こんにちは、らくからちゃです。
先ほどテレビを見ていると、こんなニュースが目に入りました。
消費税を10%にあげる際に、食品全般に『軽減税率』を適用しようとしていたところ、麻生財務相の鶴の一声で、酒類・外食が除かれることになったとか。
ただ、外食まで広げると料亭など高級店の飲食も対象となり、「高所得者層まで優遇されるのは制度の趣旨に合わない」(閣僚経験者)と判断し、含めることを見送った。
なるほど・・・、普段赤坂でお食事を頂いている皆様らしいご意見ですね。軽減税率そのものについても、言いたいことは山程ありますが、本件に関して、ひとつ気になる事があります。
それは、『外食を軽減税率の対象に含めると高所得者層が優遇されるのか?』ということです。そこで、外食費が家計に占める比率について調べてみました。
高所得者層は酒類・外食に使う金額が高い?
さて、まずは指摘されているように外食を優遇税制の対象に含めると、高所得者層が優遇されるのでしょうか?そこでまずは、家計調査から、それぞれの階層別に家計支出の金額についてまとめてみました。(参考:統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103)
費目 | 244万円未満 | 360万円未満 | 504万円未満 | 737万円未満 | 737万円以上 |
---|---|---|---|---|---|
酒類 | 21,750 | 33,303 | 37,802 | 40,808 | 50,563 |
外食 | 78,506 | 121,773 | 154,217 | 192,467 | 278,137 |
外食・酒類以外 | 369,990 | 529,757 | 599,607 | 657,544 | 797,658 |
消費支出全体 | 1,606,237 | 2,395,656 | 2,903,286 | 3,422,417 | 4,761,293 |
酒類・外食については、やはり高所得者層のほうが支出が大きいようですね。ただ、家計全体の支出も大きくなっています。そこで、家計全体に占める比率でも見てみましょう。
確かに、外食・酒類以外の食費の占める割合は、世帯収入が増えるほど下がっております。一方外食費については、年収で大きな違いはありません。そして『酒類』については支出比率はむしろ下がっています。
さてこの分析は『家計全体』の比率についてまとめたものです。家計調査は、『勤労世帯』という区分もありますので、こちらでもみてみましょう。
費目 | 350万円未満 | 490万円未満 | 638万円未満 | 845万円未満 | 845万円以上 |
---|---|---|---|---|---|
酒類 | 25,248 | 35,390 | 39,089 | 40,854 | 49,055 |
外食 | 138,848 | 174,219 | 205,715 | 227,043 | 290,548 |
外食・酒類以外 | 362,275 | 484,633 | 568,380 | 668,251 | 778,175 |
消費支出全体 | 1,959,506 | 2,688,756 | 3,220,560 | 3,939,088 | 5,040,618 |
なんとびっくり。低所得者ほど家計に占める外食費の比率が高いことが判明しました。まあ考えてみると、貧乏暇なしな低所得者に、お弁当を作るようなヒマは有りません。その為、牛丼チェーンや立ち食いうどんなどでお昼を済ますケースも多いように思われます。そういう点もまとめて、『外食は贅沢だから軽減税率対象外』としちゃうのって、どうなのかなーと思うんですよね。
というか、牛丼チェーンは持ち帰りも出来ますが、持って帰って家で食べた場合はお安くなるんですかね?
更に言えば、『酒類』が贅沢じゃないなんて、『価値観の押し付け』でしか無いでしょう。その理論で言えば、お菓子や清涼飲料水はどうなのということにもなると思うんですよね。
本当に軽減税率が必要なのは何か?
