ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

24時間365日対応しろ?『かかりつけ薬剤師』制度はやっぱり異常だよ

こんにちは、らくからちゃです。

先日、一昨年より始まった『かかりつけ薬剤師』という制度について、さすがにこりゃ無理でしょうと思い、下記記事を書かせていただきました。

www.yutorism.jp

 言いたいことは沢山あるのですが、特にエグいのがこの部分

⑤ 担当患者に対して以下の業務を実施すること。
ア 薬剤服用歴管理指導料に係る業務
イ 患者が受診している全ての保険医療機関、服用薬等の情報を把握
ウ 担当患者から24時間相談に応じる体制をとり、患者に開局時間外の連絡先を伝え、勤務表を交付(やむを得ない場合は当該薬局の別の薬剤師でも可)
エ 調剤後も患者の服薬状況、指導等の内容を処方医に情報提供し、必要に応じて処方提案
オ 必要に応じて患家を訪問して服用薬の整理等を実施

保険調剤の理解のために

 これ、引用元のドメインでお分かり頂けるかと思いますが、厚生労働省の出している公的な資料です。ただね、常識的に考えてあり得んでしょ~。いくら有資格職であっても、いち労働者に過ぎないわけですよ。門外漢のわたしが見落としている箇所があって、現場の運用は何か良い感じになってるんですよねー。

そんなふうに考えていた時期が

まあ、出るわ出るわ現場からの声

とある薬剤師 さん

やっとわかってくださる方にお会いできた!
感激です。
いくらやりがいのある仕事、大切な仕事といっても、真面目にやろうとすると、一労働者が対応できる範囲をこえています。私もチームで責任持って仕事できる環境を望んでいます。

あるぽん さん

薬剤師会の会営薬局に勤務しています。国が求める模範となる薬剤師として、かかりつけを算定するよう業務命令が出され、広域病院の門前の立地から要件を満たさない(調剤報酬の要件は満たしませんが、頼って下さる患者さんはいます)と算定しなかったら、懲戒処分を受けました。個人ではなく事務員も含め全員です。この制度ができる以前から対人業務に力を入れてきていましたが、その時には無駄なことと言われ、お金になると思ったら1件でもいいから算定しろ。「模範となるよう」ときれいごとを言われてもついていけません。こんなことを続けたら「薬剤師」自体いらないといわれるようになるでしょうね。処分に対し異議申立していますが、取り消されなければ、いずれ辞めることになるでしょう。一緒に頑張っているスタッフと患者さんの信頼が支えですが、心が折れています。

某薬剤師 さん

まさにその通りですね。これはかかりつけ薬剤師制度ができてから制度に大反対でした。理由はおっしゃってる通り、薬剤師の24時間対応という真に休みが無い毎日。上記でもおっしゃってましたが24時間対応は別にかかりつけの患者様以外は行ってはいけないという訳ではありません。誰でも対応します。かかりつけとそうではない患者様の違いを厚生労働省は色々言っていますが、どれもグレーで根本的な違いは説明できていない。更に投薬にその人だけの負担が増え生産性だけが落ちる。少ない人数の店舗ならまだしも多人数の店舗だと負担割合が相当になります。しかも、かかりつけ患者様を獲得しようが会社はそれ分の給料を払ってはくれません「加算が色々と下げられているのでかかりつけ加算で補うしか無い」。世間が生産性の向上や労働改革を推し進めているのにまさに真逆。単に薬剤師が疲弊する制度です。自分は当初病気で苦しむ人を助けたい。その思いで薬剤師になりましたが、この制度は本当に患者さんの為になっているのか?はなはな疑問です。根本的におかしな制度です。患者さんの為の制度ではありません。もっと直接的に患者さんの為になる制度が必要です。こんなかかりつけ薬剤師制度なんて大反対です。

さら さん

よくぞ、言ってくれました。
現場の薬剤師も思います。かかりつけ、個人の薬剤師、能力に大きく違いがあります。かかりつけの数をたくさん取れば能力があるような昨今の雰囲気。かかりつけがやること、普段からやっています。そのお金の差を払う価値、どう違うのか?確かに毎回薬剤師が変わるのは嫌かもしれませんが、違う薬剤師に投薬してもらったら、別の考えが聞けるかもしれません。みんなが一律同じ能力の薬剤師と言う前提、現場がわかっていない。医師が24時間対応でないのに、なぜ処方権のない薬局に、それが求められるのか、現場は大変です。携帯もたされ、拘束されます。かかりつけ制度なんてなくなればいいと思います。

やるお-熟考

記事を書いた等の本人も困惑するくらいの量の声。

わたしは薬剤師でなければ、医療関係者ですらありません。こうした専門外の記事を書く以上、ある程度は想像でやるしかないわけですよ。いつも、見落としているものもきっとあるよね、くらいの感覚で書いてますんで、こうも『よくぞ言ってくれた!』みたいな声をいただくと、喜びよりもむしろ悲しみのほうが大きいんですよね。。。

