ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

簿記を学ぶ人に最初に覚えてほしい仕訳の理屈

こんにちは、らくからちゃです。

職場の日商簿記検定2級対策自主勉強会の講師を拝命いたしました。やるからには合格を目指して全力で行きますので、受講生各位はそのつもりでお願いしますね(๑•̀ㅂ•́)و✧

自分用の参考書代まで自前のボランティア講師ですが、教える経験を通して、何か学べるものがあればいいなあと思うのと同時に、折角なので『簿記を教える側』として感じたことやノウハウを書いていけたらいいなあと思う次第です。

さて明日が初回の勉強会になるのですが、今回は3級を受けたのが遠い昔のひとや未受験の人も多いようです。いろんな人の声を聞いていると

  • 勘定科目のイメージがいまいちピンとこない
  • 仕訳の勘定科目の位置が解らない
  • 借方とか貸方とかって何なの??

といった話を良く耳にします。この辺の考え方は、丸暗記しようとするんじゃなくて、理屈がわかれば何も難しいことありません。まずは基本中の基本『仕訳ってなんだっけ?』というところからおさらいしてみたいと思います。

貸借対照表とは

会計学総論みたいな話は、以前この辺に書いてみましたが、これをきっちり説明しようとすると今思えば10分じゃちょっと足りませんね(笑)

www.yutorism.jp

もうちょいエッセンスを絞って『簿記ってなんやねん』というところについて、直感的に理解できるようになることを目的に、ざーっと説明してみたいと思います。

例えば

  • 100万円持っている会社
  • 200万円持っているけど150万円の借金のある会社

だったら、どちらのほうがお金に余裕があるでしょうか?まー、個人でも同じことが言えますけど、幾ら資産(持ち物)が多くても負債(借り物)も含めて考えないと、本当に余裕があるかどうかはわかんないですよね。

その状況をちゃんと把握するために、資産・負債を並べて書いた表が貸借対照表です。

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こんな塩梅で

  • 資産・・・右側(借方)
  • 負債・・・左側(貸方)

に並べて書いて、差額の純資産を計算します。資産・負債はイメージがつきやすいよね。持っているものと、返さなきゃいけないお金。じゃあ純資産ってなんなのか?一言で言うと『持っている資産のうち、返さなくても良い分』になるのですが、内訳としては

  • 資本金・・・事業開始時に準備したお金
  • 剰余金・・・これまでの儲け

で構成されます。このへんは、また先で勉強することになるのでサラッと流しておけばよいのですが、大事なポイントは 資産-負債=純資産ということは、資産=負債+純資産になるんですよね。

言い換えれば、必ず右側(借方)と左側(貸方)の合計金額は一致する。これを貸借平均の原理といいます。たまーに『なんで一致するの?』と聞いてくる人がいるんですが、一致するように定義されているからです(笑)。

ちなみに資産である貸付金が借方で、負債である借入金が貸方です。これは、もともと貸借対照表を作っていたのは銀行だったからだと言われています。つまり銀行(お金を貸す側)から見れば銀行からの借入金は貸付だし、銀行への貸付は借金ですね。ややこしいんですが、そういうネーミングだと思って覚えましょう。

ちなみにですが、「かかた」と「かかた」で

り/し

と背中合わせになるってこじつけで、わたしは教えられました。ご参考になれば幸いですm(_ _)m

仕訳とは

さて会社の資産状況について、毎回毎回イチから集計すると大変ですよね。最初につくった貸借対照表に、何かあるたびにどう書き換えるのか?のメモとして書き残して、それを追記していくほうがずっと簡単です。

そのためのメモのことを、簿記の世界では『仕訳』と呼びます。

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このメモは、ミニ貸借対照表みたに作ります。

例えば、100円の借金をして100円の現金が増えたケースを考えましょう。これは借方に現金を、貸方に借金を書き加えればOKですよね。資産や負債を増やしたいときは、もともとの位置の側に金額を追記していきます

