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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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世代間格差の前に考えるべきこと

経済・社会


こんにちは。らくからちゃです。

なでしこジャパン、残念でしたねー。普段、スポーツには全然関心がなかったのですが、こればっかりはどうなることかと、注目していました。しかし、選手を見ていると、割と見知った顔ばっかりですね。年齢を見ても、1987年生まれのわたしよりも年上の人が多いように見えます。年の功も否定しませんが、女子サッカーの裾野も広がってきたようですので、そろそろ世代交代が必要じゃないでしょうか?

さて、話は変わりますが、『世代』というといつも話題になるのが、『年金受給額の世代間格差』。よく、こんな画像が出てきますが、

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こんなものを見てしまうと、怒りしか出てきませんよね。

でも、考えてみてください。先日、新幹線にて70歳の男性が月額12万円の年金に悲観し、焼身自殺を図り、更に周囲の全く無関係の人まで巻き込むという痛ましい事件が有りました。

現在70歳ということは、『もらい得世代』である1940年生まれだった訳ですよね?年金制度の『勝ち組』であるはずなんですよね?なのに、何でこんなことになってしまったのでしょうか?果たして、若者は高齢者に対して中指立てるだけでいいのでしょうか?

今日は、ちょっとだけ見方を変えて『年金と格差』について考えてみたいと思います。

年金の世代間格差

ところで皆さん、年金の保険料率ってどのくらいかご存知です?

国民年金は月額1万5590円の定額制ですが、厚生年金の保険料率は17.4%です。労使折半のため、直接給与から引かれるのは8.7%ですが、それでも大きな金額には違い有りません。

給与明細を見る際は、たまには残業代と休日出勤手当以外も是非みてみてください。『何だかずいぶん引かれているなあ』と思ったら、実は所得税や住民税より『厚生年金保険料』のほうが多かったって人は結構多いと思います。

でも、厚生年金の保険料って、昔からこんなに高かったわけでは有りません。

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もともと開始当初は、2.3%からスタートしました。そこからだんだんと増加し続け、最終的には18.3%まであげるそうです。年金の『世代間格差』の元凶がこのへんにあるわけですね。

誰が高齢者の面倒を見るのか

 えーっと、皆様どう思われます?これだけ聞いたら、納得出来ないですよね。どうしてこんなことになっているんでしょう?まずは、相手方の話も聞かないと、ということで、まずは厚生労働省発表『年金制度における世代間の給付と負担の関係について』を見てみましょう。

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つまり、『昔は、年金なんてなかった。今の高齢者は、無年金の高齢者を支えながら生活してきていた。一方、若者世代は、自分の親の経済的な面倒を見る必要が無いためその分生活が楽になっているはずだ。』ということですね。

うーん。どうにも納得いきません。確かに、金銭的な負担は少なくなったのかもしれませんが、気になるのはこれ。

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(1 出生数、出生率の推移 - 内閣府より)

1945年生まれだと、ちょうどベビーブーム世代ですよね。兄弟姉妹も多く、支え合える部分も大きかったのんではないでしょうか。というか、親の世話は長男に押し付け、都会で悠々都市生活なんて人も少なくは無さそうですよね。

更に、こんなデータも。

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((2)高齢者の介護|平成24年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府)

介護にあたって、事業者を活用出来ているのは13.3%。子供やその配偶者の負担は大きい現状に変わりはありません。

さらに、もっと衝撃的なデータがこちら。

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介護のために、離職・転職した人は、年間12万人を越え、特に女性に対し重たい負担がのしかかっています。まさに、75歳頃の『年金制度の勝ち組』を介護するために。当時は、女性の働く場所が少なかったこともあるのでしょうが、親の介護は子の家計に対して直接的な打撃になりかねません。

もちろん、彼らだって親の介護くらいしたでしょう。当時は、今のような介護事業者も居なかったため、全て家族の負担になっていたのも事実でしょう。ただ、少なくとも親を支える子供の人数は多かったでしょう。

しかも、親が生活保護を受けようとしたなら、子が支えよとまで言われるんですよ?本当に、『親の負担は減った』と言えるのでしょうか?

