもBさんも出来たらYよりXのほうが良いんですよね。

駅前に住んでいるAさんみたいな人たちからしたら「家のすぐ近くに保育園があるのに、ウチの近所の保育園に来られたら、我々はもっとずっと遠いところに行かなきゃならないから困る」という感覚になるんでしょうけど、一方でBさんみたいな人たちからしたら「我々だってできるだけ移動ロスが無いところを選びたい」と言うでしょう。

なんつーか、ゲーム理論の教科書で似たような例を見た覚えがありますが、囚人のジレンマとも若干違いますし、保育園のジレンマとでも呼びましょうか。こうしたケースは割と少なくないでしょう。

そしてこれが待機児童ゼロでも入れる保育園が無い理由の一因となっていたりするんですよね。

待機児童ゼロでも入れる保育園がない理由

千葉市では、2年連続で待機児童ゼロを実現しました。ところが保育園の入所待ちをしているひとが491もいる。そのカラクリは、待機児童の人数の計算式にあるんですよね。

www.asahi.com

国の基準によると、「保育園落ちた」ひと=待機児童から以下の条件に当てはまる人は除いて良いことになっています。

  1. 保護者が求職活動を停止した
  2. 特定の園を希望している
  3. 自治体が補助する認可外施設を利用している(東京都の認証保育所など)
  4. 保護者が育児休業中
  5. 認可外の「企業主導型保育所」を利用している

1はもう諦めちゃったケース、3,4,5は希望してるのはわかるが何とかなるやろみたいなケース。どちらも、ふざけんじゃねえよと言いたくなる条件ですが、2の「特定の園を希望している」というケースも厄介なんですよね。

国の基準では、通常の交通手段で20〜30分圏内に空き保育園があるにも関わらず、そこを利用しようとしないひとは「本気で探してるわけではない」と待機児童のカウントから除外されます。

確かに「何が何でも家の隣の保育園が受からない限り復職しない」と駄々をこねたり、育休延長狙いで「保育園落ちた」実績づくりのため高倍率の園を受け続けるひともいるようですが、片道30分はちょっとハードすぎませんか??

駅と反対方向なら行きだけで通勤時間が60分増加ですよね。もし送り迎え両方しなければならないとすれば、往復2時間時間が削られることになります。それで「本気じゃない」というのはちょっと酷じゃないでしょうかね。

また穿った見方をしちゃうと、自治体側としても同じ保育料なら地価の高い駅前より、郊外に作っておけば、コストも下がれば「空きがあるのに入らない」枠での待機児童削減にもつながってしまう。(流石にそんなひねくれた自治体は少数でしょうが)

流石にこりゃいかんやろうと、各自治体にて独自基準での集計値を発表しているところが多数ありますが、いまだに国はこの計算式を取り下げるつもりはないのでしょうか。

子育て世代の望むもの

摩訶不思議な計算式で抑えられている待機児童ですが、まだ市町村基準で捉えられている分は良いとして、「もう復職することを辞めた」「そもそも子供を生むことから諦めた」みたいな、数字にもならない層も相当数いると思うんですよね。

ただどこの自治体もかなり知恵を絞って主体的に動いてくれており、駅近くで子供を預かりバスで園まで送迎するような「送迎ステーション」といった事業に取り組むところも増えています。

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(出典:さいたま市/さいたま市送迎保育ステーション~働きながら幼稚園へ~

こうした取り組み自体は有り難いですし、もっと進めていって欲しいなあと思いつつ、根本的には「確実に利用できる保育園」を増やしていくのがキモなんじゃないかなあと思うんですよね。

育児休業を取得する際に「で、何ヶ月にすんの?」と聞かれ「ほ、保育園が入れるまで」と答えるしかありませんでしたが、たいていの会社は「ほな、行けたら行くわ!」みたいなノリで復職希望をすることは難しいでしょう。

野党の政策を眺めていると「公営住宅増やすべ」みたいなことが書いてありました。

増やしてもらうのは結構ですが、どうせならEVなしの団地をぶっ壊して、入所者が優先利用できる認可保育園付きにしてもらえないですかね。妊娠中の人も子供が大きくなった人も入居出来るけど、家賃に保育料コミコミだから損かも、みたいな仕組みが良いかな。

そういや幕張に、住民優先認可保育園付タワマンみたいなものもありましたが、「保育園のジレンマ」みたいな事象で消耗するのを避けるには良い方策な気がするんですよね。

www.yutorism.jp

こんな子育てをするには厳しすぎる状況下でも、赤子は生まれてきていますので、障害を取り除けば「育児」が成長産業のひとつになるやもしれませんよ。たぶん「スタートアップ」よりは規模が大きく政治が取り組む意味も大きいんじゃないんでしょうか。

ではでは、今日はこのへんで。