ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

Amazonギフト券20%オフの裏側で起こっていること

こんにちは、らくからちゃです。

ブラックフライデーやらサイバーマンデーやら、何やら今年は良く分からない名前のセールが色々と行われていたようですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

(ちゃんとクリスマスセール・歳末セールもして貰えるのかなあ)

こんなご時世ですし、お店に行かずにお買い物をしたひとも多いかと思います。我が家もここ暫くは、ずーっとAmazonからの荷物が届きっぱなしでした。

Amazonといえば、こんな記事を読みました。

www.jiji.com

個人的には「あー、やっと表沙汰になったのか」といった感覚ですが、知らないひとからするとなんのこっちゃ分からない話だと思いますので、掻い摘んで説明してみたいと思います。

ギフト券転売サイトとは何か

コンビニに行ったら、結構目立つ位置にiTunesカードなどと一緒にAmazonのギフト券が並んでいるのを見るかと思います。

購入後にカード裏面のスクラッチを削って出てくるコードを入力すると表示される番号を登録することで、自分のギフト券残高にチャージして使用できるようになります。

つまり番号さえあれば登録できます。現物のやりとりがないので、TwitterのDMやLINEで誰かにプレゼントすることも出来ますし、自分宛てに送っておけば、いつでも好きな時に誰かに渡したり自分で使ったりすることもできます。

Amazonギフト券 Eメールタイプ - Amazonベーシック

Amazonギフト券 Eメールタイプ - Amazonベーシック

  • 発売日: 2010/07/15
  • メディア: Ecard Gift Certificate
 

1円単位で金額を指定して発券できますし、Amazonを使う人にとっては現金同等物なので、ちょっとしたお手伝いのお礼の支払いなんかには大変便利です。また自分宛てに送付してチャージしておけば、残高を見ながら予算管理に役立てることも出来ます。

このギフト券を売買するサイトが、「ギフト券転売サイト」と呼ばれているものです。利用の仕方は、

  1. サイトの口座に残金を銀行振込でチャージする
  2. 欲しい金額のギフト券を探して購入する
  3. 相手からギフト券の番号が送られる
  4. 一定時間以内に登録し問題なければ取引成立

といった塩梅になります。

代表的なギフト券転売サイトだとこんな感じですね。

f:id:lacucaracha:20201209214046p:plain

一番目のものは、50,000円のギフト券が41,295円で販売されているということです。ざっくり1万円分くらいのディスカウントになります。

アマゾンギフト券は、本や日用品から電子書籍・ビデオなど、一部の例外を覗いたアマゾンの全商品で利用が可能です。またAmazon Payを導入している外部のサイトでも利用できます。

さて画面の右の方に「エラー/出品数」という項目があります。これは送られてきたギフト券に問題のあった数を示しています。例えば

  • 番号に誤りがあり登録できなかった
  • すでに他の人に登録されていて利用できなかった
  • 金額に誤りがあった

などの場合は、取引後30分以内に登録画面などを添付して証明すれば返金が受けられます。

で、今回問題となっているのは、その話では有りません。

激安ギフト券の裏側

Amazonギフト券は、基本的に形式的な要件(存在する番号か、未登録か)を満たしていれば受け付けられ登録されます。

しかし登録後であっても、Amazon側より「不正に発券されたギフト券である」とされると未使用の残高は無効化されます。没収です。

当然、取り消された側はたまったもんじゃ有りませんから「なんでやねん。証拠はあるんか」と抗議しますが、Amazon側からは「誰かから貰ったものであれば送り主の方に確認してください。自分で買ったものならば領収書を出してください」となる。で、ギフト券転売サイトに個人情報の開示を請求しても「個人間のやりとりなので知りません」と突き放されておしまいです。

さてこれだけ聞くと、冒頭の記事にあったようなAmazonやギフト券転売サイトが悪く、購入者は被害者のように聞こえます。

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(画像出典:転売電子ギフト、相次ぎ無効化 救済なく泣き寝入り、100万円超も:時事ドットコム)

でも普通に考えて、ほぼ現金と同等の価値を持つ2割近く安く買えるのは、何か裏があると考えるのが自然でしょう。一時期は70%台まで下がってましたしね。

Amazonギフト券は、メールタイプであればカード決済で発券することが出来ます。一部のサイトではギフト券の買取も行っており、90%台で取引されていた頃は、カードを現金化したい人のギフト券が流れていたのかなあと思うのですが、流石に80%を割り込むと割りに合わなさすぎる。

そうなると考えられるのは、

  1. 振り込め詐欺に近い方法で騙しとられたもの
  2. 盗難されたクレジットカード等で発券されたもの
  3. マネーロンダリング目的でやりとりされたもの

などの可能性が上がります。また十万円単位のギフト券も出品されており、こうしたギフト券を購入しているのは、電子製品等の転売業者だったりするケースも多い模様です。

彼らからすれば、2割までであれば「ハズレ」を引いたとしても十分利益が出ます。そして薄々そういうことにも気がついた上で、持ちつ持たれつの関係が出来ている状況です。

法的対応も検討したほうが良い時期では

関心が集まって盛り上がったほうが面白いかな?とおもったのでこんなタイトルにしてみましたが、個人的には利用を推奨できるものではないと思います。もう5年も前に書いた話と同じですが、いままで余り表沙汰に取り上げられたことも無かったので良い機会でしょう。

www.yutorism.jp

ナイキのスニーカー然りですが、消費者が常に出所が清廉潔白かを確認して利用せねばならない理もないような気もしますが、利用するなら没収リスクだけでなく何らかの関係者としておまわりさんとおしゃべりできる可能性も踏まえたほうがいいような気がしますね。

で、一緒に片棒かついでいたかもしれない元利用者が言えた義理ではないのかもしれませんが、そろそろちゃんとした実態調査をしたほうがええような気がするんですよね。

何が一番アレかというと、Amazonがこの件について、ほとんど何も対策してないところなんですよね。

一応、サイト内で「つこたらあかんで」と記載はしています。

ですけど、Amazonギフト券使ったことがあるひとで、このページを見たことある人って居ます?たぶんどこに書いてあるのかすら知らない人も多いんじゃないかなあ。

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で、これがAmazonでギフト券を登録する画面なのですが、実にシンプル!f:id:lacucaracha:20201209222647p:plain

もし本気で、不正ギフト券の売買を辞めさせたいならば、わたしなら目立つようにさっきのページへのリンクをつけておいて、登録時も「売買サイトから入手したものではありませんね?」と確認のダイアログを出しますね。

Amazon側としてはこの件に対して「何か対策をせねば」と考えているようには見えません。むしろ現状が維持されることを望んでいるようにすら見えます。

この手の「足がつきにくい」ギフト券は詐欺や盗難は勿論のこと、マネーロンダリングにももってこいです。

このような、第三者も利用可能な資金を扱う場合、前払式支払手段(第三者型)発行者としての登録が必要になります。Amazonも 関東財務局長 第00621号 でしっかり登録されていますね。

登録された事業者については、資金決済法にて

第二十四条 内閣総理大臣は、前払式支払手段発行者の発行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要があると認めるときは、当該前払式支払手段発行者に対し当該前払式支払手段発行者の業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に当該前払式支払手段発行者の営業所、事務所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関して質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

とありますので、あまりにやる気がないのであれば、そろそろお尻ペンペンしたほうが良い状況ではないでしょうか。

ではでは、今日はこのへんで。