ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『退職時の有給休暇残日数の買取』は義務化すべきだと思う

こんにちは、らくからちゃです。

増えない給料と、減らない有給休暇残日数に、日々キーボードを涙で濡らしております。いつか転職してやる!と思いつつも、なんやかんやで今の職場が気に入っているので、地道に改善活動を続けていこうと思う次第であります。

有給休暇といえば、先日こんな記事を読みました。

www.nikkei.com

 現行の労働基準法は企業に対し、雇用してから6カ月たった人に有給休暇を与えることを義務付けている。この制度は、企業で働いた経験のある転職者には不利だという声があった。

弊社では、転職して半年以内のひとでも普通に有給取ってた気がします。そういや入社1年目から20日分の有給休暇も付与されてたので、ちょっぴり法律で決まっている最低限度よりも優遇して貰ってるのかもしれません。

ただまあ転職してすぐに休みを取るっていうのも、周囲の目線やなんやを考えたら難しいよなーって思いますね。むしろ、転職者にとって有り難い&必要なのって『退職時の有給残日数の買い取り』じゃないんでしょうか。

有給休暇って買い取って貰えないの?

法律上、有給休暇は時効は2年となっており、使いきれなかった場合も翌年までは利用が可能です。有給休暇の付与は年間最大20日ですので、最大40日の有給休暇がストックできることになります。

しかし、日本人の有給休暇取得日数・取得率ともに、諸外国と比較しても大変お粗末な水準です。『有給休暇って都市伝説でしょ?』なんて人も出てくる有様です。

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(出典:【世界30ヶ国 有給休暇・国際比較調査2017】日本の有休消化率、2年連続 世界最下位|エクスペディア)

つまり、折角与えられている権利を、みんな使わずに放棄しちゃってる状況なんですよね。月給20万円のひとでも、一日あたり1万円相当になるはずですので、みーんな毎年10万円近い権利を捨てちゃってるんですよね。携帯電話を格安SIMに乗り換えたらとか、経費率の安い投資信託を買ったらなーんて話よりも、ずっと損をしてる話ですわ。

で、こうした使い切れない有給休暇の話をすると『どうせ使い切れねえし、買い取ってくれねえかなー』と言い出すひとが出てくるのは至極当然のことでございます。ですが、有給休暇の買い取りは、過去の行政通達で禁止されています。

昭30.11.30 基収4718号
年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて年次有給休暇の日数を減じ、又は請求された日数を与えないことは(労働基準法の)第39条違反である。

あくまで労働者の働かせすぎを防ぐための制度であって、本来カネで解決するような話じゃないんですよね。お互い納得してるなら、給料3倍で24時間労働する契約をしてもいいんじゃねえの?という話を、我が国は許しちゃいないんですよ。

ただ例外的に、買い取りが認められる例もあります。

1)法定付与日数を上回る休暇分
2)年休請求権の時効により消滅した休暇分
3) 退職等により権利行使できなかった休暇分

(参考:自己都合退職者の有給買取 - 『日本の人事部』)

 ただこれはあくまで『会社側が買い取ることが出来る』という話であって『買い取らなければならない』というワケではありません。特に2に関しては、意図的に有給休暇を取得しないことで、現金化を企む労働者も出てくるでしょうから、慎重に扱わなければなりません。

でも、3についてはどうでしょうか。

『退職時の有給休暇残日数の買取』を義務化したらどうなるのか?

じゃあここで、退職時までに使い切れなかった有効な有給休暇を、労働者が希望した場合は、基本給一日平均額相当での買い取りの義務化を行ったらどうなるのか考えてみましょう。

自己都合での退職の際に、退職日とそこまでの有給休暇の取得について、何かとバタバタしている光景を何件か見てきました。

退職する人としては、なるべくギリギリまで会社に残り、有給休暇を使い切って、働かずしてお給料が欲しい(ついでにボーナスも!)。一方で会社側としては、可能な限りたくさん働かせたい。更に転職先の利害も加わり、泉ピン子もびっくりの泥沼劇場が繰り広げられることとなります。

こうした有給休暇使い切り大作戦に関する不毛な駆け引きも、退職時に残日数分で買い取ることが義務化されれば、大幅に削減されます。

会社側にとっても、『有給使い切るまでは辞めん!』と2ヶ月間居残られると、賃金の約15ほどの社会保険を負担せねばなりません。一方、スパッとお辞めいただければ少なくともその分の社保負担はなくなる分、若干ですが負担が小さくなります。

また皆さん、退職したときにどれくらい失業保険が貰えるのか計算してみたことってあります?例えば

  • 30〜35歳
  • 給料は半年間で180万円(30万円*6ヶ月、残業手当・通勤手当等は含み、賞与等は含まない)
  • 在籍期間は5〜10年
  • 自己都合

の場合でのシミュレーションをするとこんな塩梅です。

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(参考:失業保険の金額をいますぐ計算!あなたの基本手当はいくら?|退職したら最初に見るサイト)

一日あたり5600円しか貰えず、かつ退職後3ヶ月間は貰えません。もうこんな会社辞めてやる!と思っても、実際に実現に移すには中々ハードルが高いのが現状です。会社都合になる条件(直近3ヶ月間で平均月の残業が45時間以上など)を満たせば、退職日がから支給される計算になりますが、それでも決して多い金額ではありません。

ここでもし40日分の給料があれば、かなり心強いでしょうね。

退職時に、有給残日数の現金買取が義務付けられれば、有休取得率の向上によりいっそう力を入れるでしょうし、もうこんな会社辞めてやる!と言い出しやすく慣れば各種処遇も改善するでしょう。

雇用流動性の改善とは解雇しやすくすることだけではない

余った有給休暇の買い取りの解禁は、賛否の別れるところだと思いますが、個人的には反対です。賛成の立場の人の意見も分かりますが、やはり周囲のひとも含めて、働き詰めの社会になるリスクが高すぎるんですよね。休みがあることは、『贅沢なこと』ではなく『当たり前のこと』でなければならないと思います。

しかし、退職時のみに限定してみたらどうか。そうすると、雇用の流動性の改善にも大きく繋がると思うんですよね。

転職を行うことの金銭的なインセンティブが増えるだけでなく、『行き先は決まってないけど、もう我慢ならないからひとまず辞めて考える』といった選択もしやすくなる。『有給の使い切り問題』がなくなれば、中途採用を行う側にとっての利点も大きい。

雇用の流動性が高まれば、閉鎖的な職場に閉じこもるのではなく、いま一番労働力を必要としている市場に人材が移っていきやすくなる。他の会社に負けないようにお給料を上げる必要も生じ、お給料をあげるために生産性を改善する方向にも向かう。

当事者だけでなく、社会全体にとってメリットがある話です。

携帯電話のキャリアは、2年ごとに乗り換えればおトク!みたいな話もありましたが、仕事のキャリアだって、2年毎に転職すればおトク!くらいの感覚になれば良いのかも知れない。

どうも『雇用流動性を改善する』と言うと、企業側がクビにしやすくする話ばかり取り上げられますが、労働者側が別の会社に移りやすくすることも大切です。

結局のところ、多くの労働問題の根底には『労働者が会社を辞めづらい』点があります。

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もちろんこれで、あらゆる問題が立ちどころに解決するワケではありません。ですが、確実に良い方向に向かうんじゃないでしょうか。試しに、Twitterでアンケートを取ってみました。あくまで私の周囲に限定されますが、少なくとも高プロよりは『民意の賛同』はあると思いますよ。

ではでは、今日はこのへんで。