ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

超優良財務なのに超割安銘柄ベスト50

こんにちは、らくからちゃです。

先週は、大雨のひどい週でした。鬼怒川、渋井川と大規模な氾濫もあったようですが、皆様如何お過ごしでしょうか?一方の株式市場には、久々の恵みの雨が降りました。

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日経平均は、一時21年ぶりの上げ幅となる1,300円超を記録するなど、どこかに逃げ込んでいた資金が堤防が決壊したかのように流れこみ、お祭り騒ぎとなりました。

さて、今回もご紹介させて頂いていた銘柄の状況の確認から振り返ってみましょう。なお、紹介させて頂いている銘柄は下記の通りです。

紹介銘柄結果振返り

さて、今週の結果は下記のとおりとなりました。

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8/24にご紹介した『順張り銘柄』シリーズは-0.47%と微減。内訳を見てみると、文教堂(9978)バブルの崩壊がの影響が大きかったようですね。一方で、電算システム(3630)はとどまるところを知らぬ勢いで伸びまくり。1月立たないうちに、株価が3割増しになりました。他にも、『伸びる銘柄は伸びる』『伸びない銘柄は伸びない』と、比較的『勝ち組』『負け組』がはっきり分かれてきたように思われます。やはり、財務内容を見ないで行う投資の限界がここいらにありそうですね。

8/30にご紹介した『逆張り銘柄』シリーズは6.70%と、やっと反発。中身を見ていると、東プレ(5975)や日本エスコン(8892)など、一週間で20%近い伸びを見せる銘柄も出てきました。結局、タイミングとしては『もう少し待ったほうが良かった』ということになるのかなと思います。どこが『底』なのか見極めるのが難しい、逆張りの難しさを示してくれた結果じゃないのかな、と思います。

乱高下に負けない銘柄の条件

こうも乱高下が激しいと、どんなに市場が荒れても利益を出していくのは難しいように思われます。短期的に見れば、市場は色々な思惑で前後してしまいます。しかし、マネーゲームに巻き込まれず、しっかりとした成長性の高い銘柄をホールドしていけば、いずれ良い結果が得られるんじゃないのかなあと思う今日このごろです。

そこで、そろそろ『財務諸表』を元にした分析についてお話してみたいと思います。さて、『財務諸表』を元にした分析と一言にいっても、大きく分けて2つの分析手法があります。

  • 安全性の分析
  • 成長性の分析

安全性の分析とは、企業の投資や借金の状態を分析して、単純に言えば『潰れないのか?』を分析する方法です。成長性の分析は、売上や利益の推移を分析して、『儲かっているのか?』を分析していく手法です。こんな株価が乱高下するご時世ですので、今日は『安全性の分析』について、少しお話したいと思います。

ところで質問です。会社が潰れる、ってどういう時に起こるかお分かりですか?それは、『お金がなくなった時』です。例え、利益が出ていても、お金が底をつけば会社は倒産します。逆に言えば、お金さえあれば会社は倒産しません。その辺の会計のからくりについては、下記にまとめてみたので、よろしければ是非。

会計の世界では、『利益は意見、キャッシュは現実』という格言があります。数字を操作しやすい『利益』ではなく、通帳に乗っている数字しか計上できず、ごまかしの効かない『現金』のほうが、より会社の実態を表すことが出来ます。

投資の世界では、『PBR』という言葉がありますが、これは『総資産-総負債÷時価総額』で求められますが、資産の額なんて、いくらでも調整ができてしまうので、そこまであてには出来ません。

とにかく現金が重要

というわけで今回は、『たくさん現金を持っているにもかかわらず何故か株価が安い』銘柄についてまとめてみたいと思います。銘柄によっては、『持っている現金の量>時価総額』なんて銘柄もありました。これは、上手に投資が出来ていない会社であり、

  • 大規模な投資
  • 配当金の増加/自社株買い
  • ファンドからの買収による値上がり

が期待できる銘柄でもあります。まずは今回のスクリーニング条件についてご説明しましょう。今回は、kabu.com証券さんのkabuナビで、以下の条件に合致する銘柄を探してみました。

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当座比率が300%以上

当座比率とは、(流動資産 - 棚卸資産)÷流動負債で得られる比率です。これは、現金や売掛金など、すぐにお金に変わる資産の中から、(売れ残るかもしれない)在庫の金額を除外し、短期で返さなければいけない借金の何倍になっているのかを示した比率です。

