ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

Amazonが払っている税金とソフトウェア会計についての考察

こんにちは、らくからちゃです。

会計業界の片隅で、ひっそりとアスファルトに咲く花のように生きております。お客様の話についていけるように、会計ネタについては日々拾うようにしておりますが、先日こんな記事をよみました。

irnote.com

ネットで度々話題になる『Amazonの税金ネタ』ですが、読めば読むほど、頭の中のハテナマークが増えてしまいました。きっと他の方(特に会計屋さん)もモヤッとした点が多いかと思いましたので、浅学非才の身ではありますが、調べてみた範囲で整理してみたいと思います。

なお私は、学者でも会計士でも経営者でも無く素人の一般人です。可能な限り、裏付けを取りながら論を進めていきますが、読み解き方に誤りがある可能性も十二分にございますので、その心づもりで読んで頂ければ幸いです。

Amazonって税金払ってんの?

先述の記事では『Amazonが税金を支払うよりも大規模な投資をし続けることが出来たのは自社開発ソフトウェアに対する税制のあり方が異なる』という記載がございます。

今日は、Amazonのあまり知られていない側面を、一つ読み解いてみたいと思います。それは、Amazonは、営業利益を出して税金を支払うよりも、大規模な投資を継続して、し続けてきたという点に関してです。

(中略)

従ってこのnoteの内容は、Amazonの税金逃れを批判するという趣旨ではありません。どちらかと言うと、日本の自社開発ソフトウェアに対する税制のあり方が、今日の国際競争において、非常に不利な形に働くケースが想定されるので、それに対しての政策提言の意味もあるという風にご理解いただければ幸いです。

 まあその前に、『Amazonって税金払ってんの?』という点から疑っている方も多いかと思いますので、その点から見てみたいと思います。

Amazon.comといえば、2017/08/26時点において、米国で時価総額3位の超大企業です。

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(出典:時価総額ランキング:米国株(アメリカ株) - Yahoo!ファイナンス)

そういや、アメリカの会社で一番税金払ってるのってどこなんだろう?と思ってググってみたところ、The 35 Percent Corporate Tax Mythというレポートが見つかりました。

アメリカの連邦法人所得税税率は35%とされているけど、実際そんなに払ってねーじゃんという『法人税率35%の神話』に迫る中々の力作です。解析対象は、Fortune500企業よりフォーム10-K(証券取引委員会に提出してる有価証券報告書)に、解析に必要な情報が記載されていた258企業。これらで連邦法人所得税の40%近くがカバーできるそうです。

じゃあ実際、どこが沢山払っているのかな?と見てみるとこんな感じ。

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年によってブレが出ますので、2008-15年の合計で見ているそうですが、AT&TやWells Fargo、J.P.Morganなど、見慣れた企業が並びます。IT業界からは、IBMが5位にランクインしていますな。これら25企業で、残り233企業の全体よりも多く納税しているようです。

ありゃ。時価総額第3位のAmazonが見当たりませんね。スクロールしていくと、下の方で見つかりました。

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小売・卸売業の『利益に対して納めている税金が低いランキング』で堂々の一位を獲得しています。利益の10%程度しか払っていないことになっています。利益の額というのは、捉え方によっては見解の相違があるかと思いますが、納税額そのもので見ても674.5 $ millions。IBMの4%位っすね。

ソフトウェアと資産計上

じゃあこれ、どういうカラクリなんだろうね?という点に関して、前述の記事の中では、以下のような記載がありました。

アメリカの会計制度では、ソフトウェアに対する研究開発投資は、税務上も全額損金計上が認められています。

誤解を恐れずに分かりやすく言うと、今年大きな利益が出ている場合、その利益を内部留保に回すためには法人税を支払う必要があります。

もう一つのオプションは、今年の利益を小さくするために大胆な投資を行い、来年以降のビジネスをより盤石な体制にする、その結果として今年の利益が小さくなると言う考え方です。

(中略)

日本は税務署の「指導」のせいで、自社開発のソフトウェアでさえも「資産計上+減価償却」させられるという「本気で国ごと殺す気ですか?」というルールがまかり通っているから、同じだけの「投資」を費用計上できるアマゾンとの違いがいかに大きくなるか分かるでしょう。

文章をざーっと読んでみても

  1. 米国ではソフトウェアの開発に掛かったコストをすぐに費用に反映できる
  2. よって、米国では利益を圧縮して係る税金の部分を投資に回せる
  3. 一方、日本ではそれが出来ないため、日本企業は税制上不利

って感じのことが言いたいのかな?と思いました(違ってたらごめんなさい)

