ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

予備知識不要!生命・進化・遺伝に関する『読み物』7冊

こんにちは。らくからちゃです。

ここ暫く雨続きですねえ。梅雨ってこんなに降るものだっけと思いながら日々過ごしております。今週の土日は晴れてくれるといいのですが、降ったら降ったで、おうちでまったり過ごすのもいいですね。

しかし、じめじめしていて過ごしづらいですね。特に、窓際が結露し、その側にカーテンなんて有ると、気がつけばカビで真っ黒になってしまっていたりします。ただ、そんな小さな生き物の仕業を見ると、彼らは一体どこから来たのだろうか?進化の歴史の中で、我々とどう関わりあって来たのだろうか?漠然とそんなことが気になるときがあります。

今日はそんな生命の歴史や、進化の過程、遺伝子の構造などなどについて扱った本の中から、いわゆる教科書的ではない『ずぶの素人でも楽しめる読み物的な本』をピックアップさせて頂きます。

と同じような形で進めていきたいと思いますので、皆様の知的好奇心を満たすことが出来れば幸いです。

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

 

哲学する分子生物学者が問う「命の不思議」

生物を構成する分子は日々入れ替わっている。
私たちは「私たちが食べたもの」にすぎない。
すべての生物は分子の「流れ」の中の「淀み」なのである。
しかし、その肉体、タンパク質の集合体に、なぜ「いのち」が宿るのか。
遺伝子工学、最先端医学は生物を機械のように捉えていないか。
生命の「背景」にある「時間」を忘れていないか。
いったい、生命とは何なのか。哲学する分子生物学者が永遠の命題に挑む!

まずは、福岡伸一先生の名著から。福岡先生の本と最初に出会ったのは、確か高校生の時に読んだ『生物と無生物のあいだ』だったかなあ。いわゆる還元主義(デカルト主義)的なものに疑問を感じていたので、『そう!こういうことが言いたかったんだよ!』と膝を打ったのを覚えてますね。

ちょっと横道にそれましたので本論に戻ります。この本は、『ただの物』にすぎない分子の組み合わせでしかない生物に、どうして『生命』が宿るのか?について、分子生物学者である著者が考え尽くした一冊です。

分子生物学とは、タンパク質やDNAといった、いわゆる『もの』と『いのち』の境目に切り込んでいく学問です。その、まさに狭間の中で、『何事も細かな要素に分解していけば分かるだろう』という近代科学の限界にぶつかるわけですね。

『生物学』という枠組みを越えて『科学全般』の見方と考え方を変えてくれる名著です。世界は分けてもわからない もお勧めです。

イヴの七人の娘たち

人類は皆、20万年前のアフリカ女性「イヴ」の子孫であるといわれている。オックスフォード大学で遺伝学の教授を務める著者はさらに、6億5000万人にのぼる現代ヨーロッパ人の母系祖先は7人の女性に分類できるとしている。この女性たちに名前をつけると、アースラ、ジニア、ヘレナ、ヴェルダ、タラ、カトリン、ジャスミン。それぞれ、別の時代に別の場所で生活を送っていた女性たちである。

全ての人類は、その系譜を辿って行くと、アフリカに住んでいた、たった一人の女性に行き着く。そんな話を聞いたことはありませんか?この話は、現生人類とクロマニョン人との分岐地点を探る中でわかったことです。

それは、人間を含むほぼ全ての生き物の細胞の中に含まれている『ミトコンドリア』と呼ばれる小さな器官を調べることによってわかりました。ミトコンドリアは、細胞が活動するエネルギーを生み出すという、大変重要な器官です。これが、大変興味深いことに、実は我々とは別種の生き物のような存在で、それぞれがDNAを持っています。

ミトコンドリアのDNAは、母親を通じてのみ受け継がれて行きますので、その内容を解析すれば、概ねどの時期に枝分かれしていった人々の祖先か?といったことがわかるそうです。その結果を元に、現生人類が世界中へ広がっていった経路やその繁栄の歴史を紐解いてくれる一冊です。

 『つながり』の進化生物学

「つながり」の進化生物学

「つながり」の進化生物学

 

歌う動物、言葉をもったヒト。媚びを売るメス鳥?言葉をまねるゾウ?小鳥も赤ちゃんも、「文法の種」をもっている。高校生と考える、コミュニケーションの起源とこれから。

もともとは、高校生向けの全4回の講義をまとめたノート。テーマは、『コミュニケーション』『言葉』『感情』『心』。生物がどのように仲間と心を通えあわせて行くのか?といったことについて、数々の事例と研究成果を元に、すらすらと読み解いていくことが出来ます

動物が動物たる所以のひとつが、『意思』を持っていること。そして、意思は、コミュニケーションの中で育まれていくということを、色々な事例をもとに紹介していく本です。一番、興味深かった事例は、セキセイインコの『いじめ』かなあ。どんな世界でも、動物が接しあう中で、色んな事件が起きるようですね。

生物学というより、社会学が好きな人に良い本かも。より良いコミュニケーションの為に、そもそも『誰かとつながるってどういうこと?』を見直すのに良い一冊です。

 ウイルス・プラネット

ウイルス・プラネット (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

ウイルス・プラネット (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

 