短期的な支払い余力を見るために使う指標ですが、高ければ高いほど手持ちの現金の余裕が多いことを意味します。

PBRが0.8倍以下

PBRは、全株式の時価評価額を総資産-総負債で得られた純資産で割って得られる比率です。つまりこの数値が低いということは、自社の純資産が低く評価されているということであり、『お買い得』な銘柄であると言えます。

自己資本比率が80%以上

自己資本比率とは、『総資産』の何%が借金無しに保有されているものかを示した値です。これで、流動負債+固定負債の比率が得られますので、この値と当座比率を合わせて使えば、『現金の多い銘柄』をある程度予想することが出来ます。

PCFRが12倍以下

PCFRは、企業が稼ぐキャッシュを時価総額で割って得られる値です。例えば、毎年10万円の現金収入のある株を、100万円で買ったとしましょう。そうすると、10年間保有すれば出した金額とおなじになります。PCFRとは、乱暴な言い方をすると、『買った株が何年間で元が取れるのか?』を示した値になります。

時価総額が16億円以上

特に深い意味は有りませんが、50銘柄に調整するために設定致しました。

次に、これらで取得できた銘柄を元に

  • 現金÷時価総額
  • 当座資産(流動資産-流動負債-在庫)÷時価総額

で得られた『現金時価総額倍率』『当座資産時価総額倍率』をそれぞれ順位を取り、小さい方を自分の順位とし、更に並び替えたものを元にランキングを作成致しました。

では、順番に見ていきましょう!

10位:中部鋼鈑(5461) 現金等倍率:41.15% 当座資産倍率:118.37%

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http://valuationmatrix.com/companies/5461/graphs/bs?term=3

名古屋の厚板屋さん。国内最大級の電炉を持っている模様。現金だけで見ると余り多くありませんが、売上債権も加味してあげると、かなーり余裕があります。また、株価も近年低迷しており、ほぼ当座資産だけで電炉他がおまけでついてくる株価。

ここ最近、業界再編の流れも来ていますので、割安銘柄としてTOBが入ってもおかしくないんじゃないのかなあと思います。あと、名証銘柄なので放置されていたのかも・・・という感じもしますね。

9位:中央紙器工業(3952) 現金等倍率:105.43% 当座資産倍率:121.13%

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http://valuationmatrix.com/companies/3952/graphs/bs?term=3

トヨタ系の自動車部品やダンボールを作っている会社。色々と現在試行錯誤を重ねながら業務改善に挑戦中の模様。というと、儲かってないのかな〜??と思ったらどっこい、お金が余って余って仕方ないようにしか見えない財務諸表。売上もしっかり伸びており、自動車関連にもかかわらず株価が振るわないのは『名証二部』というマイナー銘柄故か。余りまくっている現金を株主還元に回したら、一気に沸騰してもおかしくない。

8位:NKKスイッチズ(6943) 現金等倍率:106.49% 当座資産倍率:103.54%

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http://valuationmatrix.com/companies/6943/graphs/bs?term=3

スイッチ屋さん。スイッチってなんやねん、と思ってはいけません。産業の基盤の一つですよ。フィリピンに子会社を立てて生産拠点を増やすそうとしている割には、お金が余って余って仕方ないように見える。はっきりいって、今の金額は買いどき過ぎるのでは?

7位:ジーダット(3841) 現金等倍率:106.58% 当座資産倍率:107.23%

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http://valuationmatrix.com/companies/3841/graphs/bs?term=3

CADのソフトなんかを作っている模様。ソフトウェア屋ということもあり、大規模な投資は必要ないのはわかるが、ほぼ現金しか資産を持っていない。主な取引先が、シャープ・ルネサスというのがアイタタタという感じがしなくもないが、とにかく現金は余っている。現金さえあれば生きていける。現金があるのならば買ってよし(しつこい?)

