ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

若者が株式メインで資産運用をするのは正しいのか論

こんにちは、らくからちゃです。

気がつけば暦の上ではノーベンバーですね。この時期の風物詩として、人事部から一斉送信される「年末調整のお知らせ」がございます。住宅ローンの残高だの、生命保険料控除だのに追われている人を見ると節税してえなあという欲が出てくるらしく

「わたし資産運用とか何もしてないんですけど、NISAとかiDeCoとかお詳しいですよね!!いろいろ教えて下さい!(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾」

なーんて相談を後輩から受けるようになりました。

本音を言えば、セオリー通り「いつ結婚するの?家はどうするの?その後の人生の計画は??まずはライフプランを整理するところから始めよっか!!(๑•̀ㅂ•́)و✧」から、しっぽり考えていきたいところです。

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 でもマジメに返したところで、嫌な顔をされるのが関の山です。裏で説教おじさんだの、マウンティングだの、なんとかハラスメントとか言われても面倒ですので「つみたてNISAで適当に経費率の低い株式インデックスでも買っときゃ良いんじゃね。eMAXISあたりが良いんでねえの。しらんけど。」くらいの優等生的な回答をしてお茶を濁しています。

こういう質問には、独自処方をして、後で文句を言われても困っちゃいますから「なんかそれらしく世の中に広まっていること」を答えておくに限ります。でも改めて自分ならどうするのか?を本気で考えたら、若いうちの運用先として株式を選ぶのってどうなんだろうなあと思うんですよね。

株式の比率は100-年齢の謎

資産運用の教科書的な本を買うと、多くの本にこんなことが書いてあります。

若いうちはリスクを取って運用をしよう!目安は、株式は100-年齢%、債券は年齢%を目安に考えてみよう。30歳なら株式70%・債券30%、60歳なら株式40%・債券60%がオススメの比率ですよ!

この話は、多くの人が耳にしたことがあると思います。でも改めて考えると、この話って何の根拠があるんでしょう。「複利で運用すれば雪だるま式に資産は増えていくから、若いうちから利回りの高い株式へ投資するのが大事だよ!」みたいに言うひとを稀に良く見かけますが、それは単なる事実の説明であって、理由の説明にはなっていません。だったら死ぬまで延々と株式を買い続ければよろしいでしょう。

我々が考えるべきなのは、お金はいつどのタイミングで使うべきなのか、もし使わず取っておくとすれば、どんな方法で運用すべきなのかの比較であって、その選択肢の中で『若いうちにリスクを取った運用をすべき』は正しいのかです。

本件に対する一般的な説明と「株式は最終的なリターンは大きいものの、リスク(ばらつき)が大きいため、運用期間を長くしてそのリスクを分散すべきである」というものも良く耳にします。

尤もらしく聞こえますが、これも違和感があります。その違和感に対する答えを、山崎元氏が説明してくれていましたので引用いたします。

筆者は、個人のアセット・アロケーション方法として、「100マイナス年齢方式」をまともに採り上げている本及び著者を信用しないことにしている。マネー本やFPを選ぶ際の「足切り」に使えるポイントの一つだ。

それでは、「大まかな方向性として一理ある」と思うのは何故か。

ここは出題としては引っ掛けどころで、学生向けの試験なら点差が付くところだ。

「年齢が若いと運用期間が長くなり、運用期間が長いとリスクが縮小するから」と答える人がいそうだが、これは間違いなのだ。

運用期間が長期化すると、運用資産額が取り得る上下の値は拡大する。リスクは小さくならず、拡大している(長期間のリスクを「年率」の標準偏差で見るのは間違いだ)。一方、期待リターンも拡大するから、運用期間の長短は、リスクの適正水準に対して大まかには中立だ。

「100マイナス年齢方式」アセット・アロケーション - K-ZONE money(ケイゾンマネー)

 つまり運用期間が長期化することにより、むしろリスクを被る期間は拡大する。それと同時に期待リターンも増大していくため、リスク・リターン比という観点からは、あくまで中立にしかならないよ。という話かと思います。

この話には続きがあって、じゃあ若者が株式を保有すべき理由ってなんだろうについて、下記のような解釈を示していただいています。

では、年齢が若い人の方が大きな割合でリスク資産に投資していい理由は何だろうか。二つの要因が作用する。

一つは、年齢の若い人が、傾向としてより大きな「人的資本」を持っていることだ。人的資本とは、個人の将来の収入をリスクを考慮した現在価値に割り引いて合計した値で、個人の株価のような概念だ。若い人は、これから稼ぐことができる期間が長いので、大きな人的資本を持っている。金融資産の運用で同じだけの損失を吸収するとしても、大きな人的資本を持っている人の方が余裕がある。

他方、どんなに収入の大きな人でも、年齢が上昇すると人的資本は縮小に転じるし、死ぬ前にはゼロ(あるいは生命保険や遺族年金の現在価値)になる。

加えて、傾向として、若い人の方が高齢者よりも、金融資産の保有額が小さい。つまり、若い人の場合、傾向として、大きな人的資本と小さな金融資産を持っており、小さな金融資産の中で、高い比率でリスク資産に投資しても、そのリスクが与える総合的なインパクトが小さい。一方、高齢者は、傾向として大きな額の金融資産を持っており、余裕として機能する人的資本は小さいので、金融資産の大きな割合をリスク資産の投じた場合の総合的影響が大きい。

 雑に言えば、若いもんは後で稼ぎの中で取り返すことが出来るんだから、とりあえず多めにリスクをとっても良いんじゃね?ってことかと思われますが、これもこれでなーんか変だなあと感じるんですよ。

そもそもこの話は「死ぬまでに必要なすべてのお金」を対象にした長期的な議論ですよね。確かに人的資本の残高が多い分、金融資本についてはリスクをとっても良いというのは分かる。でもその人的資本ってのは、ほしい時に現金に変えられます?

