ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

政令指定都市の市民税が上がった話って知ってる?

こんにちは、らくからちゃです。

今年は統一地方選がある関係で、どこに行ってもビラを配り歩くひとや街頭演説をするひとに出くわすことが少なくありません。私の住んでいる街でも、先週の県議選が終わり静かになるのかなあと思えば、続けて市議選・市長選だそうで、全くせわしないもんです。

皆様の税金が正しく使われているかチェックをする良い機会ですので、是非参加をしましょう!とその前に、皆様お住まいの都道府県に収めている税金の金額はいくらかご存知ですか?

How much is 都道府県民税!

道府県*1の税収ってどんな感じになっているのかから復習しておきましょう。平成30年版 地方財政白書から2016年版のグラフを持ってきました。

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一番が個人の道府県民税約5.1兆円(28.1%)、次に地方消費税が26.0%で約4.7兆円(26.0%)に、あと事業税が4.3兆円(23.5%)となります。結構多様な税源構造なんですね。ついでに市町村も見てみましょう。

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こちらの1番は固定資産税の約8.9兆円(41.8%)で、2番は個人分の市町村民税の約7.4兆円(34.6%)となります。あとは割りと雑多な感じですね。いずれにせよ個人の収める住民税はかなり大きな比率になります。

「でも県民税とか払った覚え無いぞ?」

とお思いの方も多いでしょう。給料明細にも「県民税」なんて言葉は出てきませんし、自営業の方も県から税金の話をされたことは無いかなあと思います。でも都道府県に直接納めていなくても、ちゃーんと都道府県民税を払える仕組みになっています。

種明かしをすると、給与明細に「住民税」という名前で書いてあるものの中に「市民税」と「県民税」が含まれているんです。

 払った覚えのない都道府県民税の正体

これを図にするとこんな感じですね。

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給料明細を見ていると、色んな項目が天引きされています。皆さんの自治体に納められるお金は、この中で「住民税」と書いてあるものです。お勤めの方は、会社があなたの代わりに税金を払ってくれます。

なお「源泉徴収」は、お金を払った段階(この場合は給与)で所得税を差し引いて渡す仕組みを指します。住民税は、市町村が住民から集める「普通徴収」の代わりに、会社に集めて貰っている「特別徴収」という仕組みになり、別物の扱いになります。

(普通の会社にお勤めなら特別徴収のほうが普通なんですけどね。)

具体的なフローとしては、お勤めの会社から従業員の住んでいる自治体に「前年はこれくらい給料払いました」みたいな書類を送ります。受け取った自治体は、前年の確定申告の結果を反映した「これくらい集めといてくださいな」といった書類を返送します。

「ブログで副業をしている場合、確定申告のときにバレるから、差額分は普通申告にせよ!」と言われるのはこの部分ですね。差額は副業以外でも発生しますし、いちいち個人のプライバシーに突っこむほど人事も暇ではないので、別に気にするほどでも無いですけど。

www.yutorism.jp

 というわけで、会社には天引きされた住民税は、それぞれの従業員がお勤めの市町村に対して納められます。その中から、都道府県民税分が、市町村から都道府県に対して納められるという流れになります。

そのため、何もなければ一切自治体の窓口まで行くことなく市町村民税も都道府県民税も払えますし、仮に何かあったとしても市区町村役場で事足ります。

住んでいる街で税率は違うの?

さて随分遠回りをしてきましたが、そろそろ本題に入りましょう。

そもそも住民税の金額って、住んでいる街によって違うの?

ですね。住民税の金額は"基本的には"前年所得の10%の所得割に、全員一律固定の均等割5,000円を加えたものを12等分した金額になります。

「所得」とは、これまた超ざっくり言うと、受け取ったお給料から

  1. 基礎控除
  2. 扶養控除
  3. 給与所得控除
  4. 社会保険料控除

などの各種控除を差し引いた金額のことです。手取600万円の単身者ですと、ざっくり300万円くらいになり、年間で30万円、一月あたり2.5万円ほどが差っ引かれる計算となります。高いですねえ。どこか安いところに引っ越したくなりますよね。

じゃあ住んでいる街によって税率は変わるのかというと、ごく一部の例外を除いて同じです。打ち直すのが面倒くさいのでそのまま総務省のまとめた資料を貼り付けておきますが、こんな塩梅です。

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(出典:市町村税関係資料

基本的に財政が厳しい地方の田舎の道府県が均等割部分を増額するケースがよく見られます。この程度でどうにかなるとは思えませんけどね。逆に、標準税率よりも安くなるのは、名古屋市ですね。ここは河村市長が(良いか悪いかはさておき)頑張った結果、市民税相当分0.3%相当分引き下げています。

というわけで「住民税は全国どこでも同じというわけでは無いが、だいたいどこも同じ」という結論になります。

だったらタイトルの「政令指定都市の市民税が上がった話」ってなんやねん。

という疑問が高まってきたころかと思いますので、そろそろ本題に入りましょう。

 政令指定都市の市民税が上がった話って知ってる?

