ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『円周率って3.14なんですか?』ってタイプの問い合わせへの対応について

こんにちは、らくからちゃです。

普段は、自社製システムの導入のお手伝いやら、活用の提案やらを飯の種としております。何か原価・管理会計まわりで面白い話があれば、どしどしご応募くださいщ(゚д゚щ)カモーン

弊チームでは、お客様がメインとなって進めるような小規模案件のサポートを担当しております。でまあ、エンドユーザー様や販売代理店様からの問い合わせ窓口も兼務しているのですが、日々難解な問い合わせと悪戦苦闘しております。中でもいつも苦労するのが、

『円周率って3.14なんですか?』

みたいな感じの問い合わせです。

『円周率って3.14なんですか系の問い合わせ』との戦い

勿論、原価計算・管理会計まわりのシステムで円周率を使うことは無いので、自分たちがいま扱っている商品が『面積かなんかを計算する何か』だったと仮定してってことなんですけども、こういう"何が目的なのか良くわからない問い合わせ"のことを、勝手に『円周率って3.14なんですか系の問い合わせ』と呼んでおります。

弊チームでは、基本的にエンジニアさんが答案を作成し、私が承認して返送するというフローになりますが、この問い合わせだと、だいたいこんな草案が上がってきます。

 円周率は無理数かつ超越数であり、無限に連続します。本システムにおいては、内部的に小数点以下14桁の3.14159265358979まで定義されています。本件に関する詳細は、ドキュメント 数学定数の円周率の項をご参考ください

うーん、どうでしょう。システム屋さんに問い合わせをしたことがあるひとには割りと見慣れた雰囲気の文章だと思います。質問には答えられているし、ウソはないし、回答の定形にも従っている。わりとそつのない回答でしょう。

でもこれ、お客さんのどんな問題が解決するの?

まさか、円周率が割り切れる数値かどうかを疑問に思っているわけでも、そこに関する数学議論を楽しみたいわけでもないでしょう。でもエンジニアさんが書く回答は、ちょっと技術よりな内容になりがちなんですよね。円周率の話なんて大好物ですし、無理数とか超越数とか言ってみたいのはわかりますけど、いま必要な話じゃない。

こうした『円周率って3.14なんですか系』の問い合わせがきたら、まずしなきゃいけないのは、『そもそもお客さんは何に困っているのか?』『どんな状況にあるのか?』『なんでこの質問をしてきたのか?』そこをしっかりと考えることですよね。

なーんで、この問い合わせをしてきたんだろうねえと、お客さんの立場で考えてみる。ありゃ?そういや円周率の値を表示している設定パラメータ画面は、四捨五入されてまるめられ、小数点以下2桁までしか表示されないなあと思い出せれば、次のような答案が考えられます。

円周率は、小数点以下14桁まで保持し計算に利用されております。詳細は設定パラメータ画面の『円周率』の項目でご確認いただけますが、システム設定の『小数点表示設定』に従って丸められた値が表示されるため、御社の場合は3.14として表示されております。

小数点表示設定を切り替えて頂き、再度ログインしていただければ本来の値が表示されます。(システムの再起動は不要ですが、すべてのユーザーの全画面での表示結果が変わりますのでご注意ください。)

内部的には指定の値で計算を行い、画面表示をする直前に小数点表示設定に従って端数処理された値が表示されます。本件に関する詳細は、ドキュメント 面積計算の端数処理の項をご参考ください。

裏で何が起こっていたのか考えてみよう

例えばこのケースでは、『現場から数値が正しいか検証してくれって言われたから見てみるか。あれ、そういや円周率って何桁で処理してるんだろ?パラメータを見ればわかるのかな。え、3.14ってあるぞ。2桁までしか考慮しないの。マジで!?』みたいなことが起こっているんじゃないかなあと考えてみます。

定数くらい全桁表示しろよ、クソかよ、って苦情はさておきとして。実はこれ、円周率の話ではなく、端数処理に関する話だったりするんですよね。こうした問い合わせへの回答を書くときには、だいたい以下3つの点に注意しながら書くようにします。

1.問題の本質を考える

まず、非常に情報は不足しているけど『どうしてこんなかと聞いてきたのかな?』と考えてみると、何パターンか仮説は浮かび上がる。例えば『たまたま設定パラメータ画面見てたら、小数点の項目が3.14って書いてあって『えー、小数点以下2桁までしか見てくれないの?』と思ったのかな?とかね。

『何がしたい』『何に困っている』が無かったとしても、まずはそれを考え出す。それがないと問い合わせへの回答にはならない。

2.解決策と具体的な手順を説明する

だったら桁数設定機能のことを説明したらいいのかなーというところまで思いつけば、あとはその具体的なプロセスも合わせて説明する。例えば、『再ログインは必要だけど再起動は要らないよ』とか言っておかないと、また問い合わせが飛んでくる可能性が高い。

理由や理屈を書くだけじゃ不十分。ちゃんとお客さんが問題解決の為に手を動かせるような方法もきちんと書くことは必須。

3.リスクや影響も伝える

また何か具体的な手順を伝えるのであれば、そこから予想されるリスクや影響についても、気付かずにやっちゃいそうなポイントは伝えておく。今回のケースだと『他のユーザーの表示結果にも影響でるよ!』みたいなところかなあ。

ちょっと考えてみれば分かりそうなことでも、影響度合いの大きい点については、聞かれていないことであってもきちんと伝える。

ドリルを売るな、穴を売れ

結構こういう問い合わせを投げてくるのは、何にもわかっていないお客さんより、そこそこ分かっているお客さんのほうが多かったりするんですよね。

  1. ◯◯というトラブルが発生した!
  2. ☓☓というパラメータをみつけた!
  3. ☓☓を使えば△△になりますか?←ここだけ問い合わせる

こんな感じ。いやー、△△にはなると思いますけど、◯◯を解決するなら□□のほうが簡単なんだけどなあといった話も、この情報だけじゃ中々出しづらい。まずはお客さんにちゃんと質問する技術を身につけて欲しいのは山々なのですが、同時にお客さん自身も気づいていない問題も含めて掘り起こしてあげるのが、問い合わせ対応を行う人の腕の見せどころ。

その昔、某大規模掲示板に『そんな曖昧な質問で答えられるかよ』みたいな書き込みに対して『エスパーキボンヌ』ってレスがつけられることがあったけど、無償のボランティアならさておき、お金を貰って仕事としてやるのであれば、『どうしてそこまでわかっちゃうんですか?エスパーかなんかですか?』と言われるくらいを目指さないといけない。

マーケティングの世界では『ドリルを売るな、穴を売れ』なんて言い回しをします。

お客さんが本当にほしいのは、質問への回答ではなく、それによって問題が解決することなので、問い合わせをざーっと読んで、マニュアルの関連しそうなところを貼り付けたところで、何も満足して貰えない。

問い合わせを起こした人が、結局なにを求めているのか?本当に知りたいことは何か?そういうところをしっかりと読み取ることについては、マーケティング担当もアフターサポート担当にとっても重要なことです。

そのスキルを手に入れるには、まずは数をこなすことが大事なんだけど、常に『お客さんの問題を解決するんだ』と意識をもっていないと、全て空振りなるだけなので注意していきたいなあと思う今日このごろです。

ではでは、今日はこのへんで。