ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

株式会社はてなの財務諸表分析

こんにちは、らくからちゃです。

かねてより噂のあった、株式会社はてなの上場について、正式に昨日発表されました!

まずはおめでとうございます!!

説明なんて要らないとは思いますが、なんのこっちゃ?と思っている方がいらっしゃるかもしれませんので、簡単に説明させて頂きます。通常、『株式会社』は届け出さえすれば、簡単に設立することが可能です。ただ『株』は、個人での売買しかできないんですね。

それが証券所に上場することで、不特定多数のひとと売買することが出来るようになります。上場をするメリットとして、まずは会社が不特定多数の人に株を売却することで、投資資金を集めやすくなります。今回はどうやら、2億5900万円ほどの資金を調達するようです。

はてなが申請していた東京証券取引所東証マザーズ市場への新規上場が、今日承認された。上場予定日は2月24日で、証券コードは3930。上場にともない37万株を売り出す。このうち約半部の18万6000株が新規発行分、もう半分が自己株式の処分による18万4000株。想定発行価格(700円)で算出した場合、発行価格の総額2億5900万円となる見込み。主幹事取引会社はSMBC日興証券。

はてなの創業者で代表取締役会長である近藤淳也氏が30万5000株を、非常勤取締役の梅田望夫氏が8万株をそれぞれ放出する。オーバーアロットメントによる売り出しは11万3200株、引受人の買取引受による売出は11万3200株。

(参考:はてながマザーズ上場へ、上場は2月24日 | TechCrunch Japan

 また、株が売買されやすくなることによって、出資者や新株予約権等で株式を保有している従業員が、自由にお金に変えやすくなります。今回、はてな創業者の近藤会長は、30万5000株を売却するそうですが、700円で売れれば2億1350万円の現金に変えることが出来ます。

また、不特定多数のひとに売買されるということは、売買を行う判断材料となる情報は、正しく公開されなければなりません。そのため、財務諸表が性格なのか、また必要な情報を正しく集められるような体制づくりができているか、監査法人からのチェックを受ける必要があります。

そして今回、今までベールに包まれていたはてなの財務諸表が明らかになりました。

簡単ではありますが、ざっと眺めてみたので感想を記載してみたいと思います。なお、各グラフにおいて金額系の単位は、別段記載のない限り「千円」です。

損益計算書分析

 まずは損益の情報から。

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会計期間の変更が終わった平成24年度から推移を並べてみました。直近では売上高が約11億円、経常利益は約1億7千万円となっています。ぐんと成長しているという印象は受けられませんが、しっかり堅実に成長を続けているイメージです。ただ、経常利益率が伸びている一方、自己資本利益率は低下しています。

損益に関する情報で気になったのがこちら。

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システム屋さんで原価明細書を出しているのって、あんまり見た記憶が無いのですが、中々面白いですね。こういった業界は、結構受注したものを外に丸投げしたりする体質の会社が多いのですが、はてなではしっかり開発を内製で行っているようです。ほとんど外注費はありませんね。

セグメント分析

さて次に、何で稼いでいるのかの分類別情報も見てみたいと思います。

  • コンテンツマーケティングサービス
  • コンテンツプラットフォームサービス
  • テクノロジーソリューションサービス

に分けて分類しています。それぞれの関係図を模式したのがこちら。

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まず、コンテンツプラットフォームサービスとは、はてなブックマークやはてなブログなどの自社サービスになります。はてなブログの有料会員費や各種コンテンツ上の広告が収入源となります。

次に、コンテンツマーケティングサービスとは、企業向けのはてなブログのサービス構築や、ホッテントリの間に出てくる広告の制作などのことですね。

最後に、テクノロジーソリューションサービスとは、システムを運用構築して得たノウハウをもとに行っている各種受託開発等になります。主に、任天堂向けの各種インフラ構築系のお仕事ですね。

これらの事業であがる売上高は、綺麗に1:1:1の関係となっているようです。

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財務構成と株主構成

続いて、貸借対照表の情報を見てみましょう。

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非常に安全性の高い財務構成です。流動負債はほぼ買掛金のみ。固定負債も除却債務などのみで、有利子負債はなく、いわゆる無借金経営です。なおかつ、資産のほとんどを現金で保有しています。

あと見ていてちょっとおもしろかったのがこちら。

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まだ結構残っているみたいですね(笑)。

財務諸表を見てみて、今回わざわざ資金調達をする必要性は、これからよっぽど大きいことを仕掛けて行かないかぎり無かったんじゃないのかな、と思います。むしろ、これだけ大量の純資産と流動資産を抱えている以上、うまく活用していかないかぎり、株主から突き上げを食らう感じもします。

やはり今回の上場の主な目的は、会社をより広く周知してもらうことと、大株主の株の現金化かなあと思いますね。ただ今回の上場以後も、近藤会長は50%超の株式を保有し続けることになります。

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その為、株主からの要求で、大きくサービスが変わるということは無いかと思われます。ただ、会社を上場する以上、少数株主の声にも耳を傾ける必要があります。これだけのキャッシュを抱え込んでいる以上、事業のさらなる拡大を求めてくるのは当然のことです。

そうなったときに、ユーザー数の増大などの要求も高まり、既存のユーザーコミュニティへにも、何らかの影響が出てくる可能性があります。

まずはこれまで、楽しい場を作ってくれてきた『はてな』の皆様に感謝をしつつ、今後共変わらないサービスを期待したい、今日このごろでございます。

ではでは、今日はこの辺で。