ケインズの遺した「長期的には我々は皆死んでいる」という言葉は、経済学における最も重要な箴言のひとつですが、いくら人生全体で見てリターンを長期化出来たとしても、個々人にとって最適なポートフォリオを考えるのであれば、各々のキャッシュフローも加味した上で、短期的な安定も重要でしょう。

若者が株式での資産運用をする際の留意点

資産運用とは、入ってきたお金を、出ていく時期まで寝かせずに働かせる営みです。きちんとお金には遊ばず働いて貰わなければなりませんが、肝心のタイミングで居なくなってしまっては困ります。

そこで資産運用をはじめる前に、持っている資産の意図をハッキリとさせておくことが重要です。まず、手許の資金を

  1. 短期資金(流動性資金):日常の決済や、いざといったときの予備に使うお金
  2. 中期資金(目的性資金):数年以内に使うことが決まっているまとまったお金
  3. 長期資金(利殖性資金):当面使う予定はなく、しっかりと増やしていくお金

の3パターンに分けて考えます。

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1は、必要となった時に、すぐ動いてくれなきゃいけないお金ですので、リスクをとった運用には向いていません。2は、安全に運用することは必要ですが、想定を下回った際に、1・3のお金でカバー出来る範囲であればリスクを取った運用も可能です。3は、いわゆる「捨てたつもりのお金」というやつなので、リスクなんて一切気にせず一番リターンのデカい運用方法を狙う資金ですね。

20〜30代の年代は、将来の住宅取得や出産・育児などのライフイベントが目白押しなので、2の中期資金の比率が上がる時期です。仮に当面の計画がなくとも、必要になったときに備えて「何に、いくら使うのか」を考えて運用が求められる時期です。

そうすると、価格変動の振れ幅の大きい株式で運用することが適切な資金ってどれくらいあるのかなあ、というのはしっかり考えてみても良いかもしれません。例えば米株インデックスは、リーマン・ショック時には最高値から50%ほど下落し、最長で5年間は含み損を抱える状態になりました。

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基本的には、多少の変動については短期資金の範囲内で乗り切るのが原則ですが、大きな景気変動があった場合、中期資金・長期資金を取り崩して短期資金を確保しなければならないことも起こり得ます。

通常、株価と企業業績は連動します。つまり株価が上がれば、賞与も残業代も増えます。景気がいいうちは万々歳ですが、一点、景気が反転すると悲惨です。

リーマン・ショックの際には、多くの日本のサラリーマンは、残業代がなくなり、ボーナスもカットされ、そもそも来月もお給料があるかどうかすら分からないという状況にまで追い込まれました。ただでさえ収入の先行きが見えず精神的にも不安定な時期に、損切りしてでもキャッシュに変えなければならない事態になることは避けたいでしょう。

持っている資産を過度に株式に配分すると、インカム(収入)もアセット(資産)も株価に連動する状況になり、非常にリスクの高い状態になります。こうした点も含めて考えると、健康問題以外に大きなライフイベントも少なく、いきなり無くなる可能性の低い年金が主な収入源の高齢者こそ株式での運用比率を高めても良いくらいやもしれません。

結局どう運用すればよいのか

とはいえ将来のことを考えると、もはや0の数が何個あるのか数えるのがしんどいくらいの金利しかもらえない銀行預金に預けっぱなしなのも不安でしょう。

個人的には、株式オンリーの投資信託やETFを使うよりは、ある程度は債券や不動産、商品なんかも組み合わせたバランス型のファンドをメインにして考えたほうが良いかもしれません。諸々の細かい注意点はありますけど、最近流行りの分散レバレッジ型ファンドも良い選択肢になるかもしれません。

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一般的な状況では、株価が下落するときには債券は上昇します。その相反する動きをする資産を組み合わせて、上手に保険をかけながら、しっかりとリターンも狙っていこうというのが、分散レバレッジ型ファンドの特徴です。

過去のバッグテストの結果をみると、こんな塩梅です。

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リーマン時の下落幅は38.4%にもなりましたが、2年を待たずに元値に戻しているところをみると、ある程度の期間使わない資金であれば良さそうな感じもします。

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ちょうど設定から1年が経ちパフォーマンスが出てきましたが、ここ1年の間では、かなり優秀な結果を残すことが出来ました。

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懸念点としては、株式と債券の両方にレバレッジをかけていますので、両方が大幅に下落するスタグフレーション状態になってしまうと、レバレッジがかかっている分、下落幅はかなり大きくなります。そのへんを考えると、運用対象にコモディティ(金)を組み込んでいるウルトラバランス世界株式も良いかもしれません。

どんな戦略を取るのかは、個々人のライフスタイルにもよりますので、一概には言えません。ただいずれにせよ、若い年代で過度に株式に集中した運用をするのは、キャッシュフローを考えると、ちょっと危ういかもしれません。

まずは「株式の比率は100-年齢」なんてセオリーに踊らされず、自分の人生戦略に合わせて考えていったほうが良いんでねえの?と思う次第です。

ではでは、今日はこのへんで。