これだけみると『Amazonってソフトウェアへの支出は資産計上してないの?』という印象を受けますが、実際に財務諸表を見てみるとそうでもありません。

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注釈の2のところにありますが、internal-use software 社内利用ソフトウェアとして、2016年末の段階で$1.4 billion計上されています。ざっくり1ドル100円と考えても、1,400億円くらいでしょうか。

そのほか財務諸表上の表記から関連する箇所を拾ってみましょう。わたしよりもGoogle先生のほうがずっと賢いとおもうので、Google翻訳の結果も下にそのまま貼り付けております。

Costs incurred to develop software for internal use and our websites are capitalized and amortized over the estimated useful life of the software. Costs related to design or maintenance of internal-use software and website development are expensed as incurred. For the years ended 2014, 2015, and 2016, we capitalized $641 million (including $104 million of stock-based compensation), $642 million (including $114 million of stock-based compensation), and $511 million (including $94 million of stock-based compensation) of costs associated with internal-use software and website development. Amortization of previously capitalized amounts was $559 million, $635 million, and $634 million for 2014, 2015, and 2016.

内部使用目的のソフトウェアおよび当社のウェブサイトの開発に要した費用は、資産計上され、ソフトウェアの見積耐用年数にわたって償却される。内部使用ソフトウェアの設計または保守に関連する費用およびウェブサイト開発は発生時に費用計上される。 2014年、2015年および2016年に終了した年度において、当社は、株式報酬の104百万ドルを含む641百万ドル、株式報酬の114百万ドルを含む642百万ドルおよび株式ベースの94百万ドルを含む511百万ドルを資産計上した内部使用ソフトウェアおよびウェブサイト開発に関連する費用の補償以前に資産計上された金額の償却は、2014年、2015年、2016年にそれぞれ559百万ドル、635百万ドル、634百万ドルであった。

ちゃーんと、ソフトウェアやウェブサイトの開発に掛かった費用は、設計・保守の部分を除き資産計上しております。(だいたい百万ドル=1億円で読んでいくと読みやすいです)毎年600億円ずつ投資して、600億円ずつ費用計上している感じですね。当たり前ですけど、毎年同額投資していれば償却費も毎年同額になりますわな。

なお、減価償却のポリシーはこんな感じみたいです。

Depreciation is recorded on a straight-line basis over the estimated useful lives of the assets (generally the lesser of 40 years or the remaining life of the underlying building, two years for assets such as internal-use software, three years for our servers, five years for networking equipment, five years for furniture and fixtures, and ten years for heavy equipment). Depreciation expense is classified within the corresponding operating expense categories on our consolidated statements of operations.

減価償却費は、資産の見積耐用年数(概して40年または基礎建物の残存年数、内部使用ソフトウェアなどの資産の場合は2年、当社サーバの場合は3年、ネットワーク機器では5年、家具や備品では5年、重機では10年)。減価償却費は、当社の連結損益計算書上の対応する営業費用カテゴリーに分類される。

参考までに(参考になるのだろうか・・・)、本邦の楽天の場合、5年償却です。

⑤ 償却
償却費は、資産の取得原価から残存価額を差し引いた額に基づいています。耐用年数が確定できる無形資産のうち、企業結合により取得した保険契約及び保険事業の顧客関連資産については、保険料収入が見込める期間にわたる保険料収入の発生割合に基づく方法により、それ以外の無形資産については、定額法により償却しています。これらの償却方法を採用している理由は、無形資産によって生み出される将来の経済的便益の消費の想定パターンに最も近似していると考えられるためです。主要な耐用年数が確定できる無形資産の前連結会計年度及び当連結会計年度における見積耐用年数は、以下のとおりです。
ソフトウエア 主として5年
・保険契約及び保険事業の顧客関連資産 30年
償却方法、耐用年数及び残存価額は、期末日に見直しを行い、必要に応じ改定しています。

2年ですから、ほぼ即時償却と思ってもいいくらいのタイミングではありますが、一応資産計上はしております。

これは、日本とアメリカの違いではありません。企業会計における資産の償却期間は、経営者の判断で決められます。もっともそれを認めるかどうかには各国の会計基準が影響しますので、制度上の影響が無いわけではありませんが、本来そこに国の差はありません。

じゃあ、償却期間は好き放題にいじって税金を減らせるか?と言われれば、答えはNOです。

財務会計と税務会計

法人税は、原則として課税年度に生じた利益に税率を掛けて計算されます。しかし、財務諸表上の利益と税金を計算する際の利益は常に一致するわけではありません。

会計の世界では、収益−費用・損失=利益と計算します。税務の世界ではこれを、益金−損金=所得として計算しますが、両者は微妙に範囲が異なります。例えば、接待の際に使った交際費は、一定条件の範囲外は損金として認められません。その分だけ利益が増えるので、税金が高くなります。