6位:共和工業所(5971) 現金等倍率:58.55% 当座資産倍率:122.50%

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http://valuationmatrix.com/companies/5971/graphs/bs?term=3

六角ボルトなどの建設用のボルトを作っているらしい。ここも、コマツ向けが主力であり、中国がくしゃみをすれば、あわせて入院することになるリスクはついてくる。ただ、財務基盤は強固であり、攻めるにせよ逃げるにせよ選択肢は多い。大企業を相手にしているので、貸し倒れリスクも低いものと考えられ、当座資産=現金と評価することも出来るのかも。

5位:精工技研(6834) 現金等倍率:109.80% 当座資産倍率:121.92%

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http://valuationmatrix.com/companies/6834/graphs/bs?term=3

光通信用部品やディスクなどなどの会社。それ、大丈夫なのか?と思ったあなたは大正解。ここ暫くずーっと赤字を続けてきたが、光学技術を活かしたレンズ関連の分野で大幅増収・黒字転換を果たす。

ここまで頑張ってこれたのも、きっと『現ナマをたっぷり』もっていたからじゃないのかなあと思う。現金の保有額から見ても、今の株価は明らかに割安。ここからの成長にも期待。

4位:KG情報(2408) 現金等倍率:112.47% 当座資産倍率:101.69%

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http://valuationmatrix.com/companies/2408/graphs/bs?term=3

中四国、九州で求人誌などを発行するいわゆる情報媒体屋さん。利益にはでっこみひっこみがあるものの、とにかく一貫して無形固定資産を減らし、現金等を積み上げてきた。サイクルとしては、かなりきれいな財務になっている。

業界覇者のリクルートが、次の攻勢をしかけてくる可能性も否めないが、今のところ安定して稼げている様子。これだけ現金を保持し株価も安いのであれば、金に物を言わせて一気にTOBを仕掛けてくる可能性もあり。

3位:シャルレ(9885) 現金等倍率:96.55% 当座資産倍率:155.13%

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http://valuationmatrix.com/companies/9885/graphs/bs?term=3

 

50代から60代の女性に向けてインナーやアウター、化粧品を訪問販売しているらしい。なんというか『ザ斜陽産業』という感じがしなくもない。売上高は御多分にもれずきれいな右肩下がり。でもなー、お金持ってるんだよな〜。

もはや、世のため人のためにも現金全部を株主にかえして解散したほうがいいのかもしれない。そう考えると、売掛金がどこまで回収できるかだけど、全部回収できたら時価総額の1.5倍になる皮算用が出来る。回収できなくとも、とんとんくらいにはなるので、悪い選択肢では無いのかも。

2位:日本アンテナ(6930) 現金等倍率:121.87% 当座資産倍率:160.78%

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http://valuationmatrix.com/companies/6930/graphs/bs?term=3

アンテナを作っているらしい。アンテナ〜?と思われるのもごもっともかもしれないが、防災用などなどの需要はあるらしい。また、売上は樹歌う着工に依存するためとにかく家が売れてくれないと困るらしい。

まさに、『ザ金余り』といったご様子の会社。当座資産全部換金できたら、時価総額の1.6倍になるんだぜ?凄くね?もうこれだけ潤沢に金が余っているのなら、商売なんて何していても関係ない気がする。

1位:旭化学工業(7928) 現金等倍率:124.22% 当座資産倍率:125.34%

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http://valuationmatrix.com/companies/7928/graphs/bs?term=3 

工業用の樹脂だのなんだのを作っているらしい。電動ドリルの本体部分の握るところとか、っていったらいいのかな?国内では需要が減少しているものの、自動車用が伸びているらしい。売上は年々伸びているのに、営業利益はどんどん下がっていく不思議な会社。

正直、どんだけ現預金貯めこむねんという感じがしなくもない。いい加減株主が怒る前に、経営の立て直しが必要だと思うが、株主のご機嫌を取るために自社株買いに打って出るかもしれない。

まとめ

ということで、お金が余って余って仕方がない会社のまとめでした。だいたい見ていると、経営効率が良く、借金をする必要はないのだけど、大企業の動向に依存するため、あまり積極的な投資もできず手許現金が増えていった会社って感じのところが多いのかなあと思います。

あともう一つ。今上げた10社に共通する特徴って分かります?