 頂いた声も含め、改めて問題を整理してみましょう。

やっぱりヘンだよ『かかりつけ薬剤師』

この制度のアレなポイントをまとめると

  1. 担当者が固定されることで業務の効率性が悪化する
  2. その担当者に24時間365日の対応が求められる
  3. それで増える薬局の報酬は調剤1回20点(200円)※

ってところかなあ。

(※調剤報酬については、様々な例があるが元々50点のものが70点になるケースが多いため、20点相当が増加分として考える)

確かに、きちんと担当者が決まっていることで相談しやすかったり、話がスムーズになったりする効果はあるんだろうね。でもさあ、業務が属人化することによるデメリットはそれを上回ると思うんだよね。利用者の目からみても『担当者じゃないのでよくわかりません』なんて言われるんじゃないかと不安になるよ。

で、その人が捕まらない状態にならないように、薬局が閉まっている時間帯でも対応できるように連絡先を伝えよと。

どうせよと!?

だって個人情報にも関わる重要な情報は薬局にあるんでしょ?その他いろんな薬に関する知識も、全部個人のアタマに入りきるわけ無いじゃん。そんな資料も無い中で対応されても仕方ないじゃん。

おまけにこのサービスは、調剤1回につき200円分の加算しかない。こうした対応が出来る人材を揃えている薬局は基本ポイントが上がるらしいから、一概に『たったの200円』とは言えないと思うし、みんながみんな夜中の2時に電話してくるワケではないだろうけど、求めているものの内容から考えれば見合わない金額だよね。しかもそのうちどの程度が現場に還元されるのやら。

以前に、各職種の賃金について調べている中、6年間も大学に行く割に、薬剤師のお賃金ってあんまり高くないね・・・。と思ったことがあります。まー、パート薬剤師も含まれているのかもしれませんけど、どの程度改善されるんでしょう?www.yutorism.jp

システム屋でサポート対応をしたこと有る人ならわかると思うけどさ『なんかあったら連絡するからそれまで休んでおいて』みたいなのは休みに入らないのよ。すぐにネットワークにつながる状況下にいなきゃならないし、いつも電話がかかってこないか意識してなきゃならない。エンジニアをこうした環境下に置かないため、地道に努力を重ねてきた会社も多い。まあ、その真逆を行く政策なわけですよ。

確かに、何かあったら24時間対応してくれたほうがありがたい。でもなんかそれ、救急窓口みたいなもので良くない?そのためにはたらく人が『耐えきれない』っていって辞められちゃうほうが利用者にとっては辛いっすよ。

 命を守る人を守らないといけない

で、こうした制度が生まれた背景には、やっぱり『医薬分業をどうするめるのか?』って根本的な課題があるんでしょうね。

医師に比べ、相対的に力の弱い薬剤師が主導権を得るため『患者の日常生活に密接に連携しているのはこちらだ!』としようとしているのか、はたまた普段ブラックに働いている医師と対等に発言するために『こっちも身を削って働いてるんじゃい!』と言おうとしているのかも、なんて説もありましたね。

医療水準の向上はみんなの願いです。でもそれは、持続的に継続可能な方法でなければならない。まず何よりも、命を守る人が守られなきゃならない。そんな『一億火の玉』『竹槍特攻』みたいなことやるんじゃなくて、ちゃんと仕組みを作って対応しましょうよ。

よりよい生活・仕事のためにも声をあげようよ

この記事を書くにあたって、ちょっと困ったのが『現場の声』みたいなものが思ったほど出てこなかったんだよね。記事を書く時にも『あれ、もしかして現場は案外困ってないのかな?』と困惑はあった。でもいざ蓋を開けてみたらそうじゃなかった。もちろんコメントをくれた人の意見が全てじゃ無いとは思うけど、やっぱこの件について一言いいたい人は多いんじゃない?

そしてこれは、現場の薬剤師だけの話じゃない。

結局何かあって困るのは利用者だし、こうした働き方にNOの声を上げないと辛い思いをするのは労働者。そして医療は沢山のひとの連携プレーのもとに成り立つものなんだから、みんなで考えなきゃですよ。

勘違いされちゃ困るけど、何もわたしは薬剤師の味方ってワケじゃない。『薬剤師なんて必要なの?』という意見には与しないけど、合理化の結果、薬剤師の地位や必要性が低下することに胸を痛めることは無い。でもこの問題は、その件とはまた別の話。たとえ医療関係者はそうするしかないと言ったとしても、こんな働かせ方は認めるわけにはいかないよ。

これからも、いち消費者、いち労働者として、本件の推移を見守っていこうと思います。

ではでは、今日はこのへんで。

薬剤師が辛いと思ったら読む本: pharmacist 2nd stage