その他にも、基本的なスタンスの違いもあります。

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ビジネスの実態は各社異なりますから、ちゃんとした決算書を作るためには、それぞれの企業に合わせる必要があります。しかし、税務の世界でそれを認めてしまうと、みんな好き勝手に所得を計算するようになってしまいます。というわけで、税金の計算をする際に採用される償却期間は『法定耐用年数』として決められております。

会計の世界では『損失は予想すれども利益は予想すべからず』という格言があります。悪い報告は早めに行い、良い報告は確実になってから伝え、利益は常に控えめに計算しよう。という考え方です。が、税の世界の原則は逆です。益金は隠さず報告し、損金は確定するまで繰り延べ、利益は早めに吐き出すように、と。利益が無限に繰り越されちゃ、税金取れないですから。

Amazonが使っている2年という償却期間も、あくまで経営陣が『うちのビジネスだったら、こんなもんかな』と決めたものです。じゃあ税の計算をする場合は何年で処理しているのか?については、直接は記載されていませんが、ある程度は財務諸表から予想できます。

税効果会計と繰延税金資産・負債

経営者という人種は、女子高生が『痩せてー』というのと同じくらいの頻度で『税金減らしてー』と言っているそうですが、この『税金を減らす』には、大きく2つの意味があります。

  1. 出来れば税金は払いたくない
  2. 無理でも出来れば先延ばししたい

会計上2年間で償却する予定のソフトウェアを、1年で償却すれば、損金の計上を前倒しできるので、そのぶん税金の支払いを遅らせることが出来るます。これは2のケースですね。現金は、なるべく手許にあったほうがよいのでバッチグーですが、結局翌年度の税金は上がってしまいます。つまり無利息で借金してるのと同じ状態じゃね?という話になります。

単純に企業会計の利益に税率をかけた場合の税額と、支払うべき税額との差分のうち、いずれ納税する必要がある金額を『繰延税金負債』、逆に前払いした金額を『繰延税金資産』として計上します。こうした会計処理は、税効果会計と呼ばれます。

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上記は、Amazonの繰延税金資産と繰延税金負債についてまとめた部分です。これを見ますと、2015年から2016年にかけてDepreciation & amortization(減価償却費)から生まれた繰延税金負債が362百万ドルほどあります。この中には自社利用ソフトウェア由来以外も含まれていますが、2016年は(財務会計上の償却額よりも)早期償却によって手許のキャッシュを増やしていることに関しては違いないでしょう。

しかし2015年については、むしろ納税額を増やす効果が生まれています。

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結局、償却費の計上タイミングによる税額のズレは、あくまで期間のズレにしか過ぎないので、税額そのものが減るわけではありません。

日米の税金の比較

で1のケースに該当する『本当に税金が減った金額』についてもデータがありました。

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Amazonは、税率が低いとウワサのルクセンブルクにヨーロッパの拠点を置いています。Impact of foreign tax differential 税率の違いから生まれる差異も計算してくれていますので、ガッツリ節税しているのかなと思いきや、2014年・2015年については、むしろ米国よりも高い結果となっています。

見慣れない項目でポイントとなるのは、米国内生産活動に関連する所得の益金不算入(Income attributable to domestic production activities)でしょうね。なんというかまあ、WTOとかその辺は大丈夫なんやろうかと思いたくなる項目名ですが、94百万ドルほど減税されているみたいです。

あとTax Credits(税額控除)も119百万ドルくらい引かれてますねー。こちらは所得控除とかではなく、税金そのものを差し引いたものになります。細かな内訳はありませんが、

Our federal tax credits are primarily related to the U.S. federal research and development credit.

