ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

七夕ショック 中国株が売買停止に至るまで

こんにちは。らくからちゃです。

東京は、今日も生憎のお天気でしたが、雨の量は少なく、駅から会社まで傘をささずに行くことが出来ました。一方、株式市場は、とんでもない土砂降りになっています。

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つい、この間まで、2万1000円のラインを目指して上がり続けて来たのが、ここにきて一点急降下。7月8日の終値は639円マイナスの1万円9734円となり、このままのペースでは、一気に1万9000円すら割り込みそうな速度です。

ついこの間、ギリシャの騒動があったところでは有りますが、直ぐ戻しました。しかし、今回の件については、それなりに長期化する可能性を見せています。

さて、今回の大幅下落の直接の原因は中国です。

さて、ここまでは皆さんもう既にご存知でしょう。今回の『売買停止』は昨日の7月7日に決定されたことのようですので、勝手に『七夕ショック』と名づけてみたいと思います。

ところが、この七夕ショックに繋がる背景についての報道がほとんど見当たらないんですね。そういえば、皆さんがギリシャの動向に注目している中、ここしばらく中国の株式市場はきな臭い動きを続けてきました。

というわけで、今回は『七夕ショック』につながった、中国株式売買停止の理由と裏側について振り返ってみたいと思います。

これまでの振り返り

ここまでの動きについて、どこから説明したものやらと思っていたら、わたしの古巣、『ビジネスニュース+板』の賢者によって、分かりやすいまとめが作られていました。

418 :名刺は切らしておりまして:2015/07/08(水) 07:08:31.52 id:MtV6NrK7まとめ

中国、GDPを上げて大国に見せる為に民衆を煽った不動産バブルで固定資本形成を粉飾

北京五輪後、実態を伴わない不動産バブル崩壊

このままではGDPが落ちるので不動産に代わり、株が儲かるとテレビでバンバン煽る

国内で株ブームに、年収の数十倍の借金で株を買う人間が増える

上海A(元建ての中国人専用市場)の株価が異常上昇

上海Aの株価が香港・上海B(ドル建ての外国人投資家向け市場)に伝染

実態を伴わないので徐々に株価が落ちるが、米国債を売って株価を買い支える

米国債を勝手に売ったのでFRB(アメリカ連邦準備 制度理事会)に指摘され怒られる

海外投資家に外貨準備金が無いことを見ぬかれ中国株式市場が暴落

年金や様々な金を2.4兆円以上使用して買い支えるも5日で390兆円を失う

中国政府から「株を買っても、絶対売るな」と命令が下る

更に中国株を売ってる犯人探しするも、暴落止まらず

金融のルールを無視して1000社の売り買いを停止する

借金をして株を購入していた中国人個人投資家達が株を売れず

金を借りた金融期間に利息を返せなくなる中国人多発の危機  ←いまここ

http://anago.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1436238079/ より

そもそものきっかけは、中国での不動産バブルに陰りが見えてきたところからでした。

中国は、共産党による一党独裁という大変変わった政治体制をとっています。中国は古来より、官僚制の発達した国でした。 日本人が竪穴式住居に住んでいた頃から強大な王朝(周王朝くらいかな?)のもとに、大規模な開発事業や遠征を行い、多数の人口を持つ都市まで築きあげてきました。

この体制は、元や清など、度々諸外国からの支配を受ける中も継続され、いまもまた基本的な考え方は変わっていません。それは、『全部任せるから結果を出せ』ということです。

中国の王朝は、臣民の自由を大きく制限出来る代わりに、臣民を満足させなければなりません。『易姓革命』と言いますが、『君主といえど、悪政を行うのであれば、暴力によってでも取って代わられて然るべき』という考え方です。この辺、『まあまったりやろうよ』としてきた我が国の政治体制とは対照的ですね。

話が随分と逸れましたが、中国の政治体制を維持するためには、何よりも国民の支持が必要です。国民の支持は、『豊かさの提供』によってのみ得られます。具体的には、『失業が存在しないこと』です。共産主義体制のはずなのに、何故か貧富の格差の大きい中国経済において、完全雇用を実現するには、年率で7%から8%の成長が必要であると言われています。

不動産バブルとその終焉

共産主義体制のはずなのに、何故か貧富の格差の大きい中国経済(大事なことなので2度いいました)は、長らく内需の低迷が続いてきました。つまり、『ものが買えない→ものが売れない→仕事がない』ということですね。

