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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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99%減資とは何か?

会計・簿記


いっときは、日本を代表する勝ち組企業と持て囃されたシャープが、大変なことになっているようですね。

もともと1218億円あった資本金を1億円まで減らし『シャープ』な資本構成となり、税法上の中小企業サイズからやり直したい、ということでしょうか。

ところで、文中にもありますが、

 資本金を減らし累積損失を一掃しておけば、業績回復に伴い、今後配当に回す利益を増やすことができる。公募増資や資本提携なども進めやすくなる。株主にとっては、資本金を減らすだけでは、1株当たり価値は減らない。

これ、どれくらいの人が理解出来たんでしょう?(゚Д゚)ハァ?と思った方のために、会計屋としての簡単なまとめを作ってみます。

そもそも資本金ってなんだっけ? 

まずは、根本的な質問。『資本金とはなにか?』を会計を学んでいない人に説明することは、 結構骨の折れる話です。詳細は、下記にもまとめてみましたが、一度振り返りながら、『減資』の意味について考えてみましょう。

 

lacucaracha.hatenablog.com

資本金の意味するもの 

では、会社のお金の流れと合わせて、その意味を考えてみましょう。 

1.事業の開始

どんな事業を始めるにも、まずは元手が必要ですね。私は、事業を始めるにあたり、100万円の資金を事業用資金として投資することにしました。この時点での、会社の状態はこんな感じですね。

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用語の確認ですが、

  • 総資産・・・会社が自由に動かせるお金、もの、権利を金額評価したもの
  • 純資産・・・総資産 - 負債(借金)を引いたもの

となります。この段階では、借金は1円も有りませんので、総資産100万円 = 純資産100万円となります。この純資産は、ざっくり以下のように区分出来ます。(本当はもっと細かいのですが・・・。)

  • 資本金・・・株主(オーナー、社長)が、事業用に提供した部分
  • 剰余金・・・過去に発生した儲けを積み上げた部分

今のところ、お金を振り込んだだけなので、何も儲けは発生していませんね。ですので、純資産100万円の内訳は、全て資本金です。

2.資産構成の変更

さて、現金だけ持っていても何も始まりませんので、ひとまず商品を50万円分仕入れて見ました。

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現金が50万円減って、商品が50万円分増える。会計の世界では、現金以外のものの評価額は、基本的に買ってきたときの金額で行います(勿論、例外はあります)。これを、取得原価主義といいます。

この時点では、単純に『総資産』の内訳が変わっただけで、総資産自体に増減はありませんので、純資産も変わりませんね。

3.利益の発生

商売の基本は、安く仕入れて高く売る、です。今回仕入れた商品は、うまいこといき、なんと倍の値段で売ることが出来ました。

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現金は、50万円のものが100万円で売れたので、50万円の儲けですね。会社の総資産も、50万円分増加しますので、純資産も50万円増加します。この50万円は、事業を行った結果の利益なので、『剰余金』になります。

4.借入の実施

儲かっている以上、次の商いでは、もっと大きなチャレンジをしたくなりますよね。その為には、手持ちの現金を増やすことが必要です。その方法は色々ありますが、今回は銀行からお金を借りることにしました。そうすると、会社の状態はこんな感じになりますね。

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借金をして調達した50万円と、手許の150万円で、どーんと4倍の200万円を調達しました。うまくいくと良いのですが・・・。

5.欠損金の発生

こういう時は、大抵うまく行かないんですよね。200万円かけて仕入れた商品は売れ行きがよくなく、放っておいても傷むだけなので半値で叩き売ることにしました。

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もともと200万円で仕入れた商品が100万円にしかならなかったので、100万円の損失の発生です。今回は借金がありますので、総資産100万円 - 負債50万円 = 純資産50万円になります。この時、マイナスになった分は、剰余金のマイナス(欠損金)として処理します。

