ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

財務諸表分析入門(1) ~分析に必要なデータの集め方~

こんにちは、らくからちゃです。

吹く風の冷たさに、そろそろ本格的に秋になってきたんだなあと実感するようになってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?さて、今日もまた先週の日経平均から振り返ってみたいと思います。

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日経平均株価は、週半ばまで下落を続け、一時1万8,000円割れの状況となりましたが、NYダウの上昇を受け反発。週次では0.8%マイナスの18,291.8円となりました。米国市場は、FRBが緩和的な態度を続けるとの期待から、株式市場への資金流入が続くと見て、2ヶ月ぶりの高値となりました。(参考:米国株、反発 ダウ217ドル高で2カ月ぶり高値、金融株に買い)

なお、来週の重大イベントは、10/19(月) 中国7-9月期の四半期GDP 発表 が行われます。今や、全世界GDPの1割以上を占める中国の動向は、中国国内のみならず世界経済に対して大きな影響を与えます。7%の成長目標が達成できるのか?注目の発表ですね。

次に、紹介銘柄の振り返りをさせて頂きたいと思います。前回分はこちら(日経平均とTOPIXとJPX400の違い)をご参考ください。なお、紹介銘柄の詳細は、下記をご参考ください。

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おすすめ銘柄全体で見ると、0.31%のプラスとなり、通算損益は2.53%の下落(配当等は含まず)となりました。今回一番の目玉は『ありがとうサービスの好決算』ですね。

ありがとうS <3177> [JQ] が10月13日大引け後(15:30)に決算を発表。16年2月期第2四半期累計(3-8月)の経常利益(非連結)は前年同期比24.1%増の2.6億円に伸び、従来の9.7%減益予想から一転して増益で着地
通期計画の4.9億円に対する進捗率は54.0%に達し、3年平均の44.6%も上回った。

ありがとうサービス【3177】、上期経常は一転24%増益で上振れ着地 | 決算速報 - 株探ニュース

こういった決算の話を書いていると思うのですが、長期的に株式投資をするのであれば、決算の情報もしっかり読み込みながら投資をしていきたいところですね。

そこで今日は、財務諸表の読み方・使い方について、どんなデータがあるのか?必要なデータをどうやって入手するのか?について説明してみたいと思います。

財務諸表を読むために必要なスキル

 まず、財務諸表を読むためには、簿記や会計学といった知識は必要なのでしょうか?この点については、財務諸表を読むにあたって、簿記や会計学の知識はあるに越したことはないが、必ずしも必要では有りません

そもそも、財務諸表とは企業が自社の財政状態や経営成績についてまとめた資料のことを指しますが、それぞれ登場するものを整理すると

  • 会計学・・・役に立つ財務諸表を作る方法の体系
  • 簿記・・・会計学の考える財務諸表を作り上げる為の技術
  • 財務諸表分析・・・財務諸表から、企業の状態を分析する要点をまとめた技術

となります。車づくりに例えると、会計学は強度設計や安全性についての研究成果。簿記は基準を満たす車を作る為の方法論。そして財務諸表分析は、安全に運転するためのテクニックとなります。車を安全に運転するにあたり、どういった考え方にもとづき、どのように作られているのかを知ることは、有意義なことですが、必須の知識では有りません。

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むしろ、簿記一級まで取得し、簿記はもちろん会計学的な知識までしっかり学んできていたとしても、財務諸表を読み解く技能は別物と考えてもいいほどです。

財務諸表とは何か?

さて、一般には『決算書』なんていい方をすることも多いのですが、今回ご説明する『財務諸表』にはどんなものが含まれているのかというと、大きく分けて貸借対照表(BS)損益計算書(PL)の2つの書類が重要な資料となります。

貸借対照表とは、企業の持っている資産と負債の内訳を整理した資料になります。その会社に資産がどれくらいあって、負債がどれくらいあるのか?差し引きで純資産はどの程度あるのか?そういったある一定時点でのストックの情報を整理したものを、会計学の専門用語としては『財政状態』といいます。

ちょっと語弊はありますが、ある一定期間での純資産の増加=企業の財務的な成長、『利益』ということがいえます。ただ、差額の数値をみただけでは、利益がどのようにして発生したのかが分かりませんね。そこで、純資産の増加要素を収益・減少要素を費用として整理した資料が損益計算書です。ちなみに、こういったある期間でのフローの情報を整理したものを、会計学の専門用語としては『経営成績』といいます。