最悪の敵か、最強の味方か。地球は、ほぼアイツら(ウイルス)でできている。知っていそうで知らなかった、驚きエピソードの数々。

一冊丸ごとウイルスについて取り上げた本。天然痘ウイルスなど、世界的に著名なウイルスを1つずつ全部で13種類とりあげられています。『ウイルスとは』と大上段に構えられると引いてしまいますが、個性あふれるウイルスが紹介されていく中で、少しづつ『ウイルスとはなにか?』が学んでいける名著です。

細かな知識は『雑学』といった感じなのですが、それがどんどん集まって体系化されていくことによって『知識』へと変わっていきます。また、『人間のゲノムのうち8%はウイルス由来』『進化とは、突然変異ではなく、ウイルスのもたらした現象では?』などの、最新の研究成果についても、それとなく触れられており、大変興味深い内容です。

日常生活とウイルスってどんな関係が有るの?そんな人におすすめです。

 

 眠れない一族

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

 

ヴェネツィアのある高貴な貴族出身の一族は、謎の不眠症に苦しんでいた。この病気は中年期に発症し、異常発汗や頭部硬直、瞳孔収縮を引き起こし、やがて患者は不眠状態に陥って死んでしまう。この一族の数世紀に及ぶ物語を軸に話は展開、やがてこの病がクールー病、狂牛病と同じプリオン病だとわかる。プリオン病の起源を探るうちに、80万年前の食人習慣へとたどり着く。

最初に言っておきます。この本は、『良い意味で』タイトル詐欺の本です。このタイトルを読んで、どんなことを思い浮かべます?何か猟奇的な食人を行う一族への祟みたいな感じ?

細菌でもなく、ウイルスでもない、そして遺伝的疾患でもない。そんなある病に悩む一族がいます。彼らの病を紐解きながら、似たような症例を探っていくと、全く今までにないパターンの『病原』が発見されます。それこそが、今でも大きな問題となっている『異常プリオン』だったのです。

これは、『科学の本』というよりも、よく出来た『ミステリー』です。勿論、研究者の飽くなき探究心が元になっていることは間違いないのですが、それ以上にそれをまとめた筆致が素晴らしい。時間がたつのを忘れてしまうほど面白い一冊ですので、乗り過ごしにはくれぐれもご注意ください(笑)

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 死ぬ瞬間―死とその過程について

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

  • 作者: エリザベスキューブラー・ロス,Elisabeth K¨ubler‐Ross,鈴木晶
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 文庫
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死とは、長い過程であって特定の瞬間ではない―人生の最終段階と、それにともなう不安・恐怖・希望…二百人への直接面接取材で得た“死に至る”人間の心の動きを研究した画期的な書。

ちょっとばかり、今回のテーマからは外れますが、『生』について取り上げるのであれば、その対局にある『死』について取り上げた本も含めたほうがいいかなあと思ったのでご紹介致します。

生あるものは、遅かれ早かれ死を迎えるのは、生命の不思議の一つですね。大抵の他の生き物にとって『死』とは突然のことであり、それはひとつの日常からの断絶に過ぎません。一方、多くの人間にとって『死』とは予期できることも多く、それは日常の連続の先にあります。それが故に、ひとは自分の生について悩み、死を受け入れることに苦しみます。

本書は、『死』を迎える200人の人たちを観察した医師が、患者たちがいかに葛藤し、苦悩して死んでいったかについてまとめた名著。介護やターミナルケアの分野では古典として読み継がれている一冊です。

素晴らしい人間部品産業

すばらしい人間部品産業

すばらしい人間部品産業

 


★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?

血液、臓器から、胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた……。
人間部品産業(ヒューマンボディショップ)のリアルな実態に警告を発した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版! 福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。

 最後はこちら。冒頭でご紹介した福岡先生の訳本。研究に明け暮れる中、ふと手にとった一冊の中では、どんどんと不可侵であるべきはずの『身体』が商品化され、人類の共有の財産であるべき『遺伝子』の情報が取引の材料として使われる。そんな社会問題にフォーカスした本です。

ここ最近、結婚はしたくないが子供は欲しい女性や、不妊に苦しむ女性、同性愛カップルに対して『精液の提供』をする男性が増えているそうです。たいていは、無償かつ性的接触の無い形での提供になるそうですが、中には多額の費用を請求したり、『自然な方法での妊娠』を迫る人もいるそうです。

そんな男性を『羨ましい』と思うのは勝手でしょうけれども、そうやって生まれてきた子供はどんな気分なのでしょうか。人間の最も重要な尊厳が、市場経済によってどんどんと侵されていく。そんな、身の毛もよだつ社会ドキュメンタリーです。

 

以上、7冊をピックアップしてみました。冒頭にもご紹介した通り、どれも事前の知識なしで読み解け、小難しいことを覚える必要はなく、楽しく読み進められる本ばかりです。梅雨空の元、外に出るかわりに、ゆっくり紅茶でも飲みながら、本でも読んで過ごすのはいかがでしょうか?

他にもおすすめなどあれば、ブコメで頂けると嬉しいです♪

 

ではでは、今日はこのへんで