政令指定都市とは、ある一定程度以上の規模を持つ大都市に対して、国から特別に政令で指定された市のことです。全国に20ある政令指定都市の人口を合わせると3000万人近くになり、日本人の1/5は政令指定都市に住んでいることになるそうです。

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政令指定都市として認められると、都道府県波に強い権限が与えられ、普通の『市』とは桁外れに自主性の強い行政サービスが行えるようになります。

強い権限には、重たい責任がついて回るわけで、それだけ負担も重たいわけなのですが、受け取る住民税の税率は一般の市町村と同じでした。それがやっと平成30(西暦2018)年より、それに見合った税収が得られるようにルールが変わったんですよね。

  指定都市以外 指定都市
市民税 6% 8%
道府県民税 4% 2%

 指定都市以外では、所得の6%が市町村民税で4%が道府県民税なんですけど、それが指定都市では所得の8%が市民税で、道府県民税は2%になりました。つまり総額では変わらないんですけど、指定都市に住んでいるひとが納めた住民税の行き先のうち2割が県から市に移るようになりました。

市立学校の先生の給料って県が支払ってるって知ってる?

なんだよ、都会で楽に暮らしてる連中の税金が上がってスカッとする話かと思ったら違うのかよ!と思わせちゃったのならごめんなさい。でも戻るボタンを押す前に、もうちょっとだけお付き合いください。

今回の税源移譲は、いままで道府県の支払っていた県費負担教職員の人件費の負担を指定都市に関しては、市に移すことに伴う措置になります。

というと、なんだか堅苦しい感じがするんですけど、まず前提として「市立学校」であっても、そこで働いている先生を採用するのは都道府県なんですよね。地方の学校も少ない市町村が独自に採用するのも大変ですし、基本的には採用も給料の支払いも都道府県教委が行っています。こういった先生を「県費負担教職員」といいます。

しかし指定都市に限っては、それぞれの市教育委員会が独自に給与を設定し、採用も行います。ところが、給料の負担に関しては都道府県が行っていたんですよね。

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(出典:県費負担教職員の給与負担等の移譲について

学校の設備を維持するのは市町村の教育委員会の仕事ですし、ちゃんと仕事をしているかもお住まいの自治体の市町村教委のお仕事です。しかし、非指定都市では教員の採用や学級の人員編成などは独自に行うことはできません。

一方、指定都市ではそこも含めて、権限を大きく移譲されているのですが、実際の人件費の負担については都道府県に残された状態でした。そこが指定都市では市に、財源とセットで支払いの義務が移るようになりました。

実家で「お兄ちゃん(指定都市)は食べたいものを言って良いのよ」と言われていたけど、いろいろと自由に気兼ねなく生活できるように「実家に入れるお金は減らす代わりに晩ごはんは自分で作るようにする」ふうになったって感じでしょうか。

もちろん指定都市でも国が定めたルールに従う必要がありますが、自由にできる部分に関して、自主財源を道府県のことを気にすることなくできるようになるのは良いことでしょう。それと同時に教育にお金をかけるのか、それ以外のことにお金をかけるのかの責任も増えていますので、ちゃんとお住まいの方はチェックの必要性が上がったことになります。

県の仕事といってもイメージがつかないのよね

このことも踏まえると「先生の働き方はちょっとキツすぎない?」とか「もうちょっと1クラスの規模を小さくして欲しいなあ」といった話は、指定都市でないのであれば市町村議選のテーマというより、都道府県議選のテーマになるのかもしれません。

でもね、一般の皆さんは、どこまでが都道府県の仕事で、どこからが市町村の仕事かすら良く分からない?そりゃあ市町村に教育委員会があって、市町村立を名乗る学校がある以上、そこで働く先生だって市町村単位で採用してると思うよね。

大阪で維新の会がやろうとしている「府市合併」みたいなのが正解だとは思わないけど、選挙に行こうにも地方自治に関する知識が少なすぎると思うんだよね。

あと県議会議員選挙や県知事といっても、縁もゆかりも無い、チーバくんの足元あたりや耳のあたりの話が出てきてもよくわかんないんだよね。ぶっちゃけ、県知事の選挙権なんかより、平日は日中をずっと過ごし、土日も半分は遊びにいっている東京都の選挙権がほしいくらいですよ。東京都が約半分所有しているメトロはほぼ毎日乗ってるし。

首都圏だけじゃなくて、近畿圏や中京圏においても、それ以外の地方とは「都道府県」と「市区町村」の関係って、かなり違うと思うんだよね。それを一緒くたに同じルールでやっても納得感のある自治にはならなくない?

そもそも今から70年近く前に作った47都道府県という枠組みを、地域の構造も通勤圏も大きく変わった現代でも使おうとするのは無理があると思うんだよね。個人的には

  1. より一層の基礎自治体の権限強化
  2. 道州制の導入や都道府県の合併
  3. 都道府県を律令国単位くらいまでに分割

くらいはあっても良いような気がするんですよね。まあせっかくの選挙シーズンですので、どの候補の言っている内容がグッと来るかだけでなく、地方自治の形についても考えてみてもいいかもしれませんね。

ではでは、今日はこのへんで。

 

*1:都は諸々面倒なので除外されてるデータですね