ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

家賃の助成は「三方一両損」方式が良いんじゃなかろうか

こんにちは、らくからちゃです。

家計簿を眺めていると、諸々の項目で支出が減っておりました。ガッツポーズを決めると同時に、変わらぬ家賃の金額を見てガッカリポーズでございます。そんなこんなを考えているうちに、こんなニュースが盛り上がって参りました。

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あくまで事業者が対象ですが、家賃の2/3を助成するなんちゅー、また随分と思い切った政策ですね。いやあ、まったく羨ましい限りです。ええ、大家さんがね。

結局誰を助けようとしているのか

長引く営業自粛の中、飲食店を含む中小事業の台所事情は、会社員として禄を食んでいる人間には想像を絶する状況なんでしょうね。

原材料費のように、ある程度は売上に連動して減少する変動費はさておき、客が一人も来ずとも発生する固定費は実に頭の痛い問題でしょうし、その筆頭格である家賃は、アトラスの担いでいる地球くらい重たい負担でしょう。

そんな姿を見れば、なんとかしてやらねばという気持ちも湧き出ます。しかしここで家賃を補助したところで、それってそのまま大家を助けることであり、その大家にお金を貸している銀行を助けることでもあり、最終的には銀行に出資する株主を助けることにほかなりません。

大家さんに何か特別恨みがあるわけじゃないんです。大家だからといって特別資産があるわけでもなく、コンビニやスーパーが商品を仕入れて売るように、大家だって「建物」という商品を分割で販売しているだけに過ぎないわけです。

とはいえです。感染リスクを取って戦ってくれた医療従事者や小売店、この時期に必須のサービスを提供してくれたインフラ関係者などであればさておき、他業種がヒイヒイいってる中で、不動産事業者の受け取る家賃を税金を使ってカバーするのってどうなの?という気持ちを持つ人は少なくないと思うんですよね。

また今は自粛モード一色ですが、経済はいずれ再開しなければなりません。

そのときに、安易に家賃保証のような政策があると、新しく事業を始めたい人に店舗が回らず、本当は廃業すべきお店がゾンビ化して残ってしまうリスクもあります。

それを解消するには、三方一両損みたいな方法が良いんじゃねえのかなあと思うんですよね。

みんなが少しづつ損をするしかない

知らない人も少ないかもしれませんが、三方一両損ってのはこんな感じのお話ですね。

左官の金太郎は、三両の金が入った財布を拾い、一緒にあった書付を見て持ち主に返そうとする。財布の持ち主はすぐに大工の吉五郎だとわかるが、江戸っ子である吉五郎はもはや諦めていたものだから金は受け取らないと言い張る。しかし、金太郎もまた江戸っ子であり、是が非でも吉五郎に返すと言って聞かない。互いに大金を押し付け合うという奇妙な争いは、ついに奉行所に持ち込まれ、名高い大岡越前(大岡忠相)が裁くこととなった。

双方の言い分を聞いた越前は、どちらの言い分にも一理あると認める。その上で、自らの1両を加えて4両とし、2両ずつ金太郎と吉五郎に分け与える裁定を下す。金太郎は3両拾ったのに2両しかもらえず1両損、吉五郎は3両落としたのに2両しか返ってこず1両損、そして大岡越前は裁定のため1両失ったので三方一両損として双方を納得させる。

三方一両損 (落語) - Wikipedia

大家が1/3の家賃減免を飲めば、残り1/3は政府が負担し、最後の1/3は自己負担とする。そんな感じでどうでしょう。

これならもし今の66%以上の家賃で借りてくれる人がいるならば、その人に貸して、新規の商売に使ってもらえればそれでよろしい。

一方借り手も家賃負担は1/3まで圧縮されるが、逆にそれすらカバー出来ないようであれば、綺麗サッパリ出ていく判断もできる。大家の収入は0になるが、それはこの状況を予知出来なかった大家の責任でしょう。

政府側、ひいては国民も、必要な経費を圧縮できて動きやすい。救うべきは救い、そうでないものは別の支援の形を取れば良い。

まあどうしてもそういったことを考えてしまうわけです。

経済的なトリアージは避けられない

実に残念かつ陰鬱な話になりますけど、コロナ前後で産業の構造も大きく変わってしまうことを考えると「全て元通りにして全部の会社を救う」ことは出来ない。どこかで「救える会社」と「救えない会社」を線引しなければならなくなる。

まさに、一段落ついたいまこそ、どうやって経済的なトリアージを行うのかは考えなければならない。

救えない会社はスッパリ切らないと、新しい商売が産まれず、社会は前に進む活力を失い、さらなる停滞につながっていく。それを避けるためには、どこかで誰かが血を流すことも必要になる。

感染拡大予防の局面であれば、一致団結して前に向かって進めます。綱引きが始まりつつある状況においては、何が正しくてどうあるべきかをひとりひとり考えねばならないんだろうなあ。なーんて思う次第であります。

ではでは、今日はこのへんで。