ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『下町ロケット2 ガウディ計画』の読書感想文

 こんにちは、らくからちゃです。

最近、毎週日曜日の日課が、早く帰って下町ロケットを見ることになっています。池井戸先生の本は結構好きな方なので、今まで何冊か読んできましたが、よーく池井戸先生の世界観が表現出来ていると思います(笑)。

随分飛ばしていくなあと思っていたら、続編となる 『下町ロケット2 ガウディ計画』の部分も含めての1クールということなんですね。ちょうど、こちらの続編の発売と合わせて、放映のスケジュールを組んだって感じなんでしょうね。

下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画

 

 ついでに、MRJの試験飛行のタイミングにも合わせてきたとすれば、中々強い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

現在放映中の下町ロケットは、原作からかなり割愛された箇所も多かったような気がします。最後の真野さんとか、佃さん、結構小粋なはからいをしているはずなのに、ただただ喧嘩別れしちゃった感じになってますしね・・・。

ということで、後半戦も原作に目を通してからのほうが、ちょっとだけ面白くなるかもしれません。ですので、感想文でも書いてみようかなあと思います。

基本的に、『ネタバレ』は無い方向で行きたいと思いますが、どうしてもほんのりストーリーが分かってしまう書き方になってしまいますので、その辺はご容赦をm(_ _;)m

あらすじ

その部品があるから救われる命がある。
ロケットから人体へ――。佃製作所の新たな挑戦!

ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年――。大田区の町工場・佃製作所は、またしてもピンチに陥っていた。
量産を約束したはずの取引は試作品段階で打ち切られ、ロケットエンジンの開発では、NASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペの話が持ち上がる。
そんな時、社長・佃航平の元にかつての部下から、ある医療機器の開発依頼が持ち込まれた。「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。しかし、実用化まで長い時間と多大なコストを要する医療機器の開発は、中小企業である佃製作所にとってあまりにもリスクが大きい。苦悩の末に佃が出した決断は・・・・・・。
医療界に蔓延る様々な問題点や、地位や名誉に群がる者たちの妨害が立ち塞がるなか、佃製作所の新たな挑戦が始まった。

日本中に夢と希望と勇気をもたらし、直木賞も受賞した前作から5年。
遂に待望の続編登場!

ネタバレ防止用なんでしょうけど、『心臓病患者を救うことができるあるもの』って、もう『ああいったもの』しか思い浮かばないんですけど、どうなんでしょうw

なんにせよ、ロケットエンジンのバルブから比べると、超小型のものの制作になるようですが、お得意の『手作業による1/100ミリレベルの精度の製作技術』を武器に戦っていくお話です。

まあ内容は、池井戸作品おきまりの『勧善懲悪型経済小説』ですね。他作品との違いと言えば、今回は白水銀行とか東京中央銀行みたいな悪い銀行が出てこなかったところかなあ。

帝国重工さんでは、億単位の資金の決済を、本部長レベルでしちゃうの!?普通、経理とかアライアンスとか交えた上で根回しをして、役員会で承認とったりせーへんもんなんだろうか・・・。大企業ぱねー( ゚д゚)

などなど、ほんまかいなそうかいなと思うところは何箇所かありました。全体的に『ちょっと消化不良なんじゃねーの?』と思うところがあったのは、池井戸さん自身小学館への納品を焦っていたのでは?なんて勘ぐってしまいますね。それはさておき、学術論文じゃないんだし、こまけーところはいいんだよ!とおいておいて楽しむのが良いかと思います。

ただ、そこはしっかり踏み込んで欲しかった、と思うところがあります。それが、佃社長の社長としての役割と、社長業とは何か、というところです。

パンだけでは生きられないけれども

作中、こんな描写があります。

なぜ、この仕事をするのか。なぜこの開発を請け負うのか。
◯◯の言葉、写真の一枚一枚、そしてビデオレターの子供のひと言ひと言が、社員全員の胸に染み渡り、やる気とエネルギーの糧になっていく。
◯◯の話が終わったとき、自然と拍手が起こった。
これは、単なるビジネスじゃない。
綺麗事かもしれないけれど、人が人生の一部を削ってやる以上、そこに何かの意味がほしいと、佃は思う。

下町ロケット2 p152

※一部伏字にしています。

 で、でたー!やりがいってやつだー!ロケットエンジンの時と同じく、今回もまた『仕事の意義の大きさを語りながら、社長がぐいぐい引っ張っていく感じのお話ですね。

うん。言っていることは真っ当よ。お仕事はそうであって欲しいと思うよ。敢えて社長がそれに取り組んでいくことも必要だと思うよ。でもやっぱり、社長さんのお仕事って、夢を語ることじゃなくて、夢を叶えられる職場を作ることなんじゃねーのと。

しっかり、安心して研究や開発に打ち込める環境づくり、そっちのほうにエネルギーを割いている描写はあんまり無かったような気がするんですね。だいたい今回も殿村さんが一生懸命そのへんの立ち回りをしている。(もう、トノさんが専務でええやんと)

逆に言えば、そういったところをしっかりフォローしてくれる人材を確保してきたところは、佃社長の凄いところなんだろうけれども、現場がそこについていけていないところは、しっかり社長さんとして考えなきゃいかんところじゃなかったのかな、と思うんですね。

更に、『どーかと思う』と思ったのは、途中で出てくる『ガウディ計画』の名前の由来となった別の会社のほう。社長業を完全にほっぽり出して、社員が汗水たらして得た利益を、いつ実るのかわからない『道楽』と言われても仕方のないところにつぎ込んでいく。

わたしが社員だったら、間違いなく転職考えるな、と思いましたですよ(笑)

池井戸作品の息苦しさ

ただ、そんな環境を整備するにも、いかんせん佃製作所には町工場(200人もいればその表現が相応しいか微妙ですが)に過ぎず、体力的に厳しい、というところも分かります。でも、そんな中で、上から下までみんな一生懸命頑張っているんですね。

ひとつ言っておくと、佃製作所は10時にはほとんどの社員が帰宅しているようなので、カットオーバー前には不夜城とかすどこかのSIerなんかよりかは労働環境は良さそうです。ただ、佃製作所にせよ、帝国重工にせよ、みんな『これでもか』ってくらい必死で働いている描写が続くんですよね。

本作にも『悪い奴』は出てくるのですが、彼らも彼らなりの考え方にもとづいて、一生懸命に『悪いこと』をする。権力を振りかざすのも、『私利私欲のため』というよりも、会社の方針にそってといったケースが多い(それが出世に繋がる、という意味では私利私欲なんでしょうけど)。

その辺りに、ちょっとした『息苦しさ』を感じてしまうんですよね。さぼって煙草部屋に屯しているおっさんどもは出てこないのか!みたいな。

そういったところに『人間臭い』ようでありながら『人間不在』な感じがしてしまうのは、わたしだけでしょうか?

ではでは、今日はこの辺で。

余談

あとなんですね、余談ですが、以前こんなtwitterが流れてきました。

 あれー、そういえば、三菱重工の偉い人に『佃』ってひと居なかったっけ?と思ったら居ました。

な、なんと佃製作所とは『三菱重工』のことだったんですね!!!(じゃあ、帝国重工ってどこだ?)