6.資本金の取り崩しでの補填

欠損金が発生したからといって、今までの利益が吹き飛ぶだけの損失が出たというだけで、即会社が倒産したりするわけではありません(勿論良い状態で葉ありませんが・・・。)。純資産がプラスである以上、借金を返済しても手許に資産は残るわけで、まだまだ再チャレンジが出来る状態です。

純資産そのものがマイナスになった状態(この例だと、総資産が50万円未満)になった状態を『債務超過』と言います。これは、大変よろしくない状態ですが、まだ倒産では有りません。

手許にあるお金全てをかき集めても借金が返せないとしても、借金の返済がまだ先であれば、それまでに帳尻を合わせば良いからですね。ただ、返済期日までにお金が集められないと、これはアウトです。これを、『債務不履行』といいます。

では、今回のシャープの状態はどうでしょうか?まだいまのところ、辛うじて『欠損金の発生』で収まっています。今回、シャープが実施する『減資』はこんな感じのイメージになります。

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同じ、純資産の中で、資本金を取り崩して、剰余金のマイナスを穴埋めしたんですね。特に、総資産・負債・純資産の額が変わるわけでなく、純資産の内訳が変わっただけです。

では、何のためにこんなことをするのでしょう?

資本金と剰余金の違い

ここで、その意味を理解するためには、同じ純資産の中でも『資本金』と『剰余金』がどう違うのかを知る必要があります。

資本金は事業を起こした時の元手、剰余金はそこから生まれた利益でした。株主は、趣味の為に、元手を提供しているわけではありません。そこから生まれた利益を美味しく頂くために投資をするわけですね。ですので、利益が出た以上、その分を『配当』として頂く権利があります。

ただ、配当はあくまで『剰余金』からしか行ってはいけないルールになっています。お金を貸す側としては、貸したお金がちゃんと帰ってくることが重要です。商売は、いつも上手くいくわけでは有りませんので、『会社の外に出て行かない、予備のお金』がちゃんと残っていることが重要です。『資本金』の払い戻しを認めてしまうと、『ヤバい』と思った時に、自由に株主がお金を配当として回収することが出来てしまうので、資本金からの配当は禁止されています。

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よって、

  • 株主・・・いつでも配当に回せる剰余金が多いほうが嬉しい
  • 銀行・・・会社から出て行かない資本金が多いほうが嬉しい

といえます。

株主にとって嬉しい減資を何故するのか?

良く勘違いされる方も多いようですが、100%減資(=倒産)以外の減資は、『今まで資本金として拘束されていた部分で、赤字の補填が出来て、利益だけで欠損金を解消せずとも配当が再開できるようになる』ため、基本的に株主にとっては有利、銀行にとっては不利な選択です。その為、減資を行う為には、会社法449条にて

株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。

では、最後の疑問です。シャープは、債務超過すれすれの大変厳しい状態です。何故、敢えて銀行にとって不利な選択をするのでしょうか?

それは、銀行自身が銀行だけでの再建が難しく、新たな出資者(株主)を呼びこむ必要があるため、少しでも財務状況を良くする必要があったからじゃないのかな、と思います。

こんなずたぼろの状態で、『何十年かは配当出ません!』という会社の株は、中々手出しがしづらいですよね。一方、既に信用はボロボロですので、資本金が一気に減ったところで、もはや余り違いは生まれません。

今後の見通し

勿論、これから株主は『増資による株式の希薄化』という形で責任を取ることになります。今の状態だと、誰かに資金を出して貰わないと、にっちもさっちもいかない状態ですが、こんな会社に投資する以上、金額が少なくとも『配当が貰える権利』は多めに貰わないとやってられません。

そうして、『配当が貰える権利』が安売りされることで、既存株主は自分の持つその権利の値段が下がってしまうことによって、制裁を受ける形となります。

もはや、総合家電メーカーの看板を掲げている会社はシャープとパナソニックくらいになってしまいましたが、『日本的な大企業製造業』も、必要とされる場はきっと出てくると思います。

これからの、復活に期待したいですね。

※続編