こんにちは、らくからちゃです。
IT業界のご多分に漏れず、弊社でも人手不足です。「新入社員研修の課題ってことにしてタスク振れない?」「技能実習生ってどこで雇えるんだろ...」「せや、猫の手を借りる方法を実用化したら全て解決や!」などという考えが脳裏をよぎるほどです。疲れてんのかな。
どうも人事部は現場以上に疲れているらしく、最近になって「一人入社させたら20万円贈呈」「本人と参加者分5000円まで経費で負担するから飲みに誘え」などの大号令発せられ、部門KPIにも"中途採用者複数名獲得"なんて書かれる始末であります。
弊社の偉い人と飲んでいたときに聞いたところ「最近は業者使うと年収分くらいの手数料がかかることもある。それでもアタリの確率は50%くらい。そんなハシタ金で採用できて社員も喜ぶなら万々歳」なんだってさ。
というわけで、誰かSAPをはじめとしたERP商品の導入や、製造業向けのMESだのIoTだとにご興味のある方は、是非ご連絡くださいまし!!
で、この人手不足を他社さんはどうやって乗り切っているのかなーと興味半分で、社長がぶっ倒れた会社の支援に始まり、「頼んでもないお茶は幾らでも出てくるのに頼んだ資料はまるで出てこない」会社の再建を押し付けられ、最近では「給料よりもストックオプションが欲しい」みたいなイケイケの関連会社で役員をして遊んでいた友人が、晴れて親会社のCTOに就任されたそうなので「中途採用とかどうやってんのん?」と色々聞いてみたんですね。
曰く、CTOの初仕事として「新入社員から社長まで、月に1回外部の勉強会に参加すること」を義務付けてみたら、仲良くなったツテでの受注も中途入社もメッチャ増えたから何も困っていない。
という中々パンチの聞いた回答を頂きました。
これは経費で落ちます!
CTO、最高技術責任者は、技術戦略や技術ポートフォリオを立案し、その実現に向けてグループ全体の採用や教育、インフラや社内システムの構築や、アライアンス先の開拓にマーケティング戦略を検討することも求められます。
彼が久々に古巣に戻って改めて社員全員と話をしてみて感じたのは「みんなエンジニアなのに、新しいことに挑戦するガッツが足らないなあ」ということだったそうな。
確かに今まで任されてきた会社よりは業務プロセスは明確化されており、生産性も高い。みんな自分の業務領域には大変勉強熱心だし、業務も日々改善されている。でも目の前のことだけに真剣で、新しい何かにまで取り組めていなかったんです。
「与えられた権限は存分に使わにゃ」と発破をかけることにしたわけですね。
小さい子供のいる人もいれば、介護が必要な親と住んでいる人も居るので、達成できなかったとしても何か罰則規定が有るのではありません。あくまで会社として、外部の勉強会に出ることを通常業務と同等以上のオフィシャルな活動として認め、それに向けて社内システムの改善を図ることに注力しました。
最初に手を付けたのは「研修参加申請書」。上長が必要事由等を記載した上に、人事部門や財務部門に回覧されて決裁されて...という大変面倒くさいブツでした。そこで必須項目を大幅に削減し、各項目も「だいたいで可」にし、上長かCTOが承認するか、提出後3日以内に否認しない限りは自動承認されるプロセスに代わりました。
会社オフィシャルな活動として参加するので、当然、準備時間等も含めてお賃金やお経費を払わにゃなりません。就労規則ガイドブックにも「外部の勉強会に参加した場合の例」を追加し、経費申請ガイドラインにも
- 参加費用
- 交通費・宿泊費
- 懇親会等の飲食費
が支払われる基準と、税務署に怒られないための資料に必要なものを明記し、安心して立て替え払いができるようになりました。
そして先ずは隗より始めよと、管理職から率先して参加し範を垂れるように促し、腰の重い人にはCTO自ら「これ一緒に行きませんか?」と誘うようにし、今に至るって感じのようです。
どうも色んな外部の勉強会に顔を出すようになって、顔が広くなったのも効果があったようなのですが、こうした費用を経費で負担されるのが、他の参加者にとってインパクトがあったそうです。
