ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

宝くじを買うことは「非合理」なのか

こんにちは、らくからちゃです。

気づけば、営業日も指折り数える段階に入ってまいりました。ボーナスも入ったし、ぱーっと散財...できるほどお金が有ればよいのですが、ボーナス払いの支払いと積立投資分のキャッシュアウトでいつものごとくの素寒貧でございます。とほほ。

そんな我々庶民の薄い財布をロックオンするかのように、宝くじの売り場が賑わいを見せていますが、最近はあんまり売れていないんだとか。

www.kahoku.co.jp

この時期になると「宝くじは期待値マイナス!買えば買うほど損する貧乏税!!己のマネーリテラシーの無さに咽び泣くが良い!!!」と聞いてもないのに説法を始めるひとが出てきたり『そんな無駄金を払うくらいなら、コツコツでもためたほうがお金持ちになれるのにね』とありがたいアドバイスを下さる方がどこからともなく湧いてきます。

代表的な意見としては、こういうのかな。

「1等前後賞合わせて3億円!!」のサマージャンボ宝くじが発売され、人気の売場にはさっそく行列ができています。宝くじの魅力は夢をかなえる一攫千金にあるのでしょうが、その一方で、「宝くじを買うひとはお金持ちにはなれない」ともいわれています。その理由は、小学生でもわかるような単純な期待値の計算ができないからです。

あらゆるギャンブルは、賭け金からショバ代(経費)が差し引かれ、残金の合計を勝者(当せん者)が総取りする仕組みになっています。競馬を開帳するには競馬場や競走馬などが必要になりますから、賭けの参加者が胴元にショバ代を支払うのは仕方のないことです。もちろん、この参加費が安ければ安いほど、勝ったときの払い戻し額が大きくなるという法則も共通です。

(中略)

ところで日本の宝くじは、平均的な期待値が47円と恐ろしく低いことが特徴です。サマージャンボを3000円分買ったとすると、その瞬間に1590円が日本宝くじ協会によって差し引かれてしまいます。これほど割に合わないギャンブルはほかにはないので、「宝くじは愚か者に課せられた税金」と呼ばれるのです。

宝くじを買うひとは誰もが1等当せんを期待するでしょうが、その夢がかなうのは交通事故で死ぬ確率よりもはるかに低いのですから、購入者が合理的であれば、大金持ちになる前に交通事故死してしまうと考えて買うのをやめるはずです。それでも膨大な数の宝くじ愛好家がいるのは、自分の人生にはとてつもなく幸運なことが起きるかもしれないが、それほどの不幸はないだろうと楽天的に考えているからです。宝くじを買うひとは誰もが1等当せんを期待するでしょうが、その夢がかなうのは交通事故で死ぬ確率よりもはるかに低いのですから、購入者が合理的であれば、大金持ちになる前に交通事故死してしまうと考えて買うのをやめるはずです。それでも膨大な数の宝くじ愛好家がいるのは、自分の人生にはとてつもなく幸運なことが起きるかもしれないが、それほどの不幸はないだろうと楽天的に考えているからです。

宝くじは「愚か者に課せられた税金」 週刊プレイボーイ連載(9) – 橘玲 公式BLOG

 うん、まあそうよね。言ってる内容に論理的な矛盾はないと思うのよ。でもさ、この話を宝くじ売り場に人々に語って「えええー!知らなかったですぅ。今すぐ家に帰って証券口座開いてVTI買いますぅ」ってなる?

んなーこた知っとる

 って言われるのがオチじゃない?宝くじ売り場のショバ代やオバちゃんのお賃金が必要なぶん期待値がマイナスになるのは、多分大抵のひとなら知っているだろうし、みんながみんな認知バイアスが掛かってるとも言えない気もするんよね。

「うるせえ、夢を買っているんだ!」とか「恵まれない人の役にも立つんですよ」とか、そういうエモい話は置いておいたとして、じゃあなんで、宝くじを買うなんて非合理な行動を取るんだろうか。いや、そもそも本当に「非合理」なんて言えるんだろうか。

宝くじを買うのは非合理な行動なの?