つまり

  • 資産の増加・・・借方
  • 負債の増加・・・貸方

に書くってわけですね。ポイントは、常に借方・貸方の合計額が同額になることです。

じゃあ次に、100円を支払って建物を購入したケースを考えてみましょう。100円分の価値のある建物が増えたわけなので、借方側に100円の建物を追記します。じゃあ現金が減ったわけですが、これは借方・貸方の金額を同じにするために、貸方側に記載します。

というわけは、資産や負債を減らしたいときは、もともとの位置の逆側に金額を追記していきます

つまり

  • 資産の減少・・・貸方
  • 負債の減少・・・借方

に書くんですねー。

最終的に貸借対照表に追記する場合は、本来の位置にあるものはそのまま加算、逆の位置のものにあるものは減算していけば、貸借平均の原理を保ったまま、貸借対照表を修正できる!ってわけです。

収益・費用とは

こうして常に、等価交換で動いていくのが会計の世界観です。じゃあ例えば、サービス料を受け取った場合や、お給料を支払ったときはどうなるでしょう?

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何かサービスを行い、現金を受け取ったとき、代わりに何か別の資産が減るでしょうか?それとも借金が増える?そんなことないですよね。稼いだんですから!(笑)

こうした場合の相手勘定は、一度『純資産』が増えたと考えてみましょう。じゃあ逆に、お給料を支払ったような場合は、現金が減ると同時に、過去積み上げてきた利益である純資産が減った、と考えるとスジが通りますよね。

でもこれ、あとでなんの事かわからなくなりますよね。そこで、純資産を直接増減する代わりに

  • 純資産の増加・・・収益(貸方・右側)
  • 純資産の減少・・・費用(借方・左側)

として、それぞれ専用の内訳を示す科目で計上します。

損益計算書と貸借対照表の連携

こうしておけば、ある一定の期間で、どんな理由で収益が発生したのか、費用が発生したのかがわかりやすくて良いですね。ただ、収益・費用の科目は、純資産の増減の代わりに使っているだけのものですので、最終的に純資産に振り替えてあげる必要があります

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まずは一定の会計期間内で、収益・費用の合算を行います。そうして作るのが損益計算書。差し引きで、当該期間の純利益も計算できちゃいますね。

ただこのままだと、本来増減すべき純資産が、ずっとそのままになってしまいます。そこで、一度純資産の増減の代わりに計上した収益・費用を、ある一定のサイクルで純資産に振り替えます。

このサイクルが『会計期間』です。まあ基本的には1年ですね。

振り替える・・・ということは、反対側(収益は借方・費用は貸方)に記載して取り消しの仕訳をあげていくイメージです。全部、もとの純資産に振り替えていくと、この増加分が、貸借対照表上の純資産の増分になるわけです。

費用と収益は、1年で一旦チャラになって翌年には引き継げません。純利益は、純資産に加算されて、翌年に引き継がれていきます。

勉強をすすめていくと、この解説が必ずしも正しくはなく、不十分な箇所も多いことがわかってくると思います。ただ今の段階では、ざっくりこのレベルで理解しておくと良いかなあと思います。

簿記を学ぶときのポイントですが、まずは一旦ハラオチできる段階まで理由付けをして理解し、とにかく問題をバシバシといていくことが大切です。

まずは皆様のお役にたてば幸いです!

教える側へのメモ

初めて簿記にふれる人間には、その用語や概念は、非常に抽象的で、わかりにくいものだという印象を持たれることが多い。中でも純資産の概念と損益計算書上の純利益との関係というのは、一朝一夕に理解できるものではない。しかし一方で、資産や負債といった概念については、日常的にも接するものであり分かりやすい。

そこでまずは、

  • 純資産=資産-負債
  • 純利益=純利益の増分=収益-費用

と伝えると、理解が早い。ただこう書いてしまうと、増資や配当はどう説明するとか、資本取引・損益取引区分の原則はどこへいったと首をかしげる人も出てくるひとも出てくるかもしれない。ただ、まずは日常に見聞きするものと、そこから余り深入りしない範囲に説明をとどめ、そのへんは追って理解していって貰ったほうがよいのではないかと思う。

あくまで目的は、会計・簿記について理解してもらうことであって、そのへんは臨機応変に対応することも重要ではないかと思う次第である。