東証一部上場企業は有りませんでした。

10位以下を見るとちらほらとは出てくるのですが、『金余りの会社』は何故か名証上場かジャスダック上場が多いんですよね。というのも、あくまで時価総額との比較ですので、過少評価されすぎているのかもしれません。

株高は、個人投資家からの資金流入ももたらしましたが、そういった資金って日経225ETFなど目立つところに回ってしまい、むしろジャスダックや名証の優良企業はスルーされている感があります。そういった小型株を狙っていくのも面白いかもしれません。なお、50位までは下記のようになりました。

 

順位証券コード市場会社名現金等当座資産時価総額現金等倍率当座資産倍率
1 7928 JQS 旭化学工業 2081 2099 1675 124% 125%
2 6930 JQS 日本アンテナ 11032 14554 9052 122% 161%
3 9885 東二 シャルレ 9139 14685 9466 97% 155%
4 2408 JQS KG情報 4826 4364 4291 112% 102%
5 6834 JQS 精工技研 9429 10469 8587 110% 122%
6 5971 JQS 共和工業所 2628 5498 4488 59% 122%
7 3841 JQS ジーダット 1918 1930 1800 107% 107%
8 6943 JQS NKKスイッチズ 6200 6028 5822 106% 104%
9 3952 名二 中央紙器工業 6390 7342 6061 105% 121%
10 5461 名一 中部鋼鈑 6380 18355 15506 41% 118%
11 3426 JQS アトムリビンテック 1392 4398 3727 37% 118%
12 6459 東一 大和冷機工業 35950 32424 39926 90% 81%
13 5449 東一 大阪製鐵 2547 80869 72383 4% 112%
14 6156 JQS エーワン精密 4376 4600 5145 85% 89%
15 7559 JQS ジーエフシー 5765 8293 7627 76% 109%
16 4238 東一 ミライアル 9182 9579 10889 84% 88%
17 6896 名二 北川工業 11673 19986 18534 63% 108%
18 5983 JQS イワブチ 5307 6134 6380 83% 96%
19 3770 東一 ザッパラス 5234 5749 6443 81% 89%
20 4962 東二 互応化学工業 7193 7701 9069 79% 85%
21 6898 JQS トミタ電機 1087 1533 1495 73% 103%
22 8118 東一 キング 8143 9113 10577 77% 86%
23 7950 名二 日本デコラックス 3887 4771 5179 75% 92%
24 7925 東一 前澤化成工業 9666 16160 17400 56% 93%
25 7299 東二 フジオーゼックス 6437 9145 9869 65% 93%
26 4464 東二 ソフト99コーポレーション 12495 14173 17241 72% 82%
27 7703 東二 川澄化学工業 13895 17616 19345 72% 91%
28 6492 東二 岡野バルブ製造 1572 5961 6509 24% 92%
29 9760 東一 進学会 9104 8149 13601 67% 60%
30 7902 JQS ソノコム 2228 3141 3670 61% 86%
31 6718 東一 アイホン 12488 26696 30828 41% 87%
32 4840 JQG トライアイズ 2376 2287 4201 57% 54%
33 6485 東一 前澤給装工業 10534 14850 18813 56% 79%
34 6405 JQS 鈴茂器工 3480 3755 6345 55% 59%
35 6824 JQS 新コスモス電機 9190 11198 16945 54% 66%
36 9357 名二 名港海運 17566 24464 33006 53% 74%
37 7958 東一 天馬 28966 32202 54601 53% 59%
38 7949 東一 小松ウオール工業 10536 17358 22057 48% 79%
39 5444 東一 大和工業 96711 98251 184139 53% 53%
40 9632 東一 スバル興業 4574 8409 10941 42% 77%
41 2814 JQS 佐藤食品工業 4779 4959 9326 51% 53%
42 6966 東一 三井ハイテック 13036 20122 27561 47% 73%
43 2117 東二 日新製糖 2398 14334 20029 12% 72%
44 5344 東一 MARUWA 14225 16560 30546 47% 54%
45 3529 東一 アツギ 9538 10234 20702 46% 49%
46 6419 東一 マースエンジニアリング 15872 29672 45826 35% 65%
47 6999 東一 KOA 18619 25066 42342 44% 59%
48 2806 東二 ユタカフーズ 7029 10322 16781 42% 62%
49 7713 JQS シグマ光機 2824 3906 6835 41% 57%
50 6265 JQS 妙徳 757 1343 2444 31% 55%

是非、面白い銘柄があれば、突撃してみてください。そういや、四季報の秋版が発売されたみたいですね!色々と銘柄探しをしてみるのも楽しいですね♪

会社四季報 2015年 4集秋号

会社四季報 2015年 4集秋号

 

ではでは、今日はこのへんで

追記

今回の分析方法の詳細についてまとめてみました。

lacucaracha.hatenablog.com