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細かい内容はおって確認しておくとして、まずは『貸借対照表』と『損益計算書』の名前だけは覚えておきましょう。

財務諸表の入手法

株式を証券会社で売買できるように、上場している会社であれば、毎年1回『有価証券報告書』を、四半期に一回『四半期報告書』を提出することが義務付けられています。なお有価証券報告書には、財務諸表だけでなく、次のようなデータも含まれています。

  • 事業の概要や状況
  • 役員の一覧や経歴
  • 株主の情報(親会社がどこでどれくらいの比率を持っているのかなど)
  • 従業員の情報(人数・平均年齢・平均年収等)

これはこれで中々興味深い情報ですが、今回の解説からはちょっとおいておきましょう。

次に、財務諸表を手に入れる方法ですが、一番確実に手に入れる方法は、金融庁のEDINETから検索すれば確認できます。他にも、各社のホームページ上から『IR』や『投資家向け情報』などのタイトルのページを探して頂ければ、だいたい必要な書類が掲載されています。試しに、みなさまもお馴染みの会社ということで角川について見てみましょう。

これは角川の例ですが、だいたいどこもこんな感じですね。事業報告は、会社によっては『アニュアルレポート』などと呼ぶこともありますね。

役に立つウェブサービス・統計

さて、分析に必要なデータですが、実際の財務諸表を元に分析しても良いのですが、こういった分析をするには、『複数の期間』の情報や『業種間のデータの比較』が重要となってきます。そこで、財務諸表のデータを分析するにあたって利用できるウェブサービスや統計についてご紹介したいと思います。

Valuation Matrix 

いつも利用させていただいているウェブサービスです。各銘柄別の、20年単位での

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 経営効率分析指標

の推移をグラフで表示することが出来ます。しかも、そのデータをそのままブログ上に貼り付けることが出来ます。サンプルとして角川さんのグラフを並べていくとこんな感じですね~。

貸借対照表

http://valuationmatrix.com/companies/9477/graphs/bs?term=20

損益計算書

http://valuationmatrix.com/api/chart?tickers=9477&w=500&h=500&y=%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E9%AB%98%E5%90%88%E8%A8%88&yunit=%E7%99%BE%E4%B8%87%E5%86%86&ytype=bar&y2=%E5%96%B6%E6%A5%AD%E5%88%A9%E7%9B%8A&y2unit=%E7%99%BE%E4%B8%87%E5%86%86&term=20

 

キャッシュ・フロー計算書

http://valuationmatrix.com/companies/9477/graphs/cf?compare=&term=10

 

経営効率分析

http://valuationmatrix.com/companies/9477/graphs/roic?compare=&term=20

 

視覚的に、財務情報を見ることが出来て、中々便利でお薦めです。

GMOクリック証券

概ね、必要な情報はValuation Matrixで事足りますが、企業間の比較をしたいのであれば、GMOクリック証券もお薦めです。手数料やサービスではあまりぱっとしない印象の会社ですが、解析データの見やすさではピカイチだと思います。証券口座の開設が必要になりますが、口座開設自体は無料なので、いつも解析用として愛用しております。

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こんな感じで、企業のデータを比較してみることが出来ます。あと、なんとなくGMOクリック証券の出力結果のほうがデザインが綺麗で見やすい気がするんですよね~。

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(ちなみにこちらは学研さんの貸借対照表)

Ullet

比較についていうと、このサイトも中々優秀ですね。例えば、東芝と日立と三菱電機を比較してみるとこんな感じ。

他社比較 東芝と日立製作所と三菱電機を比較|Ullet(ユーレット)

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できれば、グラフの軸は揃えておいて欲しいところですが、ひと目で金額の推移が分かっていいですね。ちなみに、お給料は日立が良さそうです(笑)

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法人企業統計年報

最後に、分析に役立つ統計データも触れていきたいかなあと思います。まずは、法人企業統計年報。四半期・年度単位に発表されます。業種別に、自己資本比率などの統計情報が掲載されていますので、『こんなもんかなー』と比較分析するのに役立ちます。

EDIUNET業種平均

ここ最近、更新が止まっているのが残念ですが、業種別の細かいデータ分析を見たいのであれば、このサイトもお薦めです。業種別の指標の平均値や、業種内でのランキングを見ることが出来ます。

まあ、色々なデータが見ることが出来て中々面白いのですが、それぞれの指標の意味はまた後日説明していきましょう。

ではでは、今日はこの辺で。