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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

経済学部の受験科目に『政治・経済』が必須では無いのは何故か?


こんにちは、らくからちゃです。

先日ぶらっとネットサーフィンをしておりますと、こんな記事を読みました。

大学が受験問題の作成を予備校に任せているという内容のお話です。試験対策される側の大学が、試験対策する側の予備校に問題を作ってもらうというのは本末転倒な気もしますよね。でも大学は高校生向けの試験作成のプロでは有りません。例えば、高校の学習内容を熟知しているわけでは無いでしょうから『学校で習っていないこと』を出してしまう可能性もあります。(勿論、講義を行うのに必要なレベルでの理解はされていると思いますが・・・)ですので『良い受験問題』を作ることに関しては、現役高校生との接点の多い予備校に優位性があります。

しかし『良い受験問題』とは果たして何なのでしょうか?

この問題について、学生の頃に教授とした簡単なディスカッションを思い出しました。当時のことを振り返りながら書き起こしておきますので、何かのご参考になれば幸いです。

経済学部の入試に『政治・経済』は必要か?

かれこれ10年近く前の話にです。

なんとか某私大経済学部にAO入試で潜り込んだ私は、『授業についていけなかったらどうしよう』と不安でたまりませんでした。ところがどっこい、授業で行われる『経済学基礎』では本当に基礎的なことしか行わず、逆に拍子抜け。(その頃の話は下記に書いてみましたので、よければ是非!)

www.yutorism.jp

で、生意気にも『大学まで来たのに、なんで高校の授業でやるようなことをやっているんだ?高校で政治・経済をやって来た人に入学してきてもらったほうが効率良くない?』なんて思っていたんですね。AO入試組の私は知らなかったのですが、母校の入試科目はこんな感じでした。

  • 英語
  • 国語
  • 世界史 or 日本史 or 数学

の選択というタイプの方式です。私大文系学部に多い3科目型の受験方式ですね。学校によっては選択科目として『政治・経済』が選択科目としてあるケースもあるそうですが、必修になっている学校は調べた限りでは見受けられません。

そこで学生会の懇親会の際に、教授に疑問をぶつけてみました。『経済学部なのに入試科目に政治・経済が無いのは何故ですか?』と。

選抜試験と認定試験

いまおもえば、母校には学生のこうした疑問にも丁寧に答えてくれる教員が多かったような気がします。質問した教授も、私の疑問に耳を傾けてくれた後、以下のような答えてくれました。

そもそも試験は大雑把に分けて『選抜試験』と『認定試験』の二種類に分けて考えられます。『選抜試験』とは受験者の中から成績順に決められた人数を合格者とする試験で、『認定試験』とは受験者の中から一定の水準を満たす結果を出したものを合格者とする試験のことですね。

大学入試はどちらかというと『選抜試験』です。教員や校舎といったリソースには限りがあるため、受験者の中から一定の人数を抽出しなければなりません。ここで大変なのが、合格点を何点にするのか?です。

受験者は、一学部でも数千人単位です。点数は概ね正規分布するようになっているので、合格点を1点動かすだけで、100人単位で合否が分かれてしまいます。複数の大学に合格する受験生もいるので、そこも加味して合格点をコントロールすることになりますが、なるべく微調整しやすいよう、分布の山は低いほうが良い。

試験問題は、問題別の正答率を予想して得られる分布を睨みながら作成します。『簡単なもの』と『難しいもの』を混在させ、なるべく得点をバラけさせるように作成しているんですね。学習内容の少ない『政治・経済』については、それが難しい。難問奇問を混ぜ込めば、一定の分布を保つことはできますが、運に左右されるようになってしまう。そのため『政治・経済』は入試の問題としては向かないという側面があります。

良い学生の集め方

ははあ、なるほどなるほど。と聞きながらも、話は続きます。

また合格者を選びやすいように試験結果の分散を大きくするためには、受験科目を増やす方法も考えられますね。でもそれをしないのは何故かというと、これは大学の経営戦略です。

受験科目を増やすと、それだけ『学力の差』を測りやすくなります。その一方で、受験生の負担は増えます。特に、同地域・同レベルの大学が横並びの受験科目を用意している中で、全く別の科目を必修にしてしまうと、うちの為だけに受験対策をする必要が生じ、受験生を取りこぼしてしまう必要があります。

5教科7科目を受験できるだけのガッツのある学生を積極的に狙っていく手もありますが、現状でその戦略を取ったところで、国立大学からこぼれ落ちた学生しか来てくれなくなります。生々しい話をすると、偏差値が下がってしまうのです。

入試制度については、うちでも推薦入試やAO入試などのような形態での募集を増やしてきました。入学辞退率が少ないという理由と共に、一般入試をより『狭き門』にすることによって見かけ上の難易度をあげようとしてきた側面もあります。その結果、ご指摘いただいているような学生間のレベルに差が広がってきており、授業の内容にも一部支障を来している現状については教員間でも把握しています。

しかしそれと同時に、ユニークな学生が入ってきてくれることによるメリットも感じているのです。学生の選抜基準は、何よりも『学ぶ意欲』の強さが重要であると考えています。バックボーンが異なる学生を一度に教えることによって産まれる壁は、学生ではなく学校が乗り越えるべきものです。

大学で学ぶということ

この話は、最後にこのように締めくくられました。

君は、ずいぶん初歩的なところからやり直していると感じたようですが、大学で学ぶ経済学と、高校で学ぶ政治・経済とは異なるものです。政治・経済に限りませんが、高校までで学習する内容は、既に誰かが考えついた仕組みを教えるものです。一方、大学で学ぶことは新しい仕組みを考え出すためのヒントです。『魚ではなく、魚の釣り方を教えよ』という格言がありますが、大学では『魚とは何か』を教えます。

魚の釣り方を知っていれば、食べていくことは出来ますが、環境の変化に対応したり、より多くの魚を得る方法を考えることは出来ないでしょう。『魚とはどういう習性を持った生き物か?』『海流は何故生じるのか?』『古代人はどのように海を渡っていたのか?』そんなことは、すぐに生活を良くするものではありませんが、新しい何かを考えるための大きなヒントになります。そうした知識は、得てして日常にあるごく身近なテーマをいかに深く理解していくのか?といったところから得られます。

君は、入試制度に関心を持っているようですが、これは『限りある合格者数を、無数に存在するパターンの中から決定し、その価値を最大化する』極めて経済学的なテーマの問題です。日常生活のなかにもこうした問題を沢山見つけることができるでしょう。ぜひ色んな本を読んで、色んな人に質問して、問題点を整理し、世の中を良くする新しい仕組みを考えてみてください。

大学はそのためにあります。

ではでは、今日はこのへんで。

関西学院大学(関学独自方式日程) (2017年版大学入試シリーズ)

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