前回投稿した記事が、予想外に反応を良かったので、二匹目のドジョウを狙い一般の感覚からしたら少し分かりづらい会計の赤字についてまとめてみました。
フローの赤字とストックの赤字
赤字には、大きくわけて『フローの赤字』と『ストックの赤字』があります。
一般の感覚に直すと、フローの赤字とは、手取りが20万円なのに贅沢をして30万円使ってしまった状態ですね。一方、ストックの赤字とは、貯金が尽きて支払が出来なくなり、借金で穴埋めしているような状態がイメージに近いかと思います。
まあここまでは、家計でも企業会計でも同じような概念でしょう。ただ、企業会計で少し違うのは、『純資産』の概念があることです。
現金の赤字と純資産の赤字
企業会計では、現金の流出・流入ではなく、収益・費用という少しバーチャルな概念で考えます。(詳しくは、過去に記載した下記まとめが分かりやすいかもです)
例えば、次の例を考えてみましょう。
- 事業を始めるにあたって、300万円の機械を購入しました。この機械は3年間は動く予定です。
- 製品がウケ、初年度は150万円。2年目は失速し50万円。3年目は使い勝手が評価され、400万円の売上になりました。
- 便宜上、経費等は一切かからなかったことにします。また、売上は全て現金で即日入金されたものとします。
これを、現金のフローで考えると・・・
- 初年度は、300万円支払ったが、150万円しか売上がなかったので150万円の赤字。
- 2年目は、一切支出が無いので、入ってきた50万円が黒字。
- 3年目も、一切支出が無いので、入ってきた400万円が黒字。
- 全部合わせると300万円の黒字。
となります。これはこれで真実なのですが、この金額を『利益』と読んでしまうと、大規模な支出を伴う投資をした年は必ず『赤字』になってしまい、『経営の成績』を正しく伝えることができなくなってしまいますよね。その為、会計では実際の現金の動きとは別に、支出をバーチャル化(この例だと、3年間均等払いにした)して、利益を計算します。そうすると、
- 初年度は売上が好調。50万円の黒字。
- 2年目は残念ながらの不調。機械の均等払い分の負担があるため50万円の赤字。
- 3年目は絶好調。300万円の黒字。
まとめるとこんな感じでしょうか。
4つの赤字の『ヤバさ』
ここで一度整理すると、
- 赤字には、『フローの赤字』と『ストックの赤字』がある
- また、『現金の赤字』と『純資産の赤字』もある
ということになります。それぞれ、2*2の組み合わせで、ざっくり4パターンの赤字があります。
そのヤバさ加減を順番にならべると、
①現金のフローの赤字
これは、キャッシュ・フローのマイナスという状態になります。大規模な投資を行うと当然マイナスになります。あまり好ましく有りませんが、入金や出金のタイミングによっても、マイナスになりえます(営業キャッシュフローのマイナス)。まあ、これだけだと本質的に利益が出ていないとまでは断言出来ないので、 『避けられるなら避けたいけど、別にそういうこともあるんじゃない?』というレベルです。
②純資産のフローの赤字
こうなるとかなり良くない状態です。細かく分けると、純利益、経常利益、営業利益、売上利益等々、レベル感はありますが、『色々タイミングを調整すべき事項』は全て調整した上での赤字ですので、企業の収益性そのものが下がっている状態です。
ただ、やり方を変えて、儲かる方法を見つければいいのかなあといったレベルです。
③純資産のストックの赤字
剰余金がすっからかんになりマイナスな状態を『欠損金を計上』、更に資本金を足してもマイナスな状態を『債務超過』と呼びます。
『資産<負債』の状態なので、ここまでくれば、首の皮一枚の状態です。ただ、ここまで来てもまだ事業を継続することが出来ます。いくら負債が大量にあっても、銀行が『まだ復活の見込みがある』と判断し、返済期限の延長を認めてくれれば、生き残るチャンスはあります。
④現金のストックの赤字
期日までにお金が払えなくなり、かつ『これはもうダメだな』となり、返済期限の延長も認められなくなった状態です。ここまでいけば、銀行は少しでも貸付金を改修するために、差し押さえに動きに行きます。会社は、民事再生やら会社更生やらの手続きに入り、いわゆる『倒産』の状態になります。
シャープってどんな感じなの?
じゃあ最後に、シャープの現在の状況はどうなんでしょうか?最新の情報だと『大変厳しい』と言わざるを得ない状況です。
純資産が2500億円しか無いところで、2900億円まで赤字を出せば、純資産のストックは完全に底を付きます。当然、そんな状況なので、銀行預金もすっからかんで、銀行がなんとかならんか頭を抱えているような状態です。
結局、銀行が『復活の見込み』と『さっさと損切り』を両天秤にかけ、どうなるかを判断した上で、産業再生機構入りするかどうか・・・というところでしょうか。
この規模の会社を潰すのはそうそう簡単な話では有りませんが、過去にエルピーダメモリという国策会社が儚くも消え去った歴史もあります。
これからもまだ、予断を許さない状況には間違いないでしょう。