こんにちは、らくからちゃです。
なんだか、こちらの記事をきっかけとして、色んな方から『長時間労働あるある』が出ているみたいですね。
ちょっと私も鎖自慢をさせていただくと、先々週の土曜日から元気に連勤中ですヽ(=´▽`=)ノしかも何故か、今週は今日(金)・明日(土)と泊まり込みの研修です。ウエーイ!
まあ色々と私が未熟だったところに不運な事故が立て込んでしまい、何だか素敵な状況になってしまったのが発端ですが、流石にずっと働きっぱなしだと何が何だかよく分からなくなってきますね(まだブログ書いてる余裕ある分マシな方だと思いますが・・・)
それはさておき、いつもの改札を出て階段を登ろうとしていたら、こんな物がはられていました。
皆さん、10月は年次有給休暇取得促進月間です。社畜労働をしてる場合では有りません。清く正しく美しい国民であれば、仕事と生活の調和のために、『プラスワン休暇』で連続休暇を実現せねばなりません。
ところで皆さん『有給』取れてますか?厚生労働省の調査結果を見てみると、直近(2011年)の結果で、平均年間有給休暇付与日数は年々増加し、現在は17.9日となっている反面、有給取得日数は(若干ではありますが)1995年をピークに下落傾向に入り、8.6日。取得率でいうと、50%を割り込み49.3%となっております。
(出典:年次有給休暇の取得率等の推移)
まあ、皆さん100時間とか300時間とか残業しているようですので、有給なんて取れないですよね?
さて、以前から何度かネタにさせて頂いている、わたしの友人が役員を勤めている会社さん(あるシステム屋さんが平均残業時間一桁を実現した方法 - ゆとりずむ)ですが、残業時間が平均1桁ならば、有給休暇の取得率はどうなっているのかというと、『人にもよるけど、だいたい8割から9割くらいかな~』とのことでした。
まあそりゃ、残業が少ないような環境だしそりゃそうなるよね、と単純に思っていたのですが、有給の取得率向上にも、もうひと仕掛けあったみたいで、聞いてて『面白いな~』と思ったので、特定されない範囲でちょろっと書かせて頂きたいと思いますね。
働けど働けど猶わが仕事楽にならざり
このお話は、以前取り上げた『家族揃って晩ごはん』より少し前のころのお話。合併によって、社員数は1年もたたないうちに倍になり、会社としてはイケイケドンドンの状態になる一方、経営層の目が中々末端まで届きにくくなる頃でした。
企業規模の増加を上回るペースで案件が増えていき、年中フル稼働状態。その一方で、現場では長時間労働が常態化する一方でした。そうするとやっぱり、こういった問題が出てきてしまうんですね。
月100時間もの残業を強いられる状況では、もう個人の努力でなんとかならないレベルで作業量が多いのです。となると、どれだけ頑張ったところで定時に帰るなんて無理。頑張っても頑張らなくても、どうせ終電まで仕事しないといけないんです。こんなマインドセットではまともに仕事なんかする気になりません。さらに、ふつうに毎日長時間労働ですから、蓄積した疲労がさらに能率を下げていきます。
ということで、時間あたりの生産性は極端に落ち、いっこうに残業が減らなくなるという悪循環に陥るのです。
正直、みんな『諦め』の境地ですね。みんな、『とりあえず今日をのり切ろう。乗り切ったところでどうなるか・・・』そんな心理状態の中、どんどん現場が疲弊していきます。そんな中、社長がいきなりこんのことを言い始めたそうです。
くじ引きであたった人には休みを取ってもらう
何故みんな休まないのか
仕組みはこんな感じ
- 有給残日数・直近残業時間をベースに『働き過ぎ得点表』を作る
- その得点をベースとしてランダムに社員を複数名指名。指名された社員は特別休暇が付与され、翌週のうちに1日は休みを取らなければならない。
- 実施のタイミングはランダムで、誰が選ばれたのかは公表されない。通常の有給と同様に申請すれば、自動的に特別休暇に切り替わる。
だいたい、運用としては一ヶ月に2人か3人かくらいのペースで行っていたそうですが、これにあたると有給を消費せずに休みが一日増えます。しかも、忙しくて大変な時ですから、そりゃあもう当たった人は大喜び・・・とはならなかった。
現場のマネージャーが『この糞忙しい時に何言うとるねん』と激怒するのはまだしも、当たった本人ですら『休めと言われても納期に間に合わへんやろアホが』と完全にありがた迷惑状態。そもそも、現場の働き方からして変える必要がありました。
その為、まず社長が行ったのは、現場に乗り込んでの作業の棚卸し。面白い話はいっぱいあったのですが、いろいろと話を聞いていて、特に『ほんまそれ』と思ったのが、
人間働き過ぎるとアホになる。
アホの考えはだいたい休むに似たり。
問題を、頭ではなく時間で解決しようとする。
それでその場は乗りきれても、結局余計アホになる。
という話。だいたい、スケジュールが逼迫してくると、『これ、最初は必要な機能だったけど、新しく作った別の機能で代わりになるんじゃないか?辞めといたほうが、将来的な保守性としてもいいんじゃないか?』みたいなことに気がついたとしても、『もう色々調整するのも面倒だし、作ったところで害はないんだからやっちゃえ』と。特に、業務の集中するマネージャーのところでそういった非効率が生産されていました。
