ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

標準原価と実際原価の比較

なんだか、2年も前に中途半端な形で投稿した

が、未だに流入アクセスがあるようなので、いまさらながら続きを書いてみます。

改めて標準原価計算と実際原価計算の違いについて考えてみる

 

2年前のおさらいになりますが、

  • 標準原価計算:予め計算した標準原価を利用する。
  • 実際原価計算:事後に計算した実際原価を利用する。

として計算する計算方法になります。『実際原価計算』を行うにあたっては、必ずしも『実際』のコストである必要は無く、本当の意味での『実際』が分かるまでは、『予定』の金額を利用することが可能です。

そもそも原価計算って何のためにするもの?

この両者の計算を比較する前に、そもそも論として『原価計算は何のために行うもの』かを考えなおしてみたいと思います。原価計算基準によると、その目的は5つに分かれます。

  1. 財務諸表作成目的 ・・・ 期末の在庫額と売上原価の算定
  2. 価格計算目的 ・・・ 標準原価を設定し、販売価格算定に利用
  3. 原価管理目的 ・・・ 標準原価と実際原価の差異を分析し、能率改善に利用
  4. 予算管理目的 ・・・ 必要な資金や、利益見通しを計画する際に利用
  5. 基本計画設定目的 ・・・ 投資や要員配置を検討する際に利用

とまあ、様々な目的が謳われております。実際の企業でここまで原価計算が利用しつくせている会社はほとんどありません。ちなみに、1番から順番に、『やれるならしたほうがいいけど、そこまでやってる余裕(暇・金)は無いなあ』という項目になります。

上場企業であっても、良くて2番、悪いと1番までしか利用できていません。2番以降は、標準原価計算をきちんと行っていないと実現することが出来ないのですが、上場企業でも、『原価計算=経理のやっている財務諸表を作るための作業』という位置づけで止まっている会社も少なくありません。

標準原価計算と実際原価計算で楽なのはどっち?

つまり、たいていの会社で『原価管理に原価をかけてはいられない』というのが現状で、税法上・金商法上、必要に迫られて行う、期末在庫・売上原価の算定程度にしか原価計算は利用されていないのが実情です。となると、『如何に楽が出来るか?』が重要なポイントになってきます。

正しく、標準原価を計算しようとすると、以下の情報が必要になります。

  1. 各製品レベルでの、期初の生産計画(固定費按分の為)
  2. 各製品のコストカード(製品構成表)
  3. 労務費・経費の予算
  4. 原材料の購入単価

これらの情報が、実態と一致して初めて、標準原価は実際原価と近似します。この乖離が大きい場合、税法上標準原価を期末在庫の評価単価として利用することが出来ません。

5-3-3 原価差額が少額(総製造費用のおおむね1%相当額以内の金額)である場合において、法人がその計算を明らかにした明細書を確定申告書に添付したときは、原価差額の調整を行わないことができるものとする。この場合において、総製造費用の計算が困難であるときは、法人の計算による製品受入高合計に仕掛品及び半製品の期末棚卸高を加算し、仕掛品及び半製品の期首棚卸高を控除して計算することができる。(昭55年直法2-15「七」により改正)

(注) 原価差額が少額かどうかについては、事業の種類ごとに判定するものとするが、法人が製品の種類別に原価計算を行っている場合には、継続して製品の種類の異なるごとにその判定を行うことができる。

第3節 原価差額の調整|基本通達・法人税法|国税庁

製品点数も少なく販売数量も安定した企業であれば良いのですが、市場のニーズに応えるため製造計画は都度改定され、新品目もどんどんと追加されていくような会社であれば、標準原価の精度を維持していくことは、現実的ではないケースも多々発生します。

 実際原価はダメな原価?

かつては、『実際原価は、標準原価と異なり、現場での能率によって左右される。在庫の価格は、科学的に設定された標準原価で評価されるべし。』といった風潮がありました。原価管理機構の改善テーマとしても、『標準原価の導入』は人気のテーマでした。

しかし、近年の経済環境からいって、製品1品毎に正確な標準原価を算定することは困難です。むしろ、リアルな原価が測定できる、実際原価への期待や評価が高まり、むしろ『タイムリーな実際原価の把握』がシステム導入のテーマになることも増えてきています。

財務会計と異なり、社会情勢の変化を受けづらいとされてき管理会計についても、今後は時代の流れを受け、変化していくのかもしれません。