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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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売上原価対立法とは何か

会計・簿記


個人的な備忘録を兼ねて、書き残して置く。

売上原価対立法とは、商品売買の記帳方法のひとつ。その他のものも含め、商品売買の記帳方法としては

  1. 分記法
  2. 三分法
  3. 売上原価対立法
  4. 総記法

の4つがあげられる。(他にあるかな)これは、『何か買った』『何か売れた』といった時に、どういった仕訳を計上するのか?についてのパターンをまとめたものと考えてもらえれば良い。簿記の授業では、『こういった時はこうします』といったレベルのことは教えてもらえるが、『それぞれどういった利点があるのか?』については、中々踏み込んで教えてくれる教授は少ない。そこで、これらの特徴と使い分け?について考えてみたことをまとめてみる。 

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商品売買の記帳方法の特徴について

 それぞれの商品売買を行った時の仕訳と各勘定の残高について、

  1. 月初在庫は50円
  2. 同商品を100円で仕入
  3. 同商品の80円分を120円で販売

といったケースで確認してみる。

分記法

分記法とは、商品売買の処理を『商品』勘定と『商品売買益』にわけて管理する記帳方法である。仕訳としてはこんな感じになる。

■仕入時
商品 100 / 現金 100
→残高 商品:150円

■売上時
現金 120 / 商品 80 + 商品売買益 40
→残高 商品:70円+商品売買益:40円

■決算時
特に何もしない
→残高 商品:70円+商品売買益:40円

分記法の最大のメリットは、記帳を適時行うことが前提だが、財政状態及び経営成績についてリアルタイムに把握することが出来ることである。適時記帳を行う為には、売買する商品の評価金額(原価)を即時判断することが必要となる。これは、多くの企業にとって大きなハードルになる。

企業間の商取引では、ある一定の期間において行われた取引量に応じ、ボリュームディスカウント(割戻)を受けられる契約形態は多い。その場合、商品の購入単価は、一定期間が経過するまで定まらない。また、多種多様な商品を取り扱っている企業では、それぞれの商品の評価金額を維持管理することは非常に困難な作業である。

その為、『分記法』は現実的ではないという評価が、簿記の教科書等では多く見受けられる。しかし、前記した条件の反対条件を取るような企業では『分記法』を採用することは困難なことではない。というとどういった企業かというと、

  • 商品の原価を標準原価として一元管理しており、瞬時に原価が確定出来る。
  • 取扱品目数が極めて少ない。
  • 製造会社の販社であり、評価額が変動することはありえない。

なんて企業であれば、『分記法』の採用は不可能ではない。ただ、世の中の一般的な企業の大半、次に上げる三分法を採用している。

三分法

三分法とは、商品売買の処理を『仕入』『売上』『商品』の3つの勘定で管理する記帳方法である。仕訳としてはこんな感じとなる。

■仕入時
仕入 100 / 現金 100
→残高 仕入:100円

■売上時
現金 120 / 売上 120
→残高 仕入:100円+売上:120円

■決算時
売上原価 50円 / 繰越商品 50円
売上原価 100円 / 仕入 100円
繰越商品 70円 / 売上原価 70円
→残高 売上:120円+売上原価:80円+繰越商品:70円

商品を売買する際に『商品が動いた』という事実に注目するのではなく、『お金が動いた』という事実に注目して行う記帳方法である。三分法の最大のメリットは、売上計上時に、評価額を意識すること無く処理することが出来ることである。この方式を採用する利点として、購買管理・販売管理・在庫管理を行う各部署を分割できるということがあげられる。

調達チームはひたすら購入時の金額を記帳しその支払状況を管理し、営業チームは販売時の金額を記帳し入金状況を管理する。そして在庫管理を行う物流チームは、調達チーム・営業チームが上げてきた結果を期末に統合し、評価価格を決定し、棚卸数量とあわせて在庫金額を決定し評価を決めれば良い。

そういった意味で、組織の大規模化に対応した方式であるとも言える。

ところで、三分法については『しくりくりし』と『うくうしくう』という謎の呪文を簿記の授業では教えられる。今回の記帳例は後者であるが、前者で行うとこうなる。

■決算時
仕入 50円 / 繰越商品 50円
繰越商品 70円 / 仕入 70円

ちなみにこれは、『売上原価勘定なんてわざわざ使うのって面倒臭くね?仕入で全部管理すればいいんじゃね?』という会社向けの『簡便法』である。当期の仕入の金額と、期初在庫・期末在庫を加味した売上原価は別のものとして管理されるべきであるので、『うくうしくう』が本来行うべき仕訳である。

売上原価対立法

そして今回のテーマである『売上原価対立法』である。これは、SAPなどのERPパッケージを導入する際には、選択肢としてよく出てくるようだ。『売上原価対立法』の特徴は、分記法をベースに、三分法の良さを取り入れた方法、というようなことが言える。

■仕入時
商品 100 / 現金 100
→残高 商品:150円

■売上時
売上原価 80 / 商品 80
現金 120 / 売上高 120
→残高 商品:70円+売上原価:80円+売上120円

■決算時
特に何もしない
→残高 商品:70円+売上原価:80円+売上120円

ERPパッケージを導入すると、標準法や移動平均法で、リアルタイムな在庫評価価格の決定が出来るようになる(ものもある)。その時、分記法を採用すれば、在庫の金額もリアルタイムに管理することが出来る。ただし、分記法の場合、商品売買の結果は『利益』ベースでしか管理できない。これは、売上高と売上原価を比較して、売上利益率なども見たい場合、大きなデメリットとなる。

そこで、売上原価対立法では、売上計上時に『利益』を純額で計上するのではなく、売上と売上原価という総額ベースで計上することによって、分析の選択肢を増やす事ができる。というかっこいい言い方もできるが、上場企業の財務諸表で、『売上高』が無く『売上利益』から始めるなんていう諸表はちょっとイレギュラー過ぎるので、財務諸表の開示の仕方を他社と合わせる、という意味合いも強いのだろう。

総記法

物を買っても売っても、とりあえず相手勘定は『商品』にしておけ。というワイルドな記帳方法。メリットは、難しいこと考えずに、商品勘定一本でお手軽に管理出来ることである。

■仕入時
商品 100 / 現金 100
→残高 商品:150円

■売上時
現金 120 / 商品 120
→残高 商品:30円

■決算時
商品 40 / 商品売買益 40円
→残高 商品:70円+商品売買益:40円

商品勘定の残高は、原価・売価が混在する混合勘定となるため、期中は何の意味を持たない。期末に、商品売買益を商品から控除する処理が必要となる。はっきり言って、何だか良くわからない会計処理であるが、これでも税理士簿記論や日商簿記1級で出題されるようだから恐ろしい。おとなしく、簿記4級専用の会計処理にしておけばよいのに、と思わなくもないのだが、何か狙いがあるのだろうか・・・。

 

以上、どこかの誰かの役に立てば幸甚の至りである。