無駄を徹底的に洗い出していった結果、特に無駄が多かったのが『打ち合わせ』。打ち合わせに行けば、事前準備も必要だし、移動時間もかかるし、議事録を残したりだの、なんだかんだで大きく時間を取られます。そして、『お客さんとの約束』で時間が拘束されるため、『有給取りたい』となっても、『打ち合わせの日程ずらすの面倒くさいなあ』となると、中々休めなくなります。
まずは、一回の打ち合わせで済ませられるよう、準備のレベルをしっかりあげて回数を極力減らす。そして、参加者は極力減らす。書けば簡単ですが、忙しいとこねが中々難しい。ただ、ここをしっかりやっておかないと『打ち合わせ不足』でますます無駄に時間が浪費されていくため、重点的にフォローしていったそうです。
そうしてマネージャーの体をあけたところで行ったのは、マネージャーに各社員の働きっぷりをしっかり観察させること。忙しくなり、周囲が自分の仕事に没頭していると、聞けばすぐ済むことが聞けずに時間ロスしていたり、相談出来ずに自分ルールで進めてしまい、後で自分でしか進められない仕事にしてしまう人がどうしても出てきてしまいます。そういったコミュニケーションによるロスを減らすことをマネージャーの重要任務として指示したそうです。
これもまたそうだなあと思ったのが、
大工や職人さんたちであれば、他人の仕事を目で見て盗むことができるけど、IT屋はしっかり指導しないと難しい。レビューである程度はカバーできるけれど、 そこに至る手の動かし方をきちんと指導しないと、非効率なままになりがち。
という話。積極的に、『成果物』レベルではなく、コーディングやドキュメンテーションそのものをしっかりチェックしたところ、結構色んな所で改善点がポコポコ出てきたそうです。
大事なのは空気と文化
そんなこんなでなんとか『特別休暇』を受け入れる余地が出てきた中、社長さんが言い始めたのが『特別休暇と嘘をついて通常有給を取ることは何ら問題ない』との話。仕組み上、
- 特別休暇が当たったのは誰かわからない
- いつ発生するのかも良くわからない
- 何人そのタイミングで取るのかもわからない
ため、『俺、来週社長に休めって言われちゃってさ』と嘘をついても誰にもバレることは有りません。最後に、社長が勝手に有給残日数を一日元に戻すだけですので、本当かどうかを知っているのは、社長と本人だけです。その結果、一時期は付与された特別休暇の2倍の有給休暇が、特別休暇のふりをして取得されたそうです。
さて、有給休暇の『取得しない』理由を見ていくと、中々面白い結果となっています。
- 病気や急な用事のために残しておく必要があるから
- 休むと職場の他の人に迷惑になるから
- 仕事量が多すぎて休んでいる余裕が無いから
- 職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから
- 上司がいい顔をしないから
(出典:調査シリーズ No.85 年次有給休暇の取得に関する調査|労働政策研究・研修機構(JILPT))
まあ、1番はとにかくとして、2番以降は完全に職場側の都合ですよね。そして、ほとんどは空気と文化の問題だと思います。
この制度を取り入れる前は、誰も休みが取れないようなスケジュールが組まれていました。一応、予備バッファ日はあったものの、だいたいがスケジュールの遅れを取り戻すためのものとしてしか認識されておらず、とても休みがとれるような状況では無かったそうです。
しかし、空気・文化として『有給を取ること』が広がってくると、各マネージャーレベルでの、スケジュール自体の組み方の意識も変わり始め、比較的休みが取れやすいようなものへとなっていきました。そして、『特に理由は無くとも、たまには休んでおいたほうが何かと捗る』ということに目覚めたらしく、労働の生産性も目に見えて上がっていったそうです。
そんなこんなをしているうちに、有給の取得率自体が上昇していき、『特別休暇』を付与する最低得点を上回る人がほとんど出ない状態になりました。その為、この制度は現在では廃止されています。ただ話を聞いていると、最初に『有給を取るという空気・文化』を作ったというところでは、かなり大きな効果があったんじゃないかなあと思うんですよね。
つくづく思うのは、働き方って『空気』と『文化』に依存するところが大きいですよね。他社さんでも、高い生産性を持っている会社さんを見ていると、だいたい経営者の思想が末端まできちんと広がっている。それって、経営者・労働者のどちらかが特別優秀だったというよりも、社内全体として、方向性についてしっかりコミュニケーションが取れているかどうかが重要なんじゃないのかなあと思う今日このごろです。
でも、働き過ぎ・働かせ過ぎになってしまうと、そういったことも考える余裕がなくなりますから、誰かが最初の一歩を踏み出す必要がある。それが出来るのは、ちゃんとした経営者じゃないのかなあと思う次第であります。
ではでは、今日はこの辺で。