当社の連邦税額控除は、主に米国連邦研究開発拠出金に関連しています。

 とありましたので、ほとんどが研究開発関連でしょうね。そういや、我が国にも研究開発減税みたいな仕組みはあるよなーと思って、ちょっと調べてみました。

業種別の試験研究費による減税の結果がこちらです。

どどーん

業種 総額 うち資本金100億円超 大企業比率
農林水産業 0 0 -
鉱業 5 5 100%
建設業 19 17 94%
製造業 2779 2679 96%
 食料品製造業 29 25 85%
 繊維工業 7 7 99%
 木材、木製品製造業 0 0 0%
 家具、装備品製造業 0 0 -
 パルプ、紙、紙製品製造業 3 1 38%
 新聞業、出版業又は印刷業 0 0 -
 化学工業 225 221 98%
 石油製品製造業 0 0 0%
 石炭製品製造業 0 0 -
 ゴム製品製造業 1 1 100%
 皮革、同製品製造業 0 0 -
 窯業又は土石製品製造業 31 29 95%
 鉄鋼業 35 35 98%
 非鉄金属製造業 34 31 93%
 金属製品製造業 2 0 0%
 機械製造業 310 305 99%
 産業用電気機械器具製造業 374 358 96%
 民生用電気機械器具電球製造業 4 4 85%
 通信機械器具製造業 38 38 98%
 輸送用機械器具製造業 1395 1371 98%
 理化学機械器具等製造業 17 15 90%
 光学機械器具等製造業 18 18 100%
 時計、同部品製造業 2 2 100%
 その他の製造業 254 217 86%
卸売業 89 71 80%
小売業 0 0 0%
料理飲食旅館業 0 0 100%
金融保険業 24 18 78%
不動産業 1 0 0%
運輸通信公益事業 119 119 100%
サービス業 36 19 54%
その他 107 81 76%

※単位:億円

(出典:租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(平成28年2月国会提出) : 財務省よ試験研究を行った場合の法人税額の特別控除を抜粋)

もう圧倒的に製造業。もう少しいうと輸送用機械。さらに言うと(多分)トヨタ。だいたい全体の3割くらいがトヨタだと思っても良さそう。まあこんな状況だと、日本のソフトウェア産業も中々育たないよなーと思わんでもないですね。

ソフトウェアの評価の仕方

やっぱりもう少し、ソフトウェアにももう少しお金がまわるようにしないと駄目よねー、とおもいながら、こんな記事も読みました。

www.nurs.or.jp

書いてある内容は、非常に整理されていて分かりやすいのですが、コメントを眺めているとなんだかちょっと勘違いされている方がいらっしゃるようなので、付け加えさせて頂きますと資産計上することと価値を認めることは別です。

財務諸表に計上される資産は、大きく

  • 貨幣性資産
  • 費用性資産

の2つに別れます。貨幣制資産は、現金に売掛金などいずれ現金に変わるものを加えたもの。費用性資産は、商品や機械など、将来的に費用になるものを意味します。

ソフトウェアも費用性資産に含まれますが、費用性資産を計上するのは取得原価を適切な会計期間に負担させることが主たる目的です。車にしろ建物にしろ、あくまで『3年間使うつもりで作ったから、今期に費用処理するんじゃなくて繰り延べておこ』という程度の話です。ですので、簿価と時価が一致している必要も特にありません。

なにかこう『ソフトウェアの存在意義が認められたんや・・・!』と涙を流しているひとの姿が見えたような気がしますが、ただの会計処理の話であって、そんな情緒的なものではありません。

『融資の要諦は回収にあり』なんて言葉もありますが、銀行にとって最も重要な点は『期日通りにきっちり返してくれるのか?』です。ちゃんと売上がたって入金があればそれでよし。売上がなくとも、担保にできる資産があればそれでよしです。支払った金額が計上されているだけのソフトウェアは、直接的には意味はありません。

わたしは、銀行員でなければ融資を受けたこともないので実情はよくわかりませんが、『ソフトウェア』なんて怪しげな科目にいくら積まれていたとしても、『社長への貸付金』と同レベルの扱いしか受けられないんじゃないでしょうか?むしろ、含み益の大きな土地とかのほうが喜びそう。

むしろポイントは損益計算書でしょうね。

基本的に銀行は、赤字の会社にお金を貸そうとはしません。資産計上できれば、費用の発生タイミングを分散できますので、赤字になることは抑えられます。となれば担当者も審査を通しやすくなりますので、間接的には大きな意味を持ちます。

ただそもそも、ソフトウェアへの資金調達を間接金融で行うことは無理があるような気も致します。

受託開発を行うSIerであれば、売上の目処は立ちますので、銀行も融資し易いでしょう。また単純に、社内の生産性を高めるためのシステム開発に関しても、費用対効果を見積もれるのでよいでしょう。問題は、全く新規の事業を立ち上げるときです。

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全く新規の事業でも、製造業や小売業であれば『これくらいはいける』というラインは読みやすいでしょう。一方、完全に新規のソフトウェア開発は、そこが全く未知数です。そんな状況では、預金を毀損するリスクが取れない銀行には手が出せません。

これは『銀行がだらしない』というより『銀行(間接金融)ってそういうもんだから』というお話です。

そこのリスクが取れるのは、投資家だったり政府だったりするかと思いますので、まずはその辺りの仕組みづくりが大事じゃないでしょうか。

で、Amazonって儲かってんの?

