ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

姻族関係終了届は嫁姑問題の切り札になるか?


こんにちは、らくからちゃです。

先日、妻と朝ごはんを食べながらテレビを見ていると『姻族関係終了届』なるものが注目を浴びていると放送されていました。『縁切り届』なんて別名もあるそうですが、どういうものかというと『夫・妻が死亡した後、義実家との親族関係を解消することを意思表示する届け出』だそうです。

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図にするとこんな感じでしょうか。色々と話を聞きながら、気になったポイントが何点かありましたので、簡単に調べた結果をまとめて見たいと思います。

姻族とは何か

 今回のテーマである『姻族』についてその意味を確認してみましょう。

普段何気なく使っている『親族』という言葉ですが、日本の法律上では血族で六親等、姻族で三親等までがその範囲に含まれます。

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(出典:親族 - Wikipedia)

◯親等は、親子関係を一本の線として考えて行きます。『血族』とは、親子の関係で少なからずとも血の繋がりのある相手。『姻族』とは、直接血の繋がりは無いものの、結婚関係で繋がっている範囲の相手を指します。

図で見るとその範囲は案外広く、血族であればまたいとこまで範囲に含まれ、姻族については、配偶者の兄弟の子供(甥姪)や、配偶者の父母の兄弟(叔父叔母)まで含まれます。

姻族関係終了届の効力

この関係は原則として、配偶者の死後も継続されます。その為、配偶者の死後も、義両親は親族としての関係が継続されることになります。例えば民法にはこんな規定があります。

第877条
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2.家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3.前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

 これを解読すると『親』『祖父母』『兄弟』『子』『孫』に扶養の義務があります。しかし家庭裁判所の判断によって『子の配偶者』『甥姪』『叔父叔母』などにも扶養義務が生じる可能性があります。

要するに、配偶者の死後も義両親の生活の面倒を押し付けれる可能性があるというかとです。姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、親族の関係を解消することが出来る書類ですが、舅や姑の許可などは一切関係なく、本人の希望によって行うことが可能です。

例えば、『親族』のままですと、義両親が生活保護の申請を行った場合、『お嫁さんのところに同居させて貰えば?』などと判断される可能性があります。民法にはは下記のような規定もあります。

第728条
1.姻族関係は、離婚によって終了する。
2.夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

この規定にある『姻族関係を終了させる意思表示』を行う書類が『姻族関係終了届』です。最近では、

  • 義両親の介護の面倒を見たくない
  • 義両親の金遣いが荒く将来的に巻き込まれたくない
  • 同じ墓に入るつもりがないことの意思表示として使いたい

などなどの理由のため、利用されるケースが増えているようです。

『嫁』の立場はアンフェアすぎる

結婚が家と家の間のものであった時代は、もう随分昔の話になったはずですが、これを出さない限り、『嫁』は『義両親』の親族であり続けます。ただ夫が死んだからといって、いきなり親族=扶養関係を解消されて放り投げ出されても困りますので、あくまで『本人からの申告に基づく』ことをベースにしたのかもしれません。

いずれにせよ、自ら申告することによって、法的にも『義両親の面倒を見る義務』からは開放されます。逆に申告しないと、民法にはこんな規定があります。

第730条
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

 義両親と同居しているのであれば、扶養義務が発生しますが、姻族関係がなくなっているのであればその義務も"法的には"生じません。

おかしいよなあと思うのが『嫁』には法定相続人となる権利がありません。ですので、長男の嫁が、長男の死後に一生懸命義両親の介護に尽くしたとしても、遺言書に明記しない限り相続権はなく、まるで無関心だった長女・次男に遺産が渡る可能性もあります。

いくら姻族関係終了届を出したところで、不動産の権利を握られてしまっていては、二進も三進も行かなくなってしまうことが考えられます。これが何かの役にたつと考えるよりも、まずは不動産関係の権利をきちんとしておくことから始めるべきなのかもしれません。

また姻族関係終了届を出したところで、子供(義両親からみた孫)は変わらず直系親族です。特に、相続において不利になることはありませんが、逆に言えば扶養義務の範囲内にありますので、子供がいる場合は下手に刺激をしないほうが結果的に良いのかもしれませんね。

家制度は無くすことが出来るのか?

明治以降に日本の民法典の中心にあったと言われる『家制度』は、形式的には法律上から姿を消しているものの、介護などの実態ではまだまだ『長男の嫁』に大きな負担が降り注いでいる状況です。

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(出典:第1-4-8図 要介護者等から見た主な介護者の続柄 | 内閣府男女共同参画局)

同居の介護者の担い手は、女性の比率のほうが圧倒的に高く、『配偶者』や『子』であればまだしも『子の配偶者』が大きな割合を占めています。更に問題は、『介護離職』という深刻な問題にもつながっています。

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(出典:増える要介護者と介護する人の離職)

家族の介護のために離職する人について、男女に分けてデータを取れば、圧倒的に女性の方が『介護のために辞めている』ことがわかります。所得水準の違いがあるため、家計全体の収入を考えた結果でもあると思いますが、女性が社会から切り離されていく姿を表わしている図のようにも見えます。

年金制度や介護保険制度は、家族の単位を夫婦とその子供の間に限定するために、大いに役立ってきました。何よりも経済的に自立していることが、女性を隷属的な地位に貶めることを防ぐことに役立ちます。

しかしながら近年の『子育て世帯』の所得の減少や、待機児童の増加は、祖父母の支援なくして育児が出来ない環境へと繋がり、そのための見返りとして介護などの家庭内負担が求められる可能性があります。

子育て世帯が経済的にきちんと独立出来る環境を作り、実家・義実家の支援を可能な限り少なく子育てが出来る環境を作ることが、少子化対策にもかなり効果があるんじゃないのかなあ、なんて思う今日このごろです。

ではでは、今日はこのへんで。