格差を拡大する年金というシステム

ところで、年金制度における世代間の給付と負担の関係について』を見ていると『払い損なんてことねーよ』と言いたいのか、こんな図表が載せられています。

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ふーん。支払額の2.3倍貰えるんだったらいいじゃんと思いがちですが、これはあくまで本人の支払った金額ベースでの試算です。会社が負担している金額は含まれません。実はここに、年金について考えるもう一つの要素があります。

冒頭お伝えしたように、厚生年金は本人と会社で8.7%ずつ折半して払います。これは、会社があなたのために支払っているお金を『賃金』と捉えると、厚生年金に加入している『正社員』の賃金は、実質的に8.7%多いということになります。これは、ありとあらゆる『額面賃金』をベースに計算されるものがそれだけ過少に処理されます。

さらに、税金の計算において、年金支払額は『社会保険料控除』として除外されます。我が国では、所得税の計算に累進課税制度をとっています。お金持ちほど、税率が上がっていく仕組みのことです。ですので、『控除』はお金持ちであればあるほど有利な制度なんです。

例えば、税率40%の人の所得から100万円控除すれば、40万円の節税になります。一方、15%の人の所得から100万円控除しても、15万円の節税にしかなりません。これでは、本来の趣旨に反してしまってい、格差を一層拡大しているようにも見えます。

本当に恐れなければならないこと

ただね。そんなの社会全体から見たら小さな話ですよ。わたしが個人的にもっと恐れているのは、『貧困の連鎖』なんです。以前、こちらの記事で取り上げましたが、

まず、年金って結構貰っている額にばらつきが大きいんですよね。

そしてもうひとつ、一定の年金収入を超えると『介護・医療』への支出額が上がります。これは、『お金持ちは子供に頼らず介護サービスを利用できる』ということでしょう。一方、現役時代の所得の少ない人はというと、年金は上がらないまま、介護や医療にかかるコストだけは上がっていきます。そういった支出をカバーすることが出来ないと、子供に頼らざるを得なくなります。

介護は家族にとって大きな負担です。仕事を辞めなければならず、収入を失う可能性も上がります。そうするとどうなるのか。親の所得が低いがゆえに、不安定な非正規雇用につかざるを得ない。その結果として、厚生年金に加入することができず・・・といった貧困の連鎖を生み出す可能性が上がります。

世代間格差を問う前に

『世代間格差』の議論をしていると、こんな絵も良く出てきますね。

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(明日の安心 社会保障と税の一体改革を考える)

2050年には65歳以上ひとりに対し、20から64歳は1.2人になると言われています。個人的には、この図あんまり好きじゃないんですよねえ。これだけみると、一方的に若い世代が損をするように見えます。

これね、本来はこうあるべきなんです。

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支える人数が減ることに違いはありません。でも、社会は日々進歩してきたということを忘れてはいけません。

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さすがに、厚生労働省の資料に、ドヤ顔でこんな図を載せられたらいい気分はしませんけどね。

でも確かに、社会資本ストックが増大しているのは事実ですし、あらゆる面で生産性は日々改善されています。そういった側面もあるので、『世代間の格差』って、お金の問題だけにとどまらず、非常捉えにくい問題です。(勿論、これはこれで手を打つ必要はあると思うのですが)

だからこそ、せめて『同世代内の格差による問題』くらいは解決しておいてくれ、そしてそれを我々におしつけないでくれ、ということが言いたいのです。『たくさん払ったんだからたくさん貰って当たり前』なのかもしれません。ですが、自分たちと同じ時間を過ごした仲間たちの困窮から目を逸らさないで欲しいと思います。

年金には、大きく分けて3つの機能があると思います。まずは、『強制貯蓄』。生活保護のお世話になる人を少しでも減らすために、きちんとお金を貯めておきましょうね、と仕向ける機能があります。次に、『保険』。人間何歳まで生きるのかは予測できませんから、想定以上に長生きしてしまったとしても、生活出来るような保険としての機能もあります。そして最後に、『所得再分配』。年金というツールを使って、全員が生活出来るレベルにまで所得を均すという機能もあるはずです。

まさに、年金こそ『既得権益の本丸』ですので、そこにメスを入れるのは並大抵のことでは無いと思います。でも、次の世代に禍根を残さないためには、同一世代内の年金の分配額を均等化していく必要もあるのではないでしょうか。

 

ではでは、今日はこのへんで。