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((1)拡大を続ける中国経済

というわけで、足らない需要を埋めるため、『みんなでお家を沢山建てよう!』とあの手この手を行います。上図の固定資本形成は、『将来にわたって使うものへの支出』、つまり機械とか住宅とか工場とかへの支出ですね。

かねがね、中国の住宅市場は『バブル』だと言われ続けてきました。日本の80年代のバブル経済との決定的な違いは、日本は需要が多すぎることによって生み出されたバブルでしたが、中国は供給への融資の精査が甘すぎることによって生み出されたバブルでした。

勿論、そんな状態、長く続くはずが有りません。作りすぎて売れない状態になってしまった以上、融資は『不良資産』となります。さて、資金はどのように集められてきたのかというと、『理財商品』(何か懐かしい感じがする単語ですね)と呼ばれる、高利回りの小口の投資証券で、なんと銀行でも販売された証券を元に集められました。この『理財商品』が、ついに取り付け騒ぎを起こす事態となります。

最終的に、必死のパッチとなった当局筋によって、デフォルトは回避されます。ただ、いい加減懲りたのか、実需から乖離した住宅投資ではなく、共産主義体制のくせして(本日3度目)株式投資を煽っていくというスタンスに切り替わります。

中国 「新常態」の経済

中国 「新常態」の経済

 

祭りの後

まずは、チャートから見てみましょう。どこかの国の、スマホゲームで一発当てたかのようなチャートが、中国を代表する上海市場のA株の値動きです。

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1年で2000円から5000円へ。中々イカす感じですね。さて、長期グラフだと分かりづらいのですが、終盤にナイアガラの瀑布が見えます。この辺りをもう少し拡大してみてみると、こんなかんじですね。

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6月12日から、下げまっしぐら。何があったのかを追ってみても、結局たどり着いたのは、こんなものしか見当たりませんでした。

プルームバーグによると、大手証券会社が、この年初来高値が今年のピークになると予想したことも、売りが集中した原因のひとつとなっている。

凄いですね。この業界にいて『ぷ』ルームバーグなんてミスタイポするなんて中々怪しげな記事ですね。実際元ネタは『ブ』ルームバーグさんを探してみても良くわかりませんでしたが、豊川信用金庫事件も、女子高生の些細な会話からおきましたし、信用の崩壊なんてそんなもんかもしれません。

 さて、ここからが『必死感溢れる』心温まるストーリーになります。(財布はひえひえですが)これらは、はてなブックマーク『政治と経済』の人気エントリーからの抽出です。

 これはひどい( ゚д゚)

最後に、『虚構新聞なみ』と2階建てさんに煽られてますやん。ちなみに、ギリシャがEU・IMFに『おねだり』している金額が32兆円ですが、ここ三週間で中国経済が溶かした時価総額って、どれくらいだと思います?正解は・・・

390兆円(約12ギリシャ)

参考:中国株、3週間で390兆円消失-間違った犯人捜しに当局躍起か - Bloomberg

中国のGDPが約1120兆円くらいですので、所得の1/3に相当する資産が三週間で吹き飛んだ計算です。そりゃあかんわ。

世界史で学べ! 地政学

世界史で学べ! 地政学

 

売買停止のその後

そして中国市場の歴史がまた1ページ。現時点において、全上場市場の1/3が売買を停止するという事態に。問題は、まだ『売買停止』の状態なんですよね。現金化も出来なければ、正確な現時点での評価額も分からない状態が続けば、実体経済にもどんな影響が出るかわかりません。

ちなみに、過去長期間売買停止を行った例としては、同時多発テロ時のアメリカの例があります。あの時は、1週間の市場閉鎖を経て、NYダウは9605ドルから8883ドルまで7%近く大幅下落。中国市場もここから更に下げる要素を持っています。

ちなみに、我が国では、東日本大震災の時も、東京証券取引所は翌週月曜日から元気に営業再開。世界中から、ある種の驚嘆の視線をもって捉えられましたが、本来危機の時こそ必要な流動性を確保するためにも市場は開くべきなのです。

更に問題は、これがアメリカや日本であれば、あくまで『経済問題』として対応されます。山一證券やリーマン・ブラザーズの破綻規模なれば、若干『社会問題』化は避けられませんが、中国について言うと『政治問題』や、そこからの『外交問題』化すら起こりえます。

はっきり言って、これから何が起こるのかは、誰にも予想できません。ただひとつ言えることは、チャイナリスクにはアンテナ高くしておいたほうが良いです。

あと、最後に言わせてください。

伊藤忠の含み益を返してください(´Д⊂グスン

ではでは、今日はこのへんで