きちんとコツコツとインデックスに投資しておけば、複利効果でお金持ちになれる。ここ最近、広く耳にするようになったフレーズですけど、実際にどれくらいのお金持ちになれるもんでしょう。利率(縦軸)と保有年数(横軸)ごとのリターンを整理してみると下記のような感じになります。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2% 102% 104% 106% 108% 110% 113% 115% 117% 120% 122%
4% 106% 110% 115% 119% 124% 129% 134% 140% 145% 151%
6% 112% 119% 126% 134% 142% 150% 160% 169% 179% 190%
8% 121% 131% 142% 153% 165% 178% 193% 208% 225% 243%
10% 134% 147% 162% 178% 196% 215% 237% 260% 286% 315%

現実的に無理せず狙える線としては、平均4%から6%くらいかなあ。じっくりと欲張らずに保有すれば、1.5倍から2倍近くにお金を増やすことが出来る計算になります。100万円を運用すれば、10年後には150万円や200万円くらいになる計算ですね。

うん。もちろんコレは小さくない金額ですよ。

でもね、正直この程度のお金が増えたところで、ぶっちゃけ「働かなくて済むようになる」とか「生活レベルが激変する」ってもんではなくない?

例えば、セミリタイアするには1億円近いお金が必要だなんて言われますけど、この金額を10年で用意するためには手持ち資金が100万円なら58.5%(!!)、1000万円でも25.9%もの平均リターンが必要になります。もう少しじっくり20年に設定しても100万円で25.9%、1000万円でも12.3%の平均リターンをあげる必要があります。

常々おもうんですけど、みんな「複利効果」に期待しすぎと違います?

確かにインデックスによるパッシブ運用は、経費によるロスも少なく、資産運用による期待値はかなり高い部類に入るのは間違いないでしょう。でもね、階段何段かぶん生活レベルを向上できても、上の階層に上がれるほどの効果は無いんですよ。

資産運用の改善は、今の生活にそこそこ満足している人が、将来的にもう少しよい生活がしたいのであれば有用ですが、うんと良い生活がしたいのであれば、まだ宝くじでも買うほうが確率的には高い。もし、生活レベルが大きく変わるレベルでお金がほしいのならば、まだ宝くじでも買ったほうが合理的なんじゃないでしょうか。

合理的な行動ってなんだよ

勘違いしないで欲しいんですけど、「インデックスなんて投げ捨てて宝くじでも買ってたほうがまだマシ」なんてことが言いたいわけじゃない。

もし本当に「実感できるレベルの豊かさ」を手に入れたいのなら、資産運用を最適化するだけじゃ不十分なんです。

それこそ宝くじで一発あてるか、もう少し地に足をつけてやるんなら、しっかりとスキルを磨いて、うんとお給料を上げてもらうか、転職するか、起業するかくらいしないと駄目なんですよ。

大変不思議なことに、資産運用に関しては、きっちり期待値を計算して1円も取りこぼさないようにするひとは山程見るのにことその対象が「勉強」とか「健康」になると、みんな押し黙っちゃうんですよね。

しっかり運用して着実に増やすのは大事です。でも、それで到達できる限界点も頭にいれておくのも大事です。

人によっては耳の痛い話になるかもしれませんけど、もし「合理性」「期待値」を重視するのであれば、ポートフォリオを眺めるのはほどほどにして、将来のキャリアのためにしっかり勉強したり、大病して患わないように健康のために気を使う時間を殖やしたほうが「合理的」で「期待値」も高いと思うんですよね。

せっかく「ほったらかし投資」を学んだのであれば、貴重な時間を資産運用にたいして使うんじゃなくて、もっと自身の収益性を高めることの出来る何かに時間を割いたほうがいいんとちゃうのん?そんの風に思う今日このごろでございます。(趣味として楽しむのであれば別ですけどね)

ではでは、今年はこのへんで!