よくもまあ、そこまで熱心にやるよね、と思って聞いていると「給料は平均以上になるようにしたし、臨時賞与も出した。これ以上に給料を増やしたところで、若い子でも3割近くは税金と社会保険料で持っていかれる。ならば税務署に怒られない範囲で、東京でも福岡でも好きなところに勉強ついでに他社の人とも仲良くなって、遊んできて貰うほうが良いね」という興味深い反応が返ってきたので、ちょっと調べてみることにしました。
社員の給料を上げるのはコスパが良くない
社員の給料を10,000円増やしたとしても、その分だけ手取が増えるわけではありません。年収400万円くらいの「若い子」で検証してみましょう。
最初に引かれるのが各種社会保険料です。
で合計15.265%、金額にして1,527円が差っ引かれます。
また所得税と住民税もかかります。年収が400万円なら給与所得控除が30%で、7,000円、そこから先程計算した1,485円が社会保険控除として差し引かれ、課税所得は5,474円。所得税は最低税率5%でも274円、住民税は10%で547円。
全部計算すると、手許に残るのは¥7,652円です。
更に会社側の負担もあります。会社側の社会保険料は、労災保険 *4 や子育て拠出金などの負担もあるため、16.205%ですね。よって¥1,621円の負担が生じます。
ただし黒字企業ならば、給料や社会保険料が生じれば、その分利益が圧縮されて税金が減ります。給料と社会保険料を併せて¥11,621に、事業税等も含めた実効税率を30.82%とすると¥3,581円分の税負担が減りますので、会社側は¥1,961円のプラスです。
個人分のマイナスに会社分のプラスを合算してもなお¥387のマイナスです。一方で、経費として処理すれば、個人は税や社会保険の負担がありませんし、会社側は税金が¥3,082円圧縮されます。
更に言えば、個人が給料として受け取った中から、勉強会の参加費や交通費を払った場合、消費税は取られっぱなしですが、会社が経費として処理すれば借受消費税と相殺できるので納税額をまるっと減らせます。
消費税って、会社側の視点からみると人件費にかかる税金なんですよね。なので、経費としちゃったほうがお得です。
これらをまるっと考慮すると、給料として支給して払わせるよりも、経費として処理したほうが、会社・個人の合算で4割近くコスパが良い計算になります。
もちろんコレはすべて、交際費等にならず損金処理された場合のシナリオですし、モノによっては現物支給扱いで給与所得として処理せえと言われるケースもあります。
また社会保険料は、年金の受給額や健康保険の疾病手当金の算定にも使われるので一概に「コスト」とは言えません。でも給料を増やして貰ったときに、会社も社会保険料を負担していることは意識してないでしょうし、その有り難さに気づくのは仕事を辞めることになった後になることも多いでしょう。
あと給与明細の数字がちょこっと上がることよりも、費用を負担して貰えるほうが、目に見えやすいんですよね。そういう意味でも「給料を上げるのは経費で負担することに比べてコスパが良くない」といえるかもしれません。
なぜ経費を使わせないのか
もちろん給料なんか上げなくても良いってわけじゃない。使いみちが自分で決められるお金が増えたほうがずっと良いに決まっています。
でも、以前よりぐっと社会保険料も増加し、消費税も10%になろうとしている中では「私的な部分があったとしても可能な限りは必要経費として認めていく」ことは基本的な税ハックの一種のように思えます。
じゃあなぜそれをしないのか。
ひとつの理由として考えられるのは、派遣社員などの(いわゆる)非正規雇用の人が増えたことです。
彼らには現場を改善するような経費を使う権限が無いことも多い。仮に勉強会などの参加費を負担したりすると、派遣元との費用負担の関係など、面倒なことになりやすい。また彼らの労働環境を改善するのは派遣元の会社の仕事ですが、現場にいないためそのニーズも捉えられない。
そういやCTO殿の会社は、全員正社員主義を貫いていましたが、だから出来たのやもしれません。
近年、各所で「働き方改革」が叫ばれていますが、こうした就労環境の改善は、もうちょっとテコ入れして行かなきゃならんのじゃねえのかあと思う次第であります。
ではでは、今日はこのへんで。

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