ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

生活福祉資金の特例貸付で生活困窮者は救えるのだろうか

こんにちは、らくからちゃです。

ニュースを見ていると、コロナウイルスなんかよりも意味不明な政治のほうがよっぽど怖いなあと思う毎日です。

先日もテレビを見ていると西村経済再生担当大臣がご出演されていて、定額給付金が国民の手に渡るのは早くとも5月末とのことでゲンナリ。その後も、お肉券だのお魚券も必要だの、いやいや旅行券も忘れて貰っちゃ困るぜ!など、なんだかもう国民として悲しいやら恥ずかしいやらなんとも言えぬ気持ちでおります。

そんな中、唯一の期待を集めているのが3月25日から拡充された生活福祉資金貸付制度の拡充でしょうか。

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(出典:新型コロナウイルス感染症を踏まえた⽣活福祉資⾦制度による緊急⼩⼝貸付等の特例貸付が⾏われます

生活福祉資金貸付制度自体は、既存の制度のため立ち上げも早い。ただ問題は「結局、何をすれば貰えるのか?」「いつになったら振り込んで貰えるのか?」でしょう。

生活福祉資金の貸付を受けられるまで

生活福祉資金の特例ヤベエ!!政府はもっと宣伝すべき!!みたいなツイートは溢れかえっています。ただ実際にどうやったら受け取れるんかいなという情報は殆ど出ていない気がします。

行き先

まず窓口は、市役所ではなく市町村の社会福祉協議会です。

社会福祉協議会は、子育てや介護の支援など「生活でのお困りごとのお手伝い」が主な活動領域ですが、経済的に困窮した人への貸付の取り次ぎ(実際に貸してくれるのは都道府県単位の社会福祉協議会)もしてくれます。

場所はGoogleマップで検索していただければ出てくると思います。近隣自治体を見ていると、全体的に辺鄙で行きづらいところにありますな・・・。営業時間は平日8:30-17:00のお役所タイムですね。

条件

生活福祉資金を利用できる条件は、休業したひと向けの「緊急小口資金」と失業したひと向けの「総合支援資金」とで分かれているそうで、まずは前者の緊急小口資金から。

条件:新型コロナウイルス感染症の影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯

とあります。金額は条件を満たすと20万円にアップグレードしますが、その内容がまた香ばしい。

特別な場合とは以下のいずれかに該当する場合です
・世帯員の中に新型コロナウイルス感染症の罹患者がいるとき(要証明書)
・世帯員に要介護者がいるとき
・世帯員が4人以上の世帯
・世帯員に下記の①又は②の子の世話を行うことが必要となった労働者がいるとき
 ①新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、臨時休業した小学校等に通う子
 ②風邪症状など新型コロナウイルスに感染した恐れのある、小学校等に通う子
・世帯員に個人事業主等がおり、その収入減少により生活に要する費用が不足するとき

こんなん書いたらまた「コロナにかかった証明書ください!!」ってクリニックに咳き込んだ人がやってきますわな。

後者の総合支援資金も中々パンチが効いた文言がありますよ。

条件:下記のいずれにも該当する世帯
・新型コロナウイルス感染症の影響を受け、収入の減少や失業等により生活に困窮し、日常生活の維持が困難となっている世帯
・生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援事業を利用し、その支援を継続して受ける世帯

「総合支援資金」ってのは、もともと生活を立て直すためのお金なので、ちゃんと面談して、今後の計画を話し合って・・・みたいな枠組みの中にある制度なんですよね。

それ、この緊急時に機能します?これもまた社会福祉協議会の事務所で一人でも感染者が出たら窓口自体が閉鎖されて受付処理が出来なくなるやつじゃね?

必要なもの

申込み時に必要なものもガッカリなセレクションです。(※緊急小口資金のケースです)

  1.  本人確認書類(顔写真の無い書類・パスポートの場合は2点)
  2. 減収が確認できるもの(減収前後の給与明細等)
  3. 印鑑(実印!と銀行印)
  4. 住民票(マイナンバー不記載
  5. 印鑑登録証明書(!!)
  6. 通帳またはキャッシュカード

まず減収が確認出来るって、どの程度のもの?金額なの?割合なの?あと、借り入れだから実印が必要ってのは分からんでもないですけど、そんな悠長なことを言ってる場合なんか?あと住民票にマイナンバーが要るかどうかはさておき、マイナンバーなしで借りれちゃうの??

いろいろとクエスチョンが満載です。

貰えるまで

で、申込みから貸付までのフローはこんな感じだそうで。

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(出典:緊急小口資金のご案内

最短でも5営業日かかるそうな。

もっともこれは「平時」を想定した日数でしょうから、申込みが殺到して処理が追いつかなくなれば、どれだけ掛かるかは全く想定がつきません。

タイムラインを眺めていると、この「生活福祉資金の特例貸付」をもっと宣伝すべき!!みたいに持ち上げている人もたくさん見るんですけどね。でもこれ、いくら対象者を広げたところで、こんな状況は想定しない制度設計じゃないですか。

にも関わらず、地域の社会福祉協議会に人を流し込んだところで、生活困窮者の生活を救うどころか、感染者数拡大の一助にしかならないんじゃないの?

定額給付金の条件より生活福祉資金の貸付条件を見直すべきでは

なんかいろんな議論がゴチャゴチャになっていると思うんだけど、国民にお金を渡すのであれば、その目的って三段階くらいに分けて考えて議論すべきだと思うんだよね。

  1. 経済的に死ぬ人を出さないための政策
  2. 経済が死なないようにするための政策
  3. 経済を蘇らせるための政策

正直、10万円の給付金を一回貰っただけじゃ、せいぜい家賃と光熱費と最低限の出費に消えて、1すら満たせるかどうか怪しい。お肉券に至っては、どの役にも立たんでしょう。

いま必要なのは、最低でも20万円、それも複数回手当できる仕組みを作って、とにかく死人を出さないことなんじゃないの?だったら「ウェブサイトからマイナンバーと銀行口座を入力したら、重複利用で無く氏名さえ一致していれば翌日には振り込まれている仕組み」みたいなものが必要なんじゃね?

給付と違って貸付なら、直接的な財政負担は、事務経費と貸倒リスクに限定される。その分もっとスピーディーに動けるはずなんですよね。

まずは一旦

  • 無利息
  • 無担保
  • 無保証人
  • 無条件

で数年間貸し付けを行う。そのまま給付扱いにするのか、それとも返済を求めるのか。その条件はジックリ検討する。返済が必要な場合は、所得・住民税とセットで源泉徴収する。そんな感じで良くない?

「国民の借金は極力増やさない方針で行く」なんてどこかの党首が言ってたけどね。給付金の財源は結局将来の税収や国債で賄われるんですよね。無条件で一律給付にすると、高齢者は逃げ切れて良いかもしれないけど、これから産まれてくる子どもたちの重荷は増えてしまう。

需要喚起や経済再生に役立つのであれば、定額給付金も十分検討すべきだろうけど、その条件は、効果を最大化するためにジックリ検討したほうが良いんじゃないかな。

どちらかというと、非常時の生命線たる貸付金制度が細く切れやすいこの状況こそが問題でしょう。まだ減収や失業まで行かなくとも、すでに生活費として見込んでいた夏のボーナスカットが決まっていて、厳しい状況のご家庭も少なからずあるでしょう。そうした世帯にも、一旦返してもらうことを前提として、即時に資金供給できる仕組みこそ重点を置くべきなんじゃなかろうか。

ぜひとも日銀には、企業だけでなく家計にも資金供給をして欲しい。そんな風におもう今日このごろです。

ではでは、今日はこのへんで。