最後にまわりまわって、Amazonって結局儲かってんの?というところについても考えておきたいと思います。同社は常々『フリーキャッシュフローの最大化が目的やで!』と主張しております。

ここでいうフリーキャッシュフローとは、本業で手に入れた現金(営業キャッシュフロー)から有形・無形資産の取得に掛かった費用(投資キャッシュフローの一部)を差し引いた値です。直近の値を見てみるとこんな感じ。

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いい感じに伸びてますねー。ちなみに、営業キャッシュフローの部分で、他社と比較するとこんな感じ。

  2014 2015 2016
Apple 59,713 81,266 65,824
Facebook 7,326 10,320 16,108
Google 14,136 16,348 19,478
Amazon 6,842 11,920 16,443
Microsoft 29,668 33,325 39,507
IBM 16,900 17,000 17,000
Oracle 4,068 9,850 9,856
Twitter 81 383 763

AFGAの皆様と、日本人に馴染み深い会社で比較してみました。なお数値は、直近3カ年ですので、会計期間は微妙にずれてるかもです。しかしこうしてみるとFacebookが比較的近い感じかな?

同社も、フリーキャッシュフローを整理していたので見てみるとこんな感じ。

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案外設備投資してるんですね。ちなみに税金関係もあったのでぺたり。税率35%からどの要素でどれくらいズレたのか?を示していますが、同社は税率の内外差での節税率が結構大きいですなー。

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また『Amazonの儲け』に関してこんな記事も読みました。

u-account.hatenablog.com

莫大に投下している研究開発費を、一旦全て資産計上して処理したらどうなる?といった観点の分析ですね。

営業費用に計上されていた研究開発費が全額資産計上され、その年から10年にわたって償却されたと仮定。1999年以前は2000年時点の規模の研究開発費を毎年計上していたと仮定。

研究開発費を資産計上するのかどうかは、度々論争になり、扱いが二転三転している項目でもあります。我が国では、現在は即時費用処理されていますが、過去には資産計上とされていた時期もありました。

ちなみに今後、世界中で採用される(ことになっている)国際財務報告基準では『研究』と『開発』に分けた上で、以下の条件に該当する『開発』については、資産計上しなければならないとなるようです。

  1. 使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
  2. 無形資産を完成させ、さらにそれを使用又は売却するという企業の意思
  3. 無形資産を使用又は売却できる能力
  4. 無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法。とりわけ、企業は、無形資産の産出物の、又は無形資産それ自体の市場の存在を、あるいは、無形資産を内部で使用する予定である場合には、無形資産の有用性を立証しなければならない
  5. 無形資産の開発を完成させ、さらにそれを使用又は売却するため必要となる、適切な技術上、財務上及びその他の資源の利用可能性
  6. 開発期間中の無形資産に起因する支出を、信頼性をもって測定できる能力

(出典:第2部 無形資産|IFRSポイント講座|新日本有限責任監査法人)

うへえ・・・面倒くせぇ・・・。

こうしたものを適切に会計処理しようとすると、結構な労力がかかります。ソフトウェアに関しても『全部スパンと費用処理できたら楽なのに・・・』と偉い人がいつも嘆いております。

確かに、開発に掛かった費用は、費用収益対応の原則にもとづき期間按分すべきであることは間違いないでしょう。問題は、紐付けるべき収益をどのように測定すべきなのか?でしょう。また開発費の資産計上を議論するのであれば、あわせて自己創設のれんの扱いなんかも考えていかなきゃならないでしょうしね。

会計はあくまで、ひとつの意見に過ぎず『計り知れぬものについては沈黙せざるを得ない』もまた一つ会計の真理です。

その辺を下手に操作されるよりも『そんなもんだ』と理解した上で、簿外資産としてここに分析を行いながら読み解いていくのがよいんじゃないでしょうか

おわりに

いろいろデータを漁っていますと、米国企業の提出している財務報告は、結構情報豊富で中々楽しめました。特に、税金の取り扱いについて、結構細かく開示してるんだなーという印象です。ただ、年の表記が2016→2015なのか2015→2016なのかが統一されていないのは読みにくいので、なんとかしてほしいですねぇ・・・。

また繰返しになりますが、学者でも会計士でも経営者でも無く素人の一般人の戯言でございますので、いろいろとツッコミどころ満載だと思いますが、ご笑納いただければ幸いです。ついでにいうと、あくまでデータを眺めて楽しかったポイントのおすそ分けですので、引用させていただいた記事の筆者のどなたにもケンカ売るつもりはありません。

らくからちゃデータスキ。ケンカキライ。

同じように『へぇー!!』と思って楽しんで貰えれば幸いです

ではでは、今日はこのへんで。