もっとも『家計に占める比率』だけで見るのもどうかなあとは思いますよね。そこで別の切り口として、『各費目ごとの金額』を勤労者世帯で最も貧しい350万円未満層と、最も豊かな845万円以上層で比較してみましょう。
費目 | 350万円未満 | 845万円以上 | 倍率 |
---|---|---|---|
住居 | 314,931 | 282,177 | 0.90 |
光熱・水道 | 158,271 | 292,363 | 1.85 |
食料 | 526,371 | 1,117,778 | 2.12 |
保健医療 | 6,6717 | 16,2921 | 2.44 |
教養娯楽 | 188,281 | 532,854 | 2.83 |
家具・家事用品 | 57,831 | 168,123 | 2.91 |
交通・通信 | 280,517 | 849,391 | 3.03 |
被服及び履物 | 77,674 | 246,404 | 3.17 |
その他の消費支出 | 256,224 | 1,057,541 | 4.13 |
教育 | 32,689 | 331,067 | 10.13 |
住居費について、高所得者層のほうが支出額が少ないのは、おそらく持ち家率が関係しているものと思われます。食料は、全体で見ても『高所得者と低所得者の支出額が"比較的"少ない』ため、軽減税率の対象とすることが相応しいものであると思われます。
ただ、もっと軽減税率を適用するに相応しいものがあります。それは『光熱・水道』代です。軽減税率の対象としても、比較的メリットが有ります。
- 生活おいて絶対に必要なものである
- 家のサイズなどの影響は受けるが、たくさん使って『贅沢』するにも限度がある
- 対象に入るかどうかの範囲が比較的明確に決められる
どうでしょう!麻生さん!
あと、ちょっと愕然としたのが教育支出の格差ですね・・・。まあここには世帯人員の要素が加味されていません。そこでその点も含めるとこんな感じです。
350万円未満 | 490万円未満 | 638万円未満 | 845万円未満 | 845万円以上 | |
---|---|---|---|---|---|
世帯人員 | 1.73 | 2.53 | 2.97 | 3.21 | 3.28 |
18歳未満人員 | 0.29 | 0.66 | 0.88 | 0.93 | 0.79 |
65歳以上人員 | 0.15 | 0.19 | 0.18 | 0.18 | 0.19 |
有業人員 | 1.16 | 1.38 | 1.51 | 1.61 | 1.79 |
教育費 | 32,689 | 74,193 | 130,588 | 220,883 | 331,067 |
(教育費÷18歳未満) | 112,721 | 112,414 | 148,395 | 237,509 | 419,072 |
随分と、年収による格差が大きいように見えますね。
そもそも何故ひとは軽減税率を求めるのか?
軽減税率については、経済学的な見地からいろいろな問題点が指摘されています。こちらの記事が丁寧で分かりやすいですね。
消費税の最大のメリットは、その仕組のわかりやすさです。それは、行政コストを引き下げるだけでなく、官僚による恣意的な運用を避ける効果もあります。このことは、かなり広く伝えられているのですが、それでも軽減税率を求める人は減りません。
5割を超えるひとが、軽減税率を支持する、というような声があります。ただこういった調査は、『軽減税率あり』か『軽減税率なし』かの二択の場合も多く、それだったら『あったほうがいいなあ』というのが本音ですよね。
しかしこれが、『軽減税率あり』か『軽減税率分の還付』でも『軽減税率』を求めるひとは結構いるような気がするんですよね。それは結局、政府の能力を信頼せず、自分の意思で購買行動をコントロールすることで節税ができる(と思い込んでいる)軽減税率が指示されるということなんかいな、と思います。
そもそも、『軽減税率は適用せず、低所得者支援に回したほうが効率いいよ』というのはちょっと無理筋かなーと思うんですね。だったら、消費税減らしてくれよ、というのが無辜な民草の一般意見なのかもしれませんね。
例えば、大学までの教育をすべて無償化して、低所得者層と高所得者層の所得格差を減らすぜ!とか、何か明確で分かりやすいものを示してあげるほうが良いのかもしれませんね。
ではでは、今日はこの辺で。
消費税・軽減税率の検証―制度の問題点と実務への影響をめぐって
- 作者: 矢野秀利,上西左大信,金井恵美子,橋本恭之
- 